LEE'S ブログ
根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。
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歯の変色 PART2 ~歯の変色、着色の原因~
こんにちわ!
前回に続き、PART2の『歯の変色、着色の原因』についてお話していきます。
今回はだいぶ長く、ちょっと難しい内容ですがご興味ある方は最後までお付き合い下さい
今回のブログを書くにあたって参考にした論文はこちらです
Hattab et al.(1999)『Dental Discolorstion: An Overview』Jornal of Esthetic dentistry
歯の変色は
①外部からのもの(歯の表面にステインがこびりついて変色しているようにみえる)もの、と
②内部からのもの(歯自体が変色しているもの)
に大きくわかれます。
根本的に歯自体の変色と歯の表面の着色とはちがいます。
まずは①外部からのもの/ステインの着色の原因についてご説明しますね
外部からのもの
brown stain
コーヒー、紅茶、赤ワインなどの飲料からのタンニンが沈着したもの。
歯磨きをしなかったり、不適切な(粒子のあらい)歯磨きを使ったり、歯科医院でのクリーニングでのポリッシングが粒子があらかったりすると余計に付着しやすいです。
tobacco stain
タバコのヤニが歯の表面に蓄積したもの
歯のエナメル質の表面がざらついていると、よりつきやすいです。
タバコの消費量とは必ずしも比例しないそうです。
クロルへヘキシジンによる着色
抗菌効果が高く、洗口剤でよく使われているクロルへキシジンを長期的に使用すると
歯の表面に吸収されて茶色の着色がおこる,レジン充填も変色するそうです
このクロルへキシジンは、コンクールなどの洗口剤に含まれています。
ブログを書きながら自分も勉強になっています
上記のステインの着色がしやすくなってしまう要因としては、
★エナメル質の欠損、欠けやひび、ざらつきなど
→たしかにざらざらした表面には汚れがこびりつきやすいですよね!ステインだけでなく、プラークも着きやすくなるので、歯の表面がツルツルな方が良いです!
★唾液の組成
★唾液の量
★口腔内の衛生状況
などが関わってきます。
その他には加齢による影響も考えられる、そうです。
→加齢で、歯も消耗して表面の細かい、ひび、亀裂が増えたり摩耗するので、これが影響するのでしょうね。
これらのことから、歯の表面がざらついてるいるとステインがつきやすいということがわかっていただけると思います。
着色除去だけのクリーニングをしょっちゅうしていても、
粒子の粗い研磨ペーストで終わらせていては、エナメル質はざらざらしたままになってしまうので、より着色しやすくなってしまう場合もあるということですここで宣伝です
当院のPMTCクリーニングでは対策として、お時間の前半では汚れ着色の除去を行ない、後半は着色しにくくする歯の表面のトリートメントに力をいれています。
次に②内部からのものが原因の変色についてご説明していきます。
内部からの着色は歯の萌出前(歯の形成期)、萌出後の両方でエナメル質、象牙質に色素産性の物質が結合することによっておこります。
萌出前の例としては
★フッ素(沈着)症
★テトラサイクリン変色歯
★遺伝性のエナメル質や象牙質の形成不全
などがあります。
フッ素症やテトラサイクリン変色歯は環境が原因なので、遺伝ではありません。
萌出後の例としては
★歯の神経が死んでしまったこと(歯髄の失活)による変色
★医原性の変色
★加齢による変色
などがあります。
この内部からの変色の原因としては、局所的な原因と、全身的な原因とがあります。
局所的な原因は
★成長期の歯の外傷
★乳歯の根尖病変
★アマルガム充填による変色
★不適切な根管治療による変色
全身的な原因で有名なのが
歯のフッ素症とテトラサイクリン変色歯です。
フッ素症について
飲料水のフッ素濃度が高い地域で、かつてみられました。
特に見た目に問題となるのは永久歯の前歯のエナメル質の形成期(産まれてから5歳くらいまで)に高濃度のフッ素を摂取することです。
フッ素症の重症度は摂取量、摂取期間、感受性、エナメルが細胞の活性度など様々な要因があるそうです。
テトラサイクリン変色歯について
これは現在のアラフォー世代の方に非常に多
くみられます。
リーズの患者さまでも5、6名はいらっしゃいます。グレー~茶色のような色の縞模様に変色しています。
なぜこのようなことが起こるのか?
