根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)

追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)

根管治療で一番大切な診査のお話〜歯の痛み・関連痛〜

こんにちは。李です。
ものすごく寒い毎日ですね
クリスマス連休は楽しく過ごされましたでしょうか?
私は実家で家族と過ごし、手作りのローストビーフと、サダハルアオキのクリスマスケーキを堪能しました。

さて、今回でLEE’S DENTAL BLOGは100回目です

こんなに続けることができたことが嬉しいです。
このまま200回、300回と続けることができるように頑張ります

記念すべき100回目のブログの内容、何にしようかずっと考えていましたが
『診査の重要性〜歯の痛み・関連痛〜』についてお話していこうと思います。

先日、半年ほど前に前歯の再根管治療を終えた患者様のM様からご連絡をいただきました。
『李先生、今度は右下奥歯が痛いんです。ここは以前虫歯が深くて治療しました。そのときの先生には次に痛くなったら神経を取らないとだめだ、と言われていたところなんです。神経を取るなら保険の病院でなく、リーズデンタルクリニックでお願いしたいのです。それとは別で右上の奥歯も同じように痛いんです。両方痛い日もあれば、どちらか一方が痛む日もあります。いずれにしても、もうすごく痛い思いをするのは嫌なので、年内に両方神経の治療を終わらせたいのです』
M様は前歯の再根管治療の時に、根尖性歯周炎が急性化し、辛いお痛みを経験されています。
歯の痛みには何度となく悩まされていらっしゃいました。

このお話を聞いて、まず最初に行うことは歯の診査ですが、
一番大切なことは、患者様が痛みを訴えている歯と、痛みの原因となっている歯が一致しているかどうか、を確認することです。
何もしていなくても、ズキズキと痛い、という症状は歯の神経の炎症が深部に達しているサインです。
そういった時には、原因の歯の隣の歯や、反対側の歯(原因の歯が右下だったら、右上など)が痛みを感じることが良くあります。また、どこの歯が痛いかピンポイントで突き止めることができない場合もあるのです。
これを関連痛といいます。レントゲンや歯の診査であきらかに虫歯や、痛みの原因になりそうなサインがない場合にはとくに迷います。
その場合は顎顔面痛(顎の関節や、筋肉、神経が原因で歯に痛みが生じる)の可能性もあり、そちらとの鑑別診断も考えていかなければいけません。

歯の痛みの診査では、こういったことを常に頭に入れておくことが、とても大切なのです。
患者様の訴える痛みの症状だけをたよりに治療をしてしまうと、誤診なってしまい治療の必要のない歯に治療をおこない、さらに原因が解決されてないと痛みがおさまらない、という負のスパイラルにはまってしまいます。

M様のケースでおこなった具体的な歯の診査は、
感じている痛み、症状を再現させて原因歯を探して行きます。つまり、神経の知覚を診査していきます。
歯の表面に冷たい刺激、熱い刺激を作用させます。
このとき、正常な歯からはじめていき、正常な反応とくらべていきます。
正常な反応とは、冷たい刺激が歯に当たった時に、一瞬感じ、その後すぐおさまるのです。
M様の右下奥歯は冷たい刺激に対しては極度に痛みが増大し、痛みがズキズキと持続しています。
これは歯の神経の炎症が重傷であることのサインです。
M様のケースではご自身で痛みを訴えていらした右下の歯と診査の結果は一致しました。
けれども、右上の歯は一致しませんでした。痛いと感じている歯は冷たい刺激の診査では正常の反応でした。

その他の診査には、視診、レントゲンの検査、歯周ポケットの検査、打診、触診、電気刺激を与える診査などがあります。
歯の状態によって、全ておこなうとは限りませんが、これらの診査結果から総合的に判断して原因歯の特定と診断をおこなうのです。
診断ができてはじめて治療法を選択できるので、関連痛が強く診断がくだせない場合は、何もしないという選択肢が一番賢明です。

このようにして、M様の歯の診査をおこない、右下の奥歯は非可逆性の歯髄炎と診断しました。
そしてそれに対する治療は抜髄(神経を取る)です。
そして同じような痛みを訴え、神経を抜いて欲しいとおっしゃっていた右上の奥歯の神経の反応は正常な反応でした。
右上奥歯の診断名は正常歯髄です。治療は何も行わないことです。
関連痛は原因となる歯を治療すればおさまりますので、右下の奥歯の神経の治療を行ってからは右上の歯の痛みはぴたりととまりました。

今回は実際の患者さまのお悩みのエピソードを交えて、歯の痛みの診査についてお話しました。
少し難しかったでしょうか?
多くの歯科医院では患者さまの痛みの訴えと、レントゲン検査で治療着手してしまうことが多いように思います。それだけでも問題がないことは多いのですが、中にはこのような事例もあります。
もしも、原因歯が違う歯だったら?ということを常に考えて、もう1、2つの検査を付け加えることでより正確な診断をくだすことができるのです。
患者様の訴えていらっしゃる悩みを解決できるかどうか、を考える時に原因の特定は一番重要です。

100回目のブログ(そして今年最後)に選んだのは歯科医にとって原点に還る基本中の基本の診査のお話にしました。
年明け101回目のブログの内容は何にしようかな?と考えながら2012年最後のブログを終わりにします。

2013年もLEE’S DENTAL CLINIC & BLOGをよろしくお願いいたします
皆様、良いお年をお迎えください!

極寒の中、窓掃除おこないました

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