LEE'S ブログ
根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。
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LEE’S ブログ の進化型『LEE’S ACDEMY』4/3開講!!:新しい記事、これまでの記事の内容のアップデートバージョンはもちろんのこと、新しく楽しい試みをたくさん行う予定です。
AAE(米国歯内療法学会)2014報告③/成功率と論文の信頼性
こんにちは。李です。
学会報告も3回目となり、今日が最後です
今回の学会では朝8時から夕方5時までの間に、一時間半のレクチャーがお昼を挟んで計4つです。
たくさんのレクチャーの中で何を聞きにいくかは迷いどころですが、自分の好みがでてきます。
私と山本先生は大御所以外は全部別々、そのおかげで聞けなかったレクチャーがどんなだったたか、聞く事ができました
さて、本日はまず、PESCJのボスのボスとなるDr. Kimのレクチャーについてです。
Dr. Kimのレクチャーはいつも大盛況です。
とてもお話がうまくて聞いていておもしろく引き込まれます。毎度のエンターテイナーぶりです。
今回Kim先生はレクチャーを3回くらいされており、どれも大人気でした。
Kim先生のレクチャーはMicrosurgery(歯内療法外科)のお話がメインですが、印象に残ったことは根管治療の成功率とインプラントの成功率の違いの話です。
今回の学会では根管治療の予後に関するレクチャーが多くあり、Dr. Kim以外の先生方も皆このことについて触れていました。
根管治療の成功率とインプラントの成功率を比べることは、リンゴとオレンジをくらべるようなものだ、などと良く言われます。
なぜなら、
根管治療の成功率の基準はいくつかスタンダードなものがありますが、(欧米(日本以外?)では治療の成功の判定をその基準を用いておこなっています)インプラントの成功基準が非常に曖昧でバラバラだということからです。
インプラントの場合は何をもって成功とするか?が判定が難しいのです。
インプラントが、抜けてなく骨に埋まってるだけで、成功でしょうか?
そのインプラントの上のクラウンの形が大きくて常に違和感があったり、スキマが大きくものがいつもつまったり、噛みにくい、歯肉が腫れる、付け根が露出して見た目が悪い、などの問題があった場合、患者様が満足していない場合、それでも、抜けてなければ成功と言えるのでしょうか?
インプラントの成功率では、こういったことを評価するのが難しいのと、研究デザインも異なることから、比較が難しいといわれています。
単に、存在しているだけなら成功率といわず、生存率といいます。
何をもって成功というのか?
サクセス?サバイバル?function?healing?
これによって成功率の数字が大きく変わってきます。
そこのところが、インプラントと根管治療の比較で難しいのです。
根管治療の予後の調査の論文はほぼ成功率で評価しておりますが、インプラントの成功率の論文はバラバラでスタンダード化されていないので、比較が難しいということです。
何をもって成功というのか?これがとても重要なのです。
学会会場内の雰囲気。 (有名なTronto studyのDr. Shimon Friedmanの予後のレクチャーの様子)
成功率の研究に関してもう一つ、いつも語られるのが論文の信頼性です。
予後のレクチャーでは、Level of evidence というスライドが必ずだされます。
このピラミッドのスライドです (上から下にいくにつれて信頼性が低くなります)。
(http://www.cebma.org/frequently-asked-questions/what-are-the-levels-of-evidence/より)
ごく簡単にご説明すると、一番上が(一番信頼性の高い研究は)
●Randamized Controll Trial(薬の治験などがこれにあたります)
●コホートstudy, case report(症例報告)などは下に位置していて信頼性が落ちます。
●expert opinion(専門家の意見)が一番信頼性が低いのです。
(テレビなどで専門家が良く発言していますが、このlevel of evidenceに照らし合わせると一番信頼性が低いということを忘れてはいけません)
このように、読んでいる論文の実験方法がどれにあたるかで、信頼性が高い、低いが見分けられます。
Evidenceを求めるときにはこういった、視点でみていかないといけないのですね!
最後にもう一つ印象に残ったレクチャー、Dr. Zender の歯髄の診断のお話について触れておきます。
新しい歯髄診査と根尖の診査の方法を紹介していて、どちらもチェアサイドでできるものです。従来とは全く違うアプローチの歯髄診査方法で、これも今までに聞いた事がない新しいものでとても驚きました。
まだ実用化は先になりそうですが、今後が楽しみです
毎度のことですが、学会中はずーっと外食&毎晩お酒となってしまいます。
なので、なるべく朝は早起きしてジムや外でジョギングなど運動を心がけました。
そのおかげでなんとか、太らずにすんだかも?です。
学会会場から、外の風景です。
毎年恒例になりつつある学会報告、楽しんでいただけたでしょうか?
また来年のシアトルでのAAE annual meetingもご報告できるといいな、と思います
日本からも、もっともっとevidenceの高い世界基準の知識や治療に興味をもって学会参加される先生方が増えることを願い、このブログがそういったきっかけとなれば、なお嬉しいです