はじめて報告されたのはこのテトラサイクリンが広く使われるようになって10年くらいたった1950年代半ばだそうです。
そして米国FDAが妊婦さんや、子供がこの抗生物質を服用しないように警告をだしたのが1963年だそうです。
歯の形成期にテトラサイクリンに対する感受性がとても高くなるのだそうです(妊娠中期~8歳くらいまで)。
テトラサイクリン分子は歯を構成するハイドロキシアパタイト結晶中のカルシウムとキレート結合し、テトラサイクリンーカルシウムーリン酸複合体をつくります。
とくに象牙質で多くのテトラサイクリンを吸収します。なぜなら象牙質のアパタイト結晶の表面積はエナメル質のアパタイト結晶より大きいからです。
骨でもテトラサイクリンは吸収されますが、リモデリングによって吸収されたテトラサイクリンはなくなります。
エナメル質、象牙質はリモデリングしないので、永久にそこにとどまります。
変色の重症度合いは、摂取時期や期間、テトラサイクリンの種類によるそうです。
ニキビの治療でよく使われるミノマイシン(ミノサイクリン)は1週間以内の服用でも、重度の変色を誘発するそうです。
テトラサイクリン変色歯と虫歯になりやすさは関連はないそうです。
次に、局所的な原因での変色についてです。
日々診療をしていて、良くみかけるパターンをお見せしますね
PART1でも例としてお見せしたこちらの写真の黄色→の歯の部分をみてみてください。
天然の歯の状態ですが、色が茶色くなっています。
神経が死んでしまった歯はこのように黒ずんでしまいます。
なぜ神経が死ぬと、歯が黒ずんで変色してしまうのか?
このことをもっと知りたくて、私はこの変色シリーズをブログで書こうと思いました。
そして論文から答えを探し当てました。
神経が死ぬ原因は、虫歯の細菌感染か、または外傷(ぶつけた、歯がおれた、など)です。
このように変色した歯をお持ちの患者様に、過去にその歯をぶつけたことはありますか?と聞くと『はい』とおっしゃる方が多いです。
成長中の歯への外傷による変色は、外傷部位での血液溶解物質が、永久歯のエナメル質形成期の石灰化部位へ染みでることによっておこります。
萌出後の歯への重度の外傷では、髄腔内の血管が破裂して出血をおこすこともあります。
この血液は象牙細管の中に移動して赤血球が溶血してヘモグロビンを放出します。
このヘモグロビンは徐々に分解されて、鉄を放出します。この鉄が硫化水素と結合して硫化第一鉄となり、青みがかった黒い化合物となります。
出血を伴わないで、歯の神経が死んでしまった場合には、死んでしまった神経のタンパク質変性がグレーがかった茶色の変色を引き起こします。
このようなメカニズムで、神経が死んだ歯は黒ずんでいくんですね!!
納得
下の写真をみてみてくださいむかって左側の前歯2本は両方とも神経が死んでいる歯です。
○の部分の歯ぐきは他にくらべて黒ずんでみえませんか?
この2本のクラウンを外すと、中の歯の状態はこのようになっています同じように神経が死んだ歯でも、変色度合いが全然違います
歯ぐきの黒ずみは、この変色した前歯の色を透かしてしまっているのです。
歯ぐきの厚みはひとそれぞれなので、歯ぐきが薄い方ほど、歯の黒ずみをすかしやすいのです
そういう歯の審美治療は本当に難しいです
不適切な根管治療で歯の変色が起こる場合は、抜髄時(神経を取る処置の時)に歯髄の損傷がおこり、歯髄を取り残したりすることでおこるそうです。
なので、根管治療の質も歯の変色度合いに関係してくるということですよね
責任重大です
今日は長くて難しい文章にお付き合いいただきありがとうございました。
次回、最終回のPART3『歯の変色、着色それぞれの解決法、治療法』に続きます