根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)

追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)

根管治療で歯にひびがあっても歯を残せるケース

こんにちは。今日は歯にひびがあっても歯を残すことができるケースをご紹介します。

初診時のカウンセリングでは、必ず全員の患者様にご説明していますが、歯にひびがある場合、ひびの位置や深さによっては歯を残せないことが多いです。

歯を残せないひびと、歯を残せるひび、どう判断していくかを症例でご紹介していきます。

 

 

歯を残すことができる場合のひび

 

下の写真の赤い矢印の部分を見てくだい。

縦に青い筋が見えるでしょうか?これは歯のひびを染め出した状態です。 

DSC07834

この歯のひび、赤い矢印で囲まれた範囲内で終わっています。

この場合、ひびをすべて削って取り除いても、その下にはまだ十分に歯(歯の根の部分)が残ります。

 

ひびを削る前と削った後を、以下に比較してみます。

 

ひびを削り取る前の状態。→部分の縦の線がひびです。

DSC07841

 

ひびを削り取った後(→部分)、ひびを取り除いても歯はしっかり残っています。

 

DSC07842

 

歯の構造は大きく分けて歯の頭の部分(歯冠:歯肉より上の部分、お口の中に並んでいるいわゆる歯です)と歯の根っこ(歯根:歯肉より下の部分、歯肉に埋まっているので、通常は目でみえません)から成り立っています。

下のレントゲン写真で、赤線部分が歯の頭(歯冠)、青線部分が歯の根っこ(歯根)です。

normal

 

今回の症例でひびが入っている位置は歯冠にとどまっています。

歯の上の部分(歯肉より上または歯肉より、2,3mm下くらいまでの位置)にあるひびは、削り取ってしまうことができるので、根管治療をおこない歯を保存することができます。

けれども、ひびがもっと深く歯の根っこの方まで進んでいる場合は、ひびをとることができません。

ひびをとると、歯の根が一部なくなりますので、歯そのものの構造が破壊されてしまいます。

ですので、歯の根の深い位置に発生しているひびは保存することができないのです。

 

歯を抜きたくないからといって、ひびを残したまま根管治療をしても病気は治りません。

なぜなら、ひびが細菌の通り道になるため、根管治療で根の中を殺菌しても、ひびから常に細菌が流入してしまいます。

 

歯をのこせるかどうか、根管治療ができるかどうか、はひびの位置や深さによる、ということがわかっていただけたでしょうか?

レントゲン検査やCTの検査でひびの存在や位置の確認を100%正確におこなうことはできません。

多くの場合は、確認するための治療が必要となります。

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