LEE'S ブログ

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根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。

デンタルフロスと虫歯予防効果、AP通信に対する歯科医の見解

こんにちは。李です。

ここのところ頭から離れず、気になっていることがあります。それは虫歯予防や歯周病予防についてです。

きっかけは

AP通信が発表した『デンタルフロスに虫歯予防効果の科学的根拠がない』という記事を読んだことです

http://bigstory.ap.org/article/f7e66079d9ba4b4985d7af350619a9e3/medical-benefits-dental-floss-unproven

 

この記事が発表されてから、これに反論する記事や声明もネット上でいろいろ見かけます。

 

反論記事の一例

Is the Associated Press right? Response to the AP regarding the benefits of flossing

 

このAP通信の記事を一般の方が読むと、

デンタルフロスに虫歯予防効果の科学的根拠がない = デンタルフロスをやっても意味がない

と思ってしまうと思います。(実際そのように解釈している個人のブログなどもみかけます)

もともとフロスが習慣になっていた人もそういった記事を見たらやめてしまうかもしれません

そうなってしまったら、お口の健康の維持にとてもマイナスとなってしまうので、この記事を書くことにしました。

 

科学的根拠がないということとデンタルフロスをやる意味がないということはイコールではありません

 

科学的根拠がないということがどのように検証されているか、ものすごく簡単なたとえでご説明します。

たとえばある研究で、デンタルフロスの虫歯予防効果を調べるために、

a: デンタルフロスを毎日使用している人、b: 使用してない人の二つのグループで虫歯の保有率を調べたとします。

aとbのグループの虫歯の保有率に差がない場合、デンタルフロスの使用による虫歯予防の効果はない、という結論になります。

これによってデンタルフロスの虫歯予防効果がない、となります。

理にかなっているように思えますが、では、デンタルフロスを使っているグループの人たちはデンタルフロスを適切に使えているでしょうか?

デンタルフロスは歯と歯の間や、歯肉のキワにくっついている、虫歯の大きな原因となるプラーク(歯垢、バイオフィルムともいわれます:細菌のかたまり)を取り除く道具です。

 

虫歯の大きな原因となるプラーク(歯垢)

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歯の表面にこのプラーク(歯垢)がくっついていなければ虫歯はできません。

デンタルフロスは使い方のコツを掴むまでは使い方がとても難しいです。

もしも、この研究のaグループの人々が、 デンタルフロスを毎日使用しているけれど、うまく使えていなくて、プラーク(歯垢:細菌のかたまり)がとれていなかったとしたらどうでしょう?

結果的にデンタルフロスを使用していないBグループと同じ条件になります。

これは歯磨きでも同じことが言えます。

LEE’S DENTAL CLINICでは、全体的な検診をおこなう初診の際には歯磨きの回数やデンタルフロス、歯間ブラシのの使用の有無、食習慣、など問診票に記入してもらうのですが

デンタルフロスを毎日使用していても、正しく使えてない方の方が圧倒的に多いです、ほとんど爪楊枝のような役割としてしか使えてなくて、歯と歯の間にプラークがべったりついている、ということがほとんどです。

歯磨きも同じで、1日3回歯磨きしている方が多いのですが肝心なところ(虫歯になりやすいところ)が磨けていない方が多いです。

 

歯科医はこういった現場の状況を知っています

デンタルフロスを使用していること=デンタルフロスをきちんと使いこなし、歯と歯の間のプラークコントロールが完璧であることではないのです。

ですので、デンタルフロスを使っている人、使っていない人にわけて、虫歯の発生率を調べ、そこに違いがなかったという結論の研究があった場合、デンタルフロスが適切に使えていないということを先に考えると思います。

先ほどの例えの研究が

a: デンタルフロスを毎日使用している人 

a: デンタルフロスをきちんと使いこなし、歯と歯の間のプラークコントロールが完璧

だった場合は a と bで差が出ると私は予想します。

 

デンタルフロスをきちんと使いこなし、歯と歯の間のplaqueコントロールが完璧であるかどうかはアンケートだけではわかりませんし、歯と歯の間のプラークコントロールが完璧かどうかの判定基準の数値化も難しいと思われます。こいったことを厳密に追求した研究デザインの論文を私は見たことがありません。そもそも体に害があるかどうかの研究であれば徹底的になされることが多いと思いますが、デンタルフロス使用でのデメリットは何もないため、あえてそこまで突っ込んだ研究をすることもなかったのではないかと、私は考えています。

 

AP通信の記事を読んで、科学的根拠がないからデンタルフロスやらなくていいよ、と患者様に告げる歯科医は一人もいないと思います

それはつまり、歯と歯の間のプラークコントロールをしなくてもいいよ、ということになってしまいます。

(デンタルフロスが使いこなせない方、歯と歯の間の隙間が大きい場合などは歯間ブラシなど、より適切な他の器具をすすめるとは思います)

