LEE'S ブログ

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根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。

歯の神経の生死、健康度合いを確かめるには?

皆様こんにちは。

生活歯髄療法の話をしばらく続けていきたいと思います。

神経に近い深い虫歯の治療、成功するか否かは神経の健康度合いと治療でぴっちり封鎖ができるかどうかがキモです。

歯の神経が健康かどうか、また歯の神経が死んでるかどうか、などを実際どのように診断するのか?

ということについて今日は書いていきたいと思います。

まず結論から申しますと、

歯の神経の生死を確実に知ることは実際に神経を見ないと不可能です。

神経が生きている、ということは神経に血のめぐりがあるかどうかです。

出血があると生きいるとわかるし、完全に死にきっていると出血しません。

実際に歯の神経を見るとは、歯を削って神経を露出させることになります。

歯の神経 生死 健康度

生活歯髄療法で、神経から出血しているところ

歯の神経 健康 生死

神経が死んでいる歯髄壊死の状態、血は出ません

 

*死んだ神経(壊死歯髄)に細菌感染があると腐ります。

死んだ神経は細菌の栄養源となり細菌が増える温床となるのです。

よく神経を取りたくないあまり、痛みもずっと我慢した結果、神経が死んで腐り根の中で細菌が繁殖、増え続けて

結果、根の病気(根尖性歯周炎)が発症してしまうケースが少なくありません。

弱り切った神経は待っていても自然治癒しません

このことに関しては前回のブログを読んでいただければと思います)

健康度合いを厳密に判断するには組織切片で細胞を見る必要があります。

 

このためには歯を抜いて神経の組織切片を作らないといけません。

 

これらの確かめかたは、組織を直接見る方法で体の検査でいうところの生検のようなイメージです。

もちろん、そんなことしたら本末転倒です、残したいはずの歯の神経や歯も失ってしまうかもしれません。

歯を傷つけずに、歯の神経の生死、健康度を知るにはどうするのか?

痛みなどの症状や歯を傷つけない複数の検査を行いその結果から推測をします。

神経が炎症を起こしていると痛みなどの症状が出ることが多く、神経が死んでいると検査に反応しません。

細胞は見れないけれど検査の反応から、きっと健康だろうとか、死んでいるかも?とか、炎症が起きている疑いが高いな、、などと推測するのです。

これは歯科に限らず医科でも同じですね。

体の病気の検査でも生検は侵襲度の高い診査方法なので、まずいきなり生検をする、なんてことはありませんよね。

まずは検査結果や症状から、病気の状態を推測する。

でもあくまで推測なので外れることももちろんありますし、矛盾する検査結果が出るためわからないこともあります。

けれど現在では、歯を傷つけずに神経の状態を知る方法はこういった間接的に推測する方法しかありません。

次回は具体的な検査法について記事を書いていきます

 

**補足:歯を傷つけずに神経の血流を検査する機械として以下二つのものがあります。

実験などで使われているようですが、機械が大きすぎる、操作が複雑すぎる、等多くの課題があり、臨床で使用するまでには現在至っておりません。

Laser Doppler flowmetry

Pulse oximeter

この機械の改良が進み、日常的に使えるようになるとより正確に神経の生死が診断できるようになるかもしれません。

 

参考文献:

Hargreaves, Kenneth M.; Berman, Louis H.. Cohen’s Pathways of the Pulp Expert Consult. Elsevier Health Sciences. Kindle 版.

 

生活歯髄療法とドックベストセメント、3-Mixを使用した治療法

今日は生活歯髄療法についてもう少し書いていきたいと思います。

巷で有名なドックベストセメントや3-Mixを使った深い虫歯の治療も生活歯髄療法といえます。

神経を助けたくてドックベストセメントの治療を受けたのだけれども治療が失敗し、結局神経は助からなかった、ということで神経を取る処置のためにリーズデンタルクリニックに来院される患者様がいらっしゃいます。

お話を聞くとドックベストセメントや3-Mixはそれ自体を使うことで、深い虫歯に侵された神経が助かると勘違いされていることがほとんどです。

けれどもそうではありません。薬剤だけで効果があるならドックベストセメントの治療は失敗しないはずです。

確かにドックベストセメントも3-Mixも虫歯菌を殺菌する効果はあります。

けれども、

深い虫歯で神経を残すために行う生活歯髄療法の成功の鍵は神経の健康度と封鎖(虫歯治療後の削った穴をいかに隙間なく密封できるか、にかかっています。

多くの歯内療法学の教科書や、生活歯髄療法に関する数々の論文でもそのように書かれており、ドックベストセメントや3-Mixを使うことで治療が成功するなどと書いているものはありません。(メーカーが商品の効果を宣伝するために出しているケースリポートとは違います)

