根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)

追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)

再根管治療はなぜ成功率が低いのか?

こんにちは。李です。
もう10月も終わりですね。早いです。今年もあと2ヶ月…..
毎年年末になると、今年も早かった、あっという間だった、などど言っておりますが、年々早く感じますね。
いいんだか、悪いんだかっていう気分です
12月31日に、2013年を振り返り今年も頑張ったな、と思いながら美味しくお酒が飲めるように残り2ヶ月頑張っていきたいと思います

さて、前回のブログでは根の病気(根尖性歯周炎)が治る事と歯の長生きは別の問題だということをお話しました。

今日はそれと関連して、初めての根管治療の歯と、再治療の歯の違いについてお話して行きますね。

欧米では根管治療はinitial treatment (はじめての治療)とre treatment(再治療、やりなおしの治療)のふたつにわかれます。
(日本の保険制度では、抜髄治療と、感染根管治療という分け方で、これは世界のスタンダードからはずれています。)
initial treatment (はじめての治療)とre treatment(再治療、やりなおしの治療)何がちがうかというと読んで字のごとく、なのですが、これがどのように治療の成功率や結果に影響するのでしょうか?

何度も言いますが、根尖性歯周炎の原因は細菌です。
根管治療とは、根の中の汚染を取り除き、消毒殺菌で、細菌を極力減らす(完全にゼロにはなりませんが)こと、そしてあらたに細菌が入り込む通り道をシャットアウトすることです。

再治療の歯というのは、過去に根管治療がおこなわれている歯です。
そして根管はすでに感染していることが多いのです。
ラバーダムやマイクロスコープ、適切で効果的な殺菌がおこなわれずに、治療された歯は、そうでない歯よりも、汚染や神経の残骸、虫歯などが残っていて、細菌の根管内への蔓延がより多くすすんでいて難治化してることも多いのです。

根管は単純な直線的な空洞でなく湾曲したり、横道があったり、マイクロスコープでもみえなかったり殺菌が行き届かない部分が必ずあります(とくに奥歯の根管の形は複雑です)。そしてそういう部分にも細菌は存在します。

根管がどれだけ複雑なのか、FRANK J. VERTUCCI先生の有名な論文から写真を引用させていただきます。

vertucchi_convert_20131030130410.png
(FRANK J. VERTUCCI Endodontic Topics 2005, 10, 3–29より引用)

どうですか?私ははじめてこの写真を見た時はビックリしました

一度感染してしまった根管内から細菌を完全に100%取り除く事は不可能なのは、このためなのです。
そして再治療歯では、汚染だけの問題でなく、以前の治療で根管の形が本来の形と大きくずれてしまっていたり、違う方向に道がつくられていたり、穴(パーフォレーション)があったり、根管充填剤が根の尖端からとびだしてしまっていたりと、成功率に影響する様々な問題を抱えている事が多いです。

上記のことが、理由で再治療歯では、initial treatment(はじめての治療)よりも成功率が低くくなるのです(論文によってかなり差はありますが、70%程度です。より大きな根の病気があったり、根管の形が壊れている程、成功率は下がります。)

また、くりかえし治療がおこなわれていればいるほど歯が薄くなっていることが多いです。
汚染の部分とはつまり根の中の虫歯(細菌に感染した象牙質)をとりのぞくことでもありますので、当然その分歯は薄くなりますよね

歯が薄いと、細菌が原因で発症している根の病気が治ったとしても、歯が薄くて、日常生活での咬む力などで割れやすいなど、長持ちに不安があるのは、前回のブログでお話した通りです。

もともと細菌が少なく歯の質も多い抜髄治療に比べて、こんなに治療の成功に関わる因子が多く難しい再治療、
日本の保険制度では抜髄治療の方が保険点数が高いのです。おかしいと思いませんか?

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