根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)

追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)

根管治療をした歯にクラウンは絶対に必要なのでしょうか?? PART1

皆様こんにちわ!
最近日が長くなってきて、少し暖かくなってきていて嬉しいですね
早く春が来て欲しいです。

さて、今日の根管治療トピックは『根管治療をおこなった歯はすべてクラウンにしないといけないのか??』についてです。

日本では、このテーマは歯科医によって見解がちがうことが多いと思います。

患者様にとっては、例えば、大臼歯の根管治療をおこなった後にご自分の歯がたっぷり残っていたりすると
『これ以上削って、クラウンにするなんて!絶対イヤ!!これ以上大切な自分の歯を削りたくないわ!!』
と思われる方が多いのではないかと、私は思います。

私も以前は歯の厚みがたっぷりあれば、あえてクラウンにする必要はないのではないか?クラウンにするのはオーバートリートメントではないか?という意見を漠然と(何の根拠もなしに)思っていました。

この考えは、現在所属する根管治療専門医のスタディーグループPenn Endo Study Club in Japan
http://pescj.org/
で欧米の根管治療のコンセプトを学び、論文を読むようになり、ガラリと変わりました

では、実際に欧米で(というか、日本以外では)コンセンサスの得られている考え方というのは、どういったもので、その根拠は何なのでしょうか?
なるべくわかり易く、ご説明していきますので、どうぞお付き合い下さいね

『根管治療をおこなった歯はすべてクラウンにしないといけないのか??』

ここで2つの重要な論文をご紹介します。

Aquilino SA (2002) らは根管治療した歯のその後をおった論文『Relationship between crown placement and the survival of endodontically treated teeth. 』で、根管治療後にクラウンにしていない歯はしている歯にくらべ、6倍歯を失っていたと報告しています。つまり、根管治療後にクラウンにした歯の方が生存率が高いという報告です。

Salehrabi R(2004)らは約150万歯の根管治療歯のその後を調べた研究『Endodontic treatment outcomes in a large patient population in the USA: an epidemiological study』(超有名論文です!!)で、
initial treatmentの8年後に97%が口腔内で生存していたが、だめになって抜歯された残りの3%の根管治療歯のうち、なんと85%はクラウンにされていなかった、と報告しています。

では、どうして根管治療をした歯はクラウンにしないとダメになりやすいのでしょう?
歯の質がかわるからでしょうか?
(神経が死んだ歯は水分が少なくなる、なんてよく言われていますよね。でも実際は歯の質自体は神経が生きている歯と変わらないと報告されているんです。)

次に、紹介する論文は1989年と古い論文ですが、いろんな論文で引用されている超有名論文、スーパー重要論文です。

Reeh ES(1989) らは『Reduction in tooth stiffness as a result of endodontic and restorative procedures.』のなかで、根管治療と修復処置が、歯の強度の低下にどの程度影響を及ぼすか?を抜歯した歯に負荷をかけて実験しており、
結論として『根管治療自体で歯は弱くならず、歯質の喪失、特に辺縁隆線の喪失が歯を弱める原因』と報告しています。
辺縁隆線とは、ここのことです下の写真の大臼歯は右側(赤マル部分)の辺縁隆線を失ってます。
henen.jpeg

下のレントゲン写真では大臼歯の左側(赤マル部分)の辺縁隆線を失っていて、右側は残っています。
この写真は根管治療歯ではないのですが、根管治療歯の場合、神経のところまで、ずっと歯質がなくなるので
歯が弱く、割れやすくなるというのがこの論文の実験結果から証明されています。
henen2.jpeg

この論文では、全周に歯質が残っている場合は、歯の強度は低下しないと報告されています。
こういうことです

28986 3

でも、根管治療に至る歯って、もともと虫歯が原因であることが多いので歯が全周無傷で残っていることって、ほぼないんですよね

なので、虫歯で歯質を失っている根管治療歯は割れやすい、ということになります(全周歯が残っている場合は例外)。

では、クラウンにすれば、歯は割れにくく強くなるんでしょうか?
クラウンにするためにはもっと歯を削らなくてはいけないので、もっと歯が弱くなりそうな気がしませんか?

パート2に続きます。(今回は重要テーマのため、長いです

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