神経を保護する間接覆髄法では古くから水酸化カルシウム製剤(ダイカル等)が使用されており、代表的です。水酸化カルシウム製剤も細菌に対して殺菌効果があります(根管治療の貼薬でも使用します)。

けれども近年、歯の神経(歯髄)の細胞についての研究が進み、特に神経の虫歯菌に対する防衛能力について、多くのことがわかってきています。

最近では深い虫歯でも神経が健康な状態または、炎症が軽い場合は水酸化カルシウム製剤を置くメリットはないかもしれない、という報告も出てきています。

神経が元気だと、多少虫歯が残っていても、外からの刺激をブロックするように密封することで神経は自己治癒することがわかってきているのです

なぜなら封鎖がしっかりしていると、虫歯菌への栄養供給が途絶えて虫歯菌が活動停止すると報告されており、そして神経や象牙質の細胞は内側から新たな歯(第3象牙質)を作ることができるのです。

このためにはわざわざドックベストセメントや3-Mixを使わなくても神経が健康で、封鎖がしっかりしていればOKです。

心配だからよりしっかりと虫歯菌を殺菌したい!という方は使ってもいいかもしれません。

***神経が弱っている場合は自己治癒出来ませんのでここの見極めが重要です。

***深い虫歯での密封する治療は難しいことが多いです、場合によっては隔壁も必要ですし、ラバーダム装着も必須です。

 

まとめますと

神経が弱っている場合

虫歯をとって密封しても、殺菌のために3-Mix,ドックベストセメントなど使っても神経は自己治癒力を失っていて健康に戻れませんので、治療は失敗します。

神経が健康または炎症が軽い場合

虫歯をとって密封すれば、3-Mix,ドックベストセメントなどは使っても使わなくても神経の自己治癒力で治療は成功します。

繰り返しになりますが

***治療の成功には神経の健康度の見極めが大きく関わります。

大きい虫歯の治療の前には神経の健康度合いの検査を歯内療法専門医のもとで行うことをお勧めします。

参考文献

  1. Cooper PR, Smith AJ. Inflammatory Processes in the Dental Pulp.In: Goldberg M, ed. The Dental Pulp Biology, Pathology, and Regenerative Therapies. Berlin, Germany: Springer; 2014;97-112.
  2. Ricketts D. Management of the deep carious lesion and the vital pulp dentine complex. Br Dent J. 2001; 8;191(11):606-10.
  3. MA Pereira et al. No additional benefit of using a calcium hydroxide liner during stepwise caries removal. J Am Dent Assoc. 2017;148(6):369–376.
  4. Fouad A, Levin LG.  Pulpal Reactions to Caries and Dental Procedures. In: Cohen’s pathways of the pulp 11th edtion. St. Louis, Mo, Mosby Elsevier Health Sciences.
  5. Bjørndal L. The caries process and its effect on the pulp: the science is changing and so is our understanding. Pediatr Dent. 2008;30(3):192-6.
  6. Weiner R. Linersbases, and cements in clinical dentistry. A review and update. Dent Today. 2003 Aug;22(8):88-93.

歯内療法と根管治療、何が違うの?〜言葉の定義について〜

こんにちは、李です。

忙しさのあまりブログがなかなか更新できず気づいたら8月になってしまいました

激しい猛暑ですが皆様夏バテは大丈夫でしょうか?

さて、最近患者様から『先生、根管治療と歯内療法は何が違うのですか?』と聞かれました。

言葉の定義が違います。

歯内療法という言葉は広義の意味で歯の内部(根管や神経)にまつわる問題、病気に取り組む治療全体のことを差します、そして学問の名前でもあります。

『歯内療法学』が学問の名前です。英語では『Endodontics』です。

一方、

『根管治療』は歯内療法の中の一つで、具体的な治療の名前す。英語では『Root canal treatment』です。

英語でも日本語でも歯内療法、Endodonticsは歯科医療業界内で多く使われ、一般の方にはわかりやすい根管治療、root canal treatment が多く使われているように思います。

