根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)

追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)

歯のひび①〜ひびが入っていたら歯は残せない?抜歯するしかない?〜

みなさまこんにちは。
6月になりましたね。前回のBBQブログは、いろんな方々から本当に楽しそうだね、と感想をいただきました。
楽しくてキラキラした感じが、うまく伝わったようで嬉しいです

最近のブログのテーマでレントゲン写真の診査で、何を見ているかということをお話してきました。
歯のひびや穴については、よほど明らかでないかぎりはレントゲン写真でわかることはまれであること、クラウンやコアをはずして実際にマイクロスコープで根の中を確認し、ひびを染めてみないとわからないこと、をわかっていただけたかと思います。
では、これらのひびの発見、CTをとれば必ずわかるものなのでしょうか?
皆様はどう思われますか?CTを撮影すれば100%ひびを検出できると思われますか?
しばらくは、このテーマでひっぱろうと思います

先日、長引く前歯の痛みから、歯のひびの疑いを他の歯科医院で指摘され、セカンドオピニオンで来院された30代女性の患者様がいらっしゃいました。
主訴である前歯は根の尖端に黒い陰があり、根管治療に不備もあったため、根の中の感染が疑われました。
当院で初診でおこなう診査では、歯周ポケットもすべて正常範囲内であきらかなひびはわからないという診査結果でした。さらなる診査のために、クラウンを外して、コアを外して、実際に顕微鏡下でひびの存在をたしかめましょう、というのが、当院の考えでした。
その女性は、その後もともと受診されていた歯科院で、歯のCT を撮影しひびが見つかったから抜歯をしてしまったと、その後お電話をいただきました。

これまでにも、CT撮影でひびが見つかった、抜歯はいやなのですが、なんとか歯をのこせませんか?という問い合わせはとても多く、いつかこのブログで、CTとひびの検出について書こうと思っておりました。
そもそも歯のひび、といってもひびにもいろんな程度があります。

下の図をみてください。
hibidanmen.jpg

①のひびは浅いひびです。この程度のひびでしたら、超音波で削り取ってしまえばなくなります。
②のひびはそこそこ深いひびですが、これも削り取っても、健全な歯の部分が残ります(残った歯の部分はすごく薄くなってしまいますが、ひびを残したままにするよいするよりかは良いでしょう)。
③のひびは、向こう側までつきぬけてるひびです。ここまで進んだひびになると、①、②とはちがって、ひびを削り取ると歯がなくなってしまいます。破折とはこういう状態です。
④にいたっては、向こう側につきぬけたひびが複数あります。
こうなってくると、歯が割れてぱかぱか動きます。

同じ『歯のひび』でも、①②の場合は歯を残せますが、③④の場合は絶対に残す事ができません。

ご自分の歯のひびが①〜④のどのパターンなのか?術前の診査でわかる範囲となると、③④の場合です。
まず、①、②のひびはレントゲンではほぼわかりません。③④になってくると、ひびが根の中から歯周組織のある向こう側まで貫通していて、ひびを通して細菌感染の場になるので歯周ポケットは深くなります。またひびの隣に位置する骨にも影響がでるため、レントゲン写真で骨がなくなってるのがわかります。
①②のひびの場合、歯周病でない限り、歯周ポケットは深くなりませんし、骨も健康な状態でレントゲンにもCTにもうつります。
歯周ポケットを測定する事は、助けられないひびがあるかどうか、またそのひびがどれくらい下の方向まですすんでいるかを知るために重要な検査なのです。
ただ、歯周ポケット検査の段階ではあくまでひびの疑いであり、確定診断ではありません。なので、実際に本当にひびかどうかを知るためには実際に目で見て確認するしかありません。

当院では
①術前検査:歯周ポケット深い、レントゲンで根尖病変以外の黒い陰→ひび、または歯周病の疑い

②次回はずして、ひびを確認→ひびの位置、タイプを確認し、保存不可能な場合は抜歯

という順番でみていっております。
詳しくは前々回のブログを参考にしてください

根管治療、レントゲン検査でのポイント②黒い陰と、歯のひび、穴について

例外的に③④の場合でも歯を助けられる場合があります。それはひびが上下的に浅い場合です。
以前にもひびのテーマでご紹介しましたこちらの図のA,Bまでは歯の保存は可能です。
crack.jpg
参考文献:
Colleagues for Excellence Published for the Dental Professional Community by theAmerican Association of Endodontists.2008

今日はCTでひびが100%検出可能か?という話まではいけませんでした。
患者様のお話を聞いていると、皆さん『ひび』=『抜歯』という風にイメージされている方があまりにも多いので『ひび』にもいろいろな程度があるんです、そして、浅いひびは放置せずに、取り去ってあげれ
ば歯を保存する事が可能です。
ということをお伝えしたかったのです

次回にはCTのお話をしていこうと思います

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