根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)

追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)

歯のひび、歯の根が割れる

こんにちは。李です。
今回の大雪はビックリしましたね
雪景色がみたいなと、ずっと思っていたらあんなに降るとは思いませんでした。
雪はきれいで大好きです。でも交通機関の影響を考えるとそうも言ってられませんね。
休日だったのをいいことに、お部屋の窓のカーテンを全開にして、部屋から雪景色を思う存分堪能しました
それにしても寒かったですね〜

さて、2013年2回目のブログとなりますが
本日のテーマは『歯のひび』についてです。
このテーマに関する資料を読む機会がありましたので、今回ご紹介しようと思います。

『歯にひびが入っていて、抜くしかないと言われた』
『根管治療も問題なく、顕微鏡でのぞいても歯にひびはないと言われた、でも痛みがとれない』
『虫歯はないのに、咬んだ時に歯が痛い』
『歯のひびがあると言われたけども、歯は絶対に抜きたくない』

今までLEE’S DENTAL CLINICに来院された患者様はいろんなお悩みを抱えていらっしゃいました。

『ひび』といっても、その状態は様々です。ひびの起る場所(エナメル質の表面なのか、象牙質まで達しているのか、歯の根の方にまで進んでいるのか)や、深さ、そして症状の有無など、いろいろな状態があるのです。

今日はこの『ひび』の種類と、どういうところにできやすいか、『ひび』で歯が痛くなる場合の症状、『ひび』の診査方法、どういう『ひび』だと、歯を保存することができなくて、どういう『ひび』だと歯を助けてあげる事ができるのか、ということについて、アメリカ歯内療法学会(AAE)から発行されている文献を参考にお話していこうと思います。
参考文献:
Cracking the Cracked Tooth Code: Detection and Treatment of Various Longitudinal Tooth Fractures 2008 summer Endodontics: Colleagues for Excellence Published for the Dental Professional Community by theAmerican Association of Endodontists

まずは、ひびができる場所と深さについてです。
歯のエナメル質の表面のひび
これは、誰にでもあります。私にもあります。前歯にも奥歯にもおこります。
毎日食べ物を咬んだり、くいしばりをしたり、歯ぎしりをしたり、歯はお口の中でいろいろなストレスにさられています。一種の加齢現象といえますね。
エナメル質内にひびがとどまっていれば、とくに凍みたり、痛みなどの症状もでないため、そのまま放置しておいても問題ありません。

このひびが深くなり、象牙質まで達すると、症状がでる場合があります。
象牙質はエナメル質とは構造が異なり、歯の神経とつながっているのです(正確には歯の神経にむかって細かい管があり、細菌や刺激がダイレクトに神経に影響を及ぼします)。

歯科用語でいわゆる『Cracked tooth syndrome』とは、硬い物をぎゅっと咬んだ時の、鋭い一過性の痛みが大きな特徴です。凍みるなどそれ以外の症状はなく、普段何もしてないときは何ともないということが多いのです。
『治療して虫歯もきれいに取り除いた、または虫歯のない歯で、凍みたりの症状はないけども咬んだときだけ痛い』
という場合、このCracked tooth syndromeであることが多いのです。
インレーが入っていたるすると、ひびがインレーに隠れてしまい、見つけられないこともあります。
そういった場合は診査のためにインレーをはずすこともあります。
咬む力が多くかかる奥歯(小臼歯、大臼歯)の歯間部(歯と歯が隣り合っている部分)に多く起こります。

ひびが象牙質まで深くすすみ神経まで近づくと、ひび自体が細菌の侵入経路となり、神経の炎症が起こります。
この場合の治療法は、神経に炎症を起こす原因となった深いひびを取り除き、抜髄処置をおこない、クラウンをかぶせて歯を補強してあげる事です。

歯を保存する事ができる、できないという問題がおこるとのは、ひびが根に及んでいるときです。
ひびが根の外表面にあるのか、中にあるのかで発見しやすさが変わります。(根管内/これは顕微鏡で根管を染め出してみると発見できることが多いのですが、ひびがさらに外側まで深くなっている場合はひびを取り除くと歯がなくなってしまうので保存ができなくなります。)
根の外表面にひびがある場合は、発見するのが非常に難しいです。
通常はレントゲンにも写りません。唯一手がかりとなるのは歯周ポケットの深さなのですが、この歯周ポケットの深さ、まず歯周病が原因で歯周ポケットが深いのか、ひびのせいなのか、根の病気(根尖性歯周炎)が原因で深くなる場合もあり、これを鑑別診断するのが難しいのです。
歯周病の場合は、歯周ポケットが歯をとりまく全体的に深いことが多いのですが、根の病気やひびの場合は歯周ポケットは一部だけ、せまい幅で深くなります。これをみつけるのは難しく、歯と歯の間だと、歯周ポケットをはかる器具が入りにくい場合があります。
歯肉を切開してめくると、めくった位置にひびがあれば、すぐにわかりますが、ひびが歯肉をめくってもわかりにくいい位置にある場合はみつけることができません。
結局、根の病気との鑑別にはまずは根管治療をおこなってみて、なおらなかったらひびをうたがうなどの、段階的な治療が必要になります。
手は尽くしたけども、結局だめだった、ということも少なくありません。
抜歯をしてはじめてひびがみつかる場合もあります。

ひびがあきらかに肉眼でも見える場合、どういう場合だったら歯を助ける事が出来て、どういう場合なら抜歯になるのでしょうか?
それはひびが、根の尖端にむけてどこまで進んでいるかによります。
ひびをそのままにしておくと、

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