専門医の呼び方は

歯内療法専門医、Endodontistが歯科医療業界向け、

根管治療専門医、Root canal specialistが一般向け、といった感じかもしれません。

言葉のもつ意味合いは時代によって変わってきますので、また変わってくるかもしれませんね。

 

歯根端切除術、意図的再植術もそれぞれ具体的な治療の名前で歯内療法のくくりになります。(外科的歯内療法とも言われます)

生活歯髄療法も歯内療法のくくりに入ります。生活歯髄療法の中には間接覆髄や直接覆髄、断髄などの具体的な治療があります。

巷で有名なドックベストセメントを使った治療法、3-Mixを使った治療法も生活歯髄療法です。

次回は生活歯髄療法について、もう少し書いて行きます。

ポスト、フェルル、根管治療歯の長持ちにはどちらが重要?

こんにちは。李です。

日本橋桜通りの桜は満開です

八重洲から八丁堀まで続くさくら通りの桜。ずっと奥まで続きます。特に昭和通りを超えてからは桜が密集していてまさに桜の天井です、ぜひクリックしてみてください

毎年楽しみなこの季節ですが、今年ははじめて花粉症の症状が出てしまいました

さて、前回、前々回と根管治療を行う時に精査するべき残存歯質の量、特にフェルルについてブログ記事を書いています。

フェルルとは?前回のブログお読みください

根管治療しても長持ちしない歯の見分け方②〜フェルルの有無〜

 

今日もその続きとして、最近出版された興味深い論文を引用し、解説します。

Naumann M et al.“Ferrule Comes First. Post Is Second!” Fake News and Alternative Facts? A Systematic Review. 2018 Feb;44(2):212-219

 

フェルルの有無、ポストの有無が根管治療した歯のサバイバル、修復物のサバイバルにどう影響するかを調べたものです。

術後5年以上のデータのある8つの論文のシステマチックレビューで検証していますので、エビデンスレベルの高い研究と言えます。

簡単に結果をまとめますと、8本中7本の研究で歯にフェルルがある場合はポストにプラスの効果がないという結果が出ています。

この中でフェルルの効果を比較検証した研究は3本ですが、2/3本でフェルルの存在が歯のサバイバルに好ましい効果があるとの結果となっています。

歯にフェルルがあればポストを入れても入れなくても変わらないということで、つまりそれは歯のサバイバルにはポストよりもフェルルの有無の方が、重要であるという結果と言えます。

歯がたっぷり残っていて、フェルルがあることが根管治療歯の長持ちにとても大切なことです

残存歯質、フェルルがあるかどうかを正確に把握するにはクラウンやコア、ポストを外し、虫歯があれば虫歯を取り除いた状態で評価が必要です。

根管治療を受ける際には、根の病気の診査ももちろんですが、フェルルも含めた残存歯質をしっかり把握することが大切です。しかしながら、フェルルがあるから絶対に長持ちするとは言えません。残存歯質の量は歯の余命の予測のための1つの目安となりますが、それ以外の要素もたくさんあること、お口の状況は個人差があることなどから、いろいろな要素を考慮して主治医とよく相談の上、治療を進める必要があります。

例えば、フェルルがしっかりあっても、太いポストのせいで根が薄くなっていたり、そもそも全くの健全歯でも、過度の歯ぎしり食いしばりなどでパックり割れてしまうこともあるのです。

以下、フェルルや歯冠の歯質ががあっても割れていたケースです。

フェルルがあっても、太いポストが入っていて破折をしていた歯

歯ぐきが腫れている、という根管が太く削られている左上5

フェルルはありますが、根が薄く、外すと根が破折していました

抜歯インプラント治療となりました

インプラント上部構造セット後

 

根管治療をしていない、無傷の歯が割れていたケース

根管治療もしていない、インレーすら入っていない健全な歯がたっぷり残った左下6 の歯冠が破折しています。(茶色いところは虫歯ではありません)

破折がどこまでいっているか確認するために削り取っていくと歯根まで真っ二つに割れています。

 

 

根管治療しても長持ちしない歯の見分け方②〜フェルルの有無〜

こんにちは、李です。

前回の続きのお話をしていきます。

根尖性歯周炎(根の周りの炎症の病気)の治療で根管治療や歯根端切除術を行い、病気が治り(サクセス)、その歯がどれだけ長持ちするか(サバイブ)、正確にはわかりませんが、歯の量を目安にある程度の傾向を予測することは可能です。