 

私自身デンタルフロスは毎晩欠かさず使用していますが、AP通信の記事を読んで使用をやめようとは全く思いません。

私は歯科医で、デンタルフロスで取れる白くネバネバしたプラークが細菌の塊であることを知っています。

フロスをしないとその細菌の塊が蓄積していき、その細菌がどんな悪さをするかも知っています。

そして実際フロスの入れ方があまい日が数日続くと、フロスをした際に歯肉から血が出てきて、舌で歯肉を押すと嫌な味がしてくるので、歯肉炎になっているのがわかります。

あわてて念入りにフロスをおこなうと、血も、嫌な味もおさまりホッとします。

 

科学的根拠がない、と言われると、正しくない、または意味がないような印象を受けやすいと思いますが、科学的根拠を検証するための研究デザインも様々で、研究デザインによって信頼度も異なります。

 

AP通信の記事はデンタルフロスをやっても意味がない という印象を人々に与えやすく、そのことは人々のお口の健康にとってとても不利益だと思います。このことがずっと頭にひっかかっていたため、ブログの記事としました。

最近はこの記事がきっかけとなり、予防について日々再考しています。

 

LEE’S DENTAL CLINICは自由診療の歯科医院です。当院にいらっしゃる患者様は歯のことを真剣に考えている方が多く、予防にも積極的に取り組みご自分の歯を長く使いたいと考えていらっしゃいます。

問診票で見る限り、大体の方はデンタルフロス、歯間ブラシを習慣的に使っていらっしゃいます。クリーニングも定期的におこなっていらっしゃます。けれども検診で実際にお口の中を拝見すると、plaqueコントロールがきちんとできていない方がほとんどなのです。

 

以下に問診票の一部と初診時の歯のお手入れ状態をお見せします。

 

50代男性 歯磨きは2回/日 デンタルスロス、歯間ブラシは使用していない

 

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歯と歯の間にプラークがくっついていて、その部分の歯肉は赤く歯肉炎です
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40代男性 歯磨きは2回/日 デンタルスロスを毎晩全ての歯に行っている

 

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デンタルフロスを使用しているのに、上の使っていない患者様と同じくらいプラークがくっついています、そして同じく歯肉炎もあります。

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これを見ていただくと、デンタルフロスを行っていても適切に使えてないことがよくわかると思います。適切に使えていなければ、プラークを取り除けないので虫歯予防にも歯周病予防にも効果はありません。

 

下の写真は歯磨きができていない例です。歯の表面にプラークがたっぷりこびりついています。歯を磨いているつもりでも、場所によってはこのように磨けていない所もあるのです。
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LEE’S DENTAL CLINICで予防をご希望される患者様には、セルフケアレッスン(正しい歯ブラシの当て方、磨きにくい場所の磨き方のコツ、フロスの使い方を指導)をおこない、改善しているかどうかチェックしています。

 

セルフケアレッスン Before After

セルフケアレッスン後、どのようにお手入れが改善したかを見ていきます。

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初診時

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セルフケアレッスンを受けて再チェック時の状態。歯肉も健康的なピンク色に

 

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初診時の状態。歯肉炎です

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セルフケアレッスンを受けて再チェック時の状態。歯肉炎が改善

 

 

歯が大切だという強い思いは失いそうになってはじめて感じるもの

 

私が専門としている根管治療は治療が必要となる頃には歯がだいぶ少なくなっていることが多いです。歯が少なくなればなるほど、歯の強度は落ちます。そして歯が薄くなり歯が弱りきっているほど、治療は複雑になり費用も高くなります。

けれども、どんな治療をおこなっても少なくなった歯は元に戻りませんので、病気は治っても歯の弱さは回復しません。

一方、初期の虫歯は状態によっては治療を行わず経過観察をしたり、治療を行ったとしても歯を削る量も少なくシンプルな虫歯治療なので、治療回数も少なく費用もお安いです。

根管治療が必要になるまでにはいくつかの虫歯のステージがあり、一番最初は小さな虫歯であることがほとんどです。

この虫歯は適切なプラークコントロールができていれば防げるものなのです。

皆さん、歯を失いかけてはじめて大切さに気付くのでしょう、けれどもそうなる前から予防に取り組むことでしっかりと歯の健康な部分を保ったままで良い状態を維持することが、本当に大切だと日々治療を行いながら痛感しています。

歯のお手入れは本当に大切で、当院で検診を受けられる方には必ずお話ししていますが、もっともっと多くの方にお伝えしたいと考えています。

 

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