歯根端切除術
歯根端切除術(Apical Surgery)とは?
歯根端切除術とは、根っこの病気(根尖性歯周炎)の外科的な治療法です。根管治療をおこなっても病気がなおらない場合があります。
(*専門医がおこなった場合でも再治療の成功率は70~80%と報告されています。詳しくはECJコラムへ)
治らなかった場合に、その次の方法として歯根端切除術をおこなうことが多いです。
具体的には、根管治療で根の中の殺菌が届かなかった感染部分(主に根の先の部分)を外科的に根こそぎ取り除きます。 外科的にということはつまり、歯肉に切開をいれ骨を削りながら病気のある根っこの部分にアプローチします。取り除くだけでなく根管を逆側から充填します。
歯根端切除術は肉眼でおこなう方法とマイクロスコープを使用した方法がありますが術式や成功率が大きく違います。
特にマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使った歯根端切除術(Microapical surgery)は高い成功率で知られています。
専門医がおこなう根管治療の成功率は再治療で70~80%程度ですが、なおらなかった20~30%の9割以上がマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使った歯根端切除術(Microapical surgery)で治癒するという報告があります。
マイクロスコープを使った歯根端切除術と肉眼での歯根端切除術の成功率の違い(Setzer FC et al. 2010より)
マイクロスコープを使った歯根端切除術: 94%
通常の歯根端切除術: 59%
同時期に同じ方法で根管治療をおこない、治った治療例と治らなかった治療例
根管治療で治ったケース | 根管治療で治らなかったケース | ||
このように、根管治療で治らなかった場合に歯根端切除術を検討します。
米国歯内療法学会(American Association of Endodontists)の患者様向けの手術の解説ムービーです。ご覧ください。
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使った歯根端切除術(Microapical surgery)とは? 〜術式や使用器具の違い〜
マイクロスコープを使って高倍率でライトで照らしながらおこなうことで、病気の原因である細菌感染を見落とさずに取り除くことができます。根っこの先端を3mmカットし、細菌を染めだし染まるところを取り除きます。そして密封できる素材で根の先端を塞ぎます。マイクロスコープを使用して高倍率で手術をおこなうので、マイクロスコープ専用の外科器具や超音波チップ、そして術式のトレーニングが必要です。
したがってマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使った歯根端切除術はどこの歯科医院でもうけられる治療法ではありません。
細菌感染が原因で病気ができているので、嚢胞や肉芽腫といわれる(レントゲンで黒くうつる影)病気の部分を取るだけでは感染源を残したままになります。感染している根の先端を取り除かない限り一時的によくなっても、かならず再発します。けれども肉眼で根の先端の汚染を観察することは非常に難しいのです。このため、肉眼での手術法は成功率が低いと報告されています。
*歯の部位や形によっては手術ができない場合もあります
Q:根管治療はおこなわずに歯根端切除術だけをおこない根っこの病気(根尖性歯周炎)をなおすことはできますか?
症例によっては可能な場合もあります。
根尖性歯周炎(根っこの病気)の原因は根っこの中の細菌感染が原因です。
根管治療が適切に行われていると判断できて、クラウンなど被せ物に隙間や、虫歯がないと判断できたは歯根端切除術のみで対応することもできます。反対に、根管治療が適切でない場合は再発しやすいためおすすめできません。
歯根端切除術だけで対応できない場合
◯無菌的環境でおこなわれていない根管治療
◯根管治療自体がなされていない場合
◯根管充填剤がスカスカな場合
◯クラウンなどの被せ物、コアに隙間がある場合、または虫歯がある場合
これらの場合は、根の先の感染だけをとっても歯の上の部分に感染源が残りますので、再発のリスクが残ります。
高額なセラミックのクラウンををかぶせて1年しかたってないのに歯茎が腫れてきてしまった場合など、歯根端切除術だけでなんとかならないかと思われると思いますが、歯の状況やいろいろなリスクを考えた上で治療法を選択しなくていけません。
Q:痛みや腫れはどの程度ですか?
とても痛そうに思われると思いますが、術前の麻酔と痛み止めの服用でコントロールできる範囲です。また、1週間程度腫れる感じがあります(ピークは術後1~2日)。念のため、手術当日〜翌日はお休みできるようなスケジュールをおすすめいたします。