根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)

追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)

根管治療の成功率

こんにちわ。李です。
毎日厳しい寒さが続きますね
リーズデンタルクリニックは、足下がとても冷えます。みなさまに膝掛けをお使いいただいてますが、それでも冷えるようでしたら遠慮なくおっしゃってください。
私は靴の中に貼るホッカイロをしのばせて毎日診療しています

さて、今日は根管治療の成功率についてです。
(しばらくは根管治療について語り続ける予定です。もうすぐ専門医試験があるので自分の復習もかねて

根管治療は治療する歯の状態によって大きく2つに分けられます。
イニシャルトリートメント(initial treatment)とリトリートメント(retreatment)です。

イニシャルトリートメントは、はじめての根管治療です。
リトリートメントはすでに根管治療された歯の再治療です。

この二つ、成功率が違います。
さてどちらが成功率が高いでしょうか?

答えはイニシャルトリートメントです。

Ng YLらは、2007年の論文、Outcome of primary root canal treatment: systematic review of the literatureにおいて、いろいろな論文をまとめた結果、イニシャルトリートメントの成功率を60~100%以上と報告しています(この論文は63の研究をまとめたものなので、ばらつきがかなりあります。無菌的な環境でおこなわれたイニシャルトリートメントの成功率は90%以上と考えて良いでしょう。)。

retreatment再治療の場合は

同じく Ng YLらによって、2008年の論文、 Outcome of secondary root canal treatment: a systematic review of the literatureにおいて、77%の成功率としています。
Fabio(2004)らによると70%の成功率です。

なぜ、リトリーメントの方が成功率が低いのでしょうか?
それは不適切な根管治療によって、根管の形が本来の形から逸脱してしまっていて、治療が困難になっていることがあげられます。(リトリートメントで、根管の形態が変化してしまったものは、成功率がさらに下がり50%以下になるとう報告もあります。/Fabio(2004)らによる)
そのために、器具が到達不可能な部分が多くなったり、感染が長引いている分、すみついている細菌の種類やバランスも変わってしまうことも理由としてあげられます。
また、根管の先端から外にでた細菌が根管からはアプローチ出来ない根の表面に住処をつくって、そこで病原性を発揮する場合があります(根尖孔外感染)。この場合は根管治療では治らないので、歯内療法外科処置が必要となります

また、リトリートメントの場合は根管治療が成功しても、度重なる治療で、全体的に歯が薄くなっている場合があります。
その場合はその後クラウンを被せてお口の中で機能させた時に破折のリスクがあります。

リトリートメントにならないためには、最初の根管治療イニシャルトリートメントを成功させる事です。
それはつまり、ちゃんとした環境で専門的な治療を受ける事です。

無菌的環境(全て完全滅菌またはディスポーザブル)
ラバーダム防湿
マイクロスコープ
根管の形態を熟知し、Bio Mechanical Instrumentation: 適切な濃度の薬液、と適切な大きさの拡大。隙間のない密な根管充填と治療中に唾液が入り込まないよう厚みをとった仮封材などなどがあげられます。

注:このブログで語っている事はすべて欧米の歯内療法の論文がベースになっています。
治療が行なわれる環境や専門医が存在しない日本の根管治療とは、だいぶ違いがあると思いますので誤解のないようにお願い致します。
日本ではイニシャルトリートメントの成功率はこんなに高くありません。

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