LEE'S ブログ
根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)
追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)
根管治療をした歯にクラウンは絶対に必要なのでしょうか??~PART2~
こんにちわ
早く暖かくなって欲しいと思う毎日です。
春、秋はウォーキング、ジョギングには最高の季節ですよね。
もう少し暖かくなったら毎日のように田町→東京駅まで歩いて帰りたいとたくらんでいます。
歩きながら季節感が感じられて本当に気持ち良いです
さて、長らくお待たせしました。
今日は前々回の続き『根管治療をした歯にクラウンは絶対に必要なのでしょうか??~PART2~』です。
PART1では、
虫歯で歯質を失っている根管治療歯は割れやすい(全周歯が残っている場合は例外)。
では、クラウンにすれば、歯は割れにくく強くなるのでしょうか?
クラウンにするためにはもっと歯を削らなくてはいけないので、もっと歯が弱くなりそうな気がしませんか?
という疑問で終わりにしました。
このことに対する回答は
『奥歯の根管治療歯は残った健全な歯質を削ってでもクラウンにした方が歯は割れにくくなり、守られ、結果長持ちします』です。
その根拠となる実験、論文をご紹介します。
Linn J らは1994年のJournal of Endodonticsの論文『Effect of Restorative Procedures on the Strength of Endodontically Treated Molars 』にて、根管治療歯の修復形態と歯の強度を調べた実験をおこなっています。
この実験は、PART1でお話しした、残された辺縁隆線の部分を削って、犠牲にしてまでクラウンをすることが、
歯にとって本当に良いのかどうか?という疑問に答えてくれます。
まず最初に根管治療のためだけに、歯の真ん中に穴があいた状態の歯(全周にわたって天然歯がのこっている状態
)に荷重をかけ、歯に生じるひずみの量を測定し、そのひずみから歯の強度を測定します。
この強度をBaselineとして100とします。
次に、左側の辺縁隆線が削られ(点線部)、右の辺縁隆線は健全に残っている場合(いわゆる二級窩洞、MO窩洞)の強度を荷重をかけてお同じように測定すると左側の咬頭の強度は80で、削っていない右側の咬頭の強度もbaselineよりもマイナスです
次の状態は上の窩洞にアマルガム充填をした状態で、荷重をかけて強度を測定しています。
左側の咬頭の強度も右側の咬頭の強度もBaselineよりもマイナスです。
次の状態は左側の咬頭のみをゴールドで被覆したアンレーの状態です。右側の健全な歯は残しています。
この状態で荷重をかけた歯の強度はどうでしょうか?
結果はなんと、左側の咬頭の強度はbaselineよりも、右側の咬頭の強度よりも圧倒的に高くなるんですビックリ!!
最後は左右ともに咬頭をゴールドで被覆した場合です。右側の健全な歯は犠牲にして削っていますが。。。この状態で荷重をかけた歯の強度はどうでしょうか?
もう、みなさんおわかりですか?
そうです、左右ともにbaselineよりも強度がUPしています
この論文から、
『奥歯の根管治療歯をクラウンにすると、歯が全周残っているbaselineの状態よりも強度がUPします。残った健全な歯質を削ってでもクラウンにした方が歯は割れにくくなり、守られ、結果長持ちします』ということがわかりました。
下のグラフが論文の中の実験結果のグラフの一つです。
このしくみとして、考えられることは
もともと歯は噛む力がかかると、たわむ性質をもっています。歯に穴があく、