例えば、歯が薄く、量が少なく、そして奥歯で噛む力が強く歯ぎしりの習癖がある場合は、そうでない場合よりも長持ちしなさそう、などと予測します。

歯の長持ちの予測のための歯の質の診査

当院の診査では、根尖の診査診断と歯髄(歯の神経)の診査診断を行いますが、それ以外にも歯の質の診査というメニューもあります。このメニューは診査のためにある程度治療を進める必要があります。クラウンや詰め物、土台を外し、虫歯がある場合は虫歯を取り除き、残った健康な部分の歯がどれくらいあるか、を見ていきます。レントゲン検査で極度に歯や根が薄そうな場合は根尖性歯周炎や歯髄炎が治ったとしてもその歯が長もちしない可能性があるため、歯を保存する、しないの意思決定のためにこのような診査が必要な場合があります。​

歯の質の診査の一例

歯の質の診査のために、クラウンを外したところ、メタルコアが大部分で歯があまり見えません

メタルコアを外しているところ、歯がだいぶ少なそうなのがわかります

メタルコアを外し、染め出しをして虫歯を取り除くと、全周のうち歯肉縁上に一壁しか歯がありません。(=一部フェルルあり)

 

歯の予後に関わる様々な要素の中で一番重要、インパクトが大きいといわれているのが残存歯質量(健康な歯の量、厚み)と言われています。残存歯質量を見るときに、一つの目安となるのがフェルルの有無です。

歯の予後に大切なフェルルの有無

フェルルとは、歯頚部(歯と歯肉の境目あたりのこと)の部分の歯質で、歯にクラウンをかぶせた時にクラウンで囲まれる部分のことです。歯にかかるストレスを減らし、破折から歯を守る効果がある、と言われています。

フェルルの有無は 特に前歯や小臼歯で歯の予後(破折、脱離)に大きく関わると言われていています。

下の図は論文から引用したものです。青色でなぞった部分の歯がクラウンで囲まれるフェルルの部分です。

Jelena Juloski et al. Ferrule Effect: A Literature Review. Journal of Endodontics. 2012;38(1):11-19. より引用

 

イラストではなかなかピンとこないと思いますの症例で見て行きましょう。

メタルポストが入っている左上2、3、青い部分がフェルルになります。

 

全周360度あることが望ましいと言われていますが、全くないよりかは、部分的にでもある方が良いと言われています。

 

 

症例写真でフェルルのあるなしをご説明します。

歯の全周のうち3/4はフェルルがある状態

全周フェルルがない状態

フェルルがある状態(丈も厚みもしっかりあります)

全周フェルルがない状態

 

​噛んでいる時に歯にかかる力は、だいたい歯肉のラインの少し下のあたりの根の外側に最大の力がかかると言われています。

フェルルがあることで、この力が緩和されると言われています。

多くの教科書や、文献ではフェルルのない歯は歯根破折のリスクやクラウンやポストの脱離のリスクがフェルルのある歯よりも高くく予後不良と言われていて抜歯が推奨されることが多いです。

ファイバーポストごとクラウンが脱離した左上2、歯を見ると全周フェルルがありません

 

では、それでもなんとか保存したい場合はどうするのか?

フェルルを作る方法があります

それは歯冠長延長術(クラウンレングスニング:フェルルを確保するために歯肉や骨を外科的に切除する方法)、矯正的挺出(Orthodontic extrusion:フェルルを確保するために矯正で歯を引っ張り上げる方法)という方法です。

この方法は根の長さがある程度ある歯に限り有効と言われています。この二つの術式を行うことで、骨に埋まっている部分の歯根が短くなります。歯冠歯根比と言って、根の長さと、歯の頭の部分(歯冠)の比率が1:1を切ると予後がよくないと言われているためです。ですので全ての歯に適応できるわけではありません。

患者様が来院され、フェルルがなく薄い歯を残したいと言われた場合とても悩みます。

残したい気持ちはよくわかるのですが、長持ちしない可能性が高い。

歯の状態をご自身で理解していただくためには、実際に外した状態を写真で見ていただき、相談した上で治療の方向性を決めて行くのが一番だと思います。

参考文献

Jelena Juloski et al. Ferrule Effect: A Literature Review. Journal of Endodontics. 2012;38(1):11-19.

Naumann M et al.“Ferrule Comes First. Post Is Second!” Fake News and Alternative Facts? A Systematic Review. 2018 Feb;44(2):212-219

Robbins JW. Restoration of the endodontically treated tooth.Dent Clin North Am. 2002 Apr;46(2):367-84.

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