LEE'S ブログ
根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)
追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)
歯の神経を残す治療〜生活歯髄療法③治療法について〜
こんにちは。李です。
今週は桜が満開でキレイでしたね〜
皆様はお花見にいかれましたか?私は近所の桜を散歩やジョギング中に満喫しました。
引っ越しをしてはじめての春でしたので、桜スポットを発見するのも楽しかったです。
なかでも一番綺麗だったのは茅場町のさくら通りです。桜の天井状態が続いていて桜スポットとしておススメです。とくに夜が綺麗です
桜通りの写真です。
お近くの方はぜひこの通りをあるいてみてくださいね
さて、今日は生活歯髄療法Vital Pulp Therapyのパート3として、実際の治療法について簡単にお話していこうと思います。
VPTは大きくわけて2種類の治療法があります。
①間接覆髄法(Indirect pulp capping/以下IPCとします)と②直接覆髄法(Direct pulp capping/以下DPCとします)です。
①のIPCは神経と虫歯を削った穴の底に一層健全な歯がある状態です。つまりIPCでは神経は露出していない状態で覆髄(capping/修復象牙質の形成を促すお薬をおくこと)をおこないます。
②のDPCでは、神経は露出します。露出した神経の上に覆髄(capping/修復象牙質の形成を促すお薬をおくこと)をおこないます。
またDPCでは神経の切断の有無または神経切断の位置によって、A:直接覆髄、 B:部分的断髄(partial pulpotomyまたはcvek pulpotomy)、C:断髄(Full pulpotomy)の3つにわかれます。
Part2のVPTの適応で、神経の炎症が可逆性か非可逆性かがポイントであるとお話したのを覚えていらっしゃいますか?
神経の露出面に覆髄をおこなう、直接覆髄や断髄法の使い分けかたは、この神経の炎症によります。
直接覆髄では神経の切断はおこないません。つまり、炎症が完全にない神経におこなうことが前提となっています。
たとえば、転んで歯が折れて神経が露出した場合ななどは、神経に炎症はないと考えます。
虫歯などの細菌が原因の場合には症状がなくても神経に炎症がある場合があります。
そうすると、必ず神経から出血が多くあります。出血が多い事は炎症の存在を意味します。
VPTの際には露出した神経を止血出来るかどうかが、かなり大きなポイントとなるのです。
適切な止血処置をほどこしても神経からの出血をとめられない場合は、その神経には炎症が存在すると考え、さらに深いところまで神経を切断していきます。
最終的には止血ができるところまで神経を切断するのですが、最後まで血がとまらない場合は神経を根こそぎ取る事になるので、結果的に抜髄処置になるということです。つまりこういった場合は不可逆性の歯髄炎だったってことになりますね。でもだいたいはそこまでの炎症となると、治療前の神経の検査や患者様の痛みの症状からVPT適応外と診断される事がほとんどです。
PART1でもお話しましたが、歯髄切断法で深いところまで炎症が及んでいて、最後の2、3mmの神経だけが保存可能だったとしても、根未完成の歯は神経を残す価値があります。その2、3mm残った神経のおかげで歯の根の成長が続くからです。ですので、この生活歯髄療法VPTは根未完成歯におこなわれることが多いのです。
では、大人の神経の保存にはどうなのか?断髄法で炎症のある歯髄を取り除いたとしても、成功率は無菌的環境下での抜髄治療より劣ります。
VPTを行った後に結局神経がダメになってしまった、なんていうこともあり得るので、だったら最初から成功率の高い抜髄処置をおこなおう、というスタンスのようですね。
さて、次回はVPTの覆髄処置で使われるお薬(修復象牙質形成促進する薬)で、古くから使われている水酸化カルシウムや新しい材料であるMTAセメントについてお話しようと思います。
このVPTでこんなにお話をひっぱれるとは!それだけ診断や治療に際して考えなければならないことが多い治療法だということです。
来週からはもう4月ですね!
4月はハワイでおこなわれるアメリカ歯内療法学会に参加してきます。
ブログで学会報告もいたしますので、お楽しみに〜