LEE'S ブログ
根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)
追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)
根管治療、レントゲン検査でのポイント②黒い陰と、歯のひび、穴について
こんにちは!!李です。
最近暑いですねちょうどよい心地よい季節が終わり、恐怖の夏がやってくると思うと…
真夏は夜も暑いので、屋外でジョギングは無理かもしれません。冬以上に厳しそうです
しょうがないので、ジムに入る事を検討中です。
さて、前回に引き続き、『レントゲン撮影で何をみているか?』というテーマを今回もお話していきます。
前回は、歯の厚みについてお話しました。今回は患者様でもご存知の方が多い思われる、レントゲンでうつる黒い陰についてです。歯医者さんに検診等で行きレントゲンを撮ると、黒い陰が写っています、などと、説明をうけたことがある方も多いのではないでしょうか?
とくに、根管治療でお悩みの場合には、根の先に黒い陰があるかないか(根尖病変)?は重要なポイントになります。
ただ、根の先の黒い陰ばかりに、注目していては、いけません。
根尖病変の黒い陰は、とても目立ちますのでだいたい誰がみても一目瞭然です。
たとえばこちらのレントゲン写真をみてください。患者様は、歯肉が腫れている、というお悩みをお持ちです。
→(赤い矢印)の部分が根の病気(根尖病変)の黒い陰です。このレントゲン写真、これ以外にも黒い陰がありますよね(青丸○)に注目してください。
このレントゲンだけを見ると、①歯の厚みはそこまで薄くなっていない、②根の先に黒い陰がある、そして③歯のまたの部分にも黒い陰がある、という風に見て行きます。歯のまたの部分の黒い陰は歯周病の疑いもありますし、歯が割れている、ひびが入っている、穴があいている可能性もありえます。
このレントゲンだけでは正確に判断出来ません。レントゲンと、歯肉が腫れているという症状だけをきくと、根尖病変で腫れているのか、歯周病で腫れているのか、歯が割れて腫れているのか、わからないのです。
さらなる情報として、局所的に深い歯周ポケットがあると、ひびの可能性が高くなり、広くて深い歯周ポケットだと、歯周病の可能性が高くなります。それとは別に根尖性歯周炎もあるので、こういった歯には複数に問題点があることになります。こういった場合は、患者様のお悩みの腫れている原因をきちんと特定しないと、適切な治療法を選択出来ません。
このように、レントゲンでなんでもわかる、というわけではないことがわかっていただけると思います。
では、どうするか?
実際に、クラウン、コアをはずしてみます。
クラウン、コアをはずして歯の状態を再度診査します。
ここでもわからない場合は、1回目の根管治療をおこない、マイクロスコープで根の中をチェックします。
そうしてはじめてひびがみつかる場合もあります。
歯の検査で原因がわからない場合は、治療を段階的にすすめ、途中で原因がわかることも多いのです。
下の写真は上のレントゲンのクラウン、コアをはずしたものです。染め出すと、くっきりとひびのラインが!!
そこの部分は歯周ポケットも局所的に深いです。(麻酔をしないと痛くてはかれない場合があり、これも見落としやすいポイントですし、クラウンが入っていると正確に測れない場合もあります)
このようなひびが入っている歯は、残す事ができませんので、治療法は抜歯となります。
抜歯を行わない限り、いくら根管治療をおこなっても、ひびからの最近をブロックすることはできませんので、お悩みの歯ぐきの腫れはなおりません。
患者さまのお悩みをお聞ききし、検査をし、検査結果から考えられる疑いが複数ある場合は、それらを検証してから治療を行なうことが大切なのです
以下、もうひとつのケースをご紹介します。
患者さまのお悩みは、疲れたときの違和感、咬んだときの違和感です。他の歯科医院で根管治療に問題があるのでは、と指摘されたそうです。
レントゲン写真です。根管治療にも問題がありそうですが、→(青い矢印)の部分には黒い陰があります。歯のまたの部分の歯の質も非常に薄いです。
クラウン、コアをはずしたところです。分かりにくいのですが、→部分に穴があいております。
このようにレントゲンでうつる黒い陰には、根尖病変以外に注目するべきところがいろいろあります。
そして、レントゲンだけで得られる情報では、その歯が抱える問題を100%明らかにすることはできません。
レントゲンである程度の予測をたてて、最終的には、はずして目で確認しなければならないことも多いのです