LEE'S ブログ
根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。
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LEE’S ブログ の進化型『LEE’S ACDEMY』4/3開講!!:新しい記事、これまでの記事の内容のアップデートバージョンはもちろんのこと、新しく楽しい試みをたくさん行う予定です。
根管治療、前処置の重要性/ 歯のラインがくっきりでていない
皆様こんにちは。李です。
梅雨が明け、猛烈な暑さですね
エアコンの効きが悪くて院内も暑いです。恐ろしい猛暑の時期がやってきてしまいました
さて、移り変わる季節とは関係なく日々の診療は続いて行きます。
根管治療でお悩みの患者様がほとんどのリーズデンタルクリニックですが、根管治療の前処置の段階でいろいろな問題を抱えている歯が多いなと、常々思います。
根管治療以前に、この問題を解決しないことには、根管治療もうまくいくはずがないのです
このブログでも前処置の重要性は何度も書いておりますが、今日はまた別の症例を見ながら根管治療に影響するだけでなく、後の被せもの(クラウン)の治療が綺麗にできるかどうかも左右する問題について書いていこうと思います。
根管治療に入る前に、今歯にかぶっている被せもの(クラウン)や詰め物をはずして中の歯の状態をチェックし(虫歯、ひびがないか、健康な歯の厚みや丈がどれくらい残っているか)、続く根管治療にむけて隔壁の処置などをおこなう前処置を必ずおこなって行きます。
詳しくは当院根管治療のページを参照してください。
これはとても大切な治療ステップなのです。
なぜなら、ここで何か悪い事を見落としてしまうとその後の根管治療の成功にも影響するからです
治療をしていてよく遭遇するケースがあります。
それは、クラウンと歯の接合部分、境界のところ(マージン部分といいます)がずれているケースです。
どういうことかと言いますと、以下写真を見ながらご説明しますね。
下の写真は良い例です。クラウンと土台であるポストをはずした状態です。
注目するべきところは、歯のラインが全周しっかりとでています。歯と歯肉の境界がはっきりわかりますよね?(ピンクの歯肉は少し炎症がありますが)それに歯の厚みや丈もまあまあ残っています。
次に良くない、問題のあるケース。同じくクラウンと土台をはずした状態です。
青→部を見てください。歯肉は赤く(私が削って傷つけたわけではありません)、歯の歯肉の境界はくっきりしていません。それどころか、歯肉が歯にかぶっています。
本来の歯のラインが、歯肉の位置より深いところまでなくなってしまっていて、そのために治療がうまくいかずに、ずれたところにクラウンがかぶっていたのです。
そのせいで歯肉に炎症もおきています。術前の歯周ポケットの検査でも歯肉からの出血がひどく(つまり炎症をおこしている)、患者様は歯肉の腫れや違和感を感じていらっしゃいました。
本来の歯のラインをしっかりだしてあげないと、治療の全てがうまくいきません。
そのためには麻酔をして歯肉を切除します。
電気メスを使い歯肉を切除したところ。
どうでしょうか?上の状態と比べてみてください。これが本来の歯のラインです。歯が1.5倍くらい大きいですよね?本来はこの位置からぴったりあったクラウンを作らないといけないのです。上の写真のような歯とずれて歯肉がかぶったような状態でクラウンを作ってかぶせてしまうと不適合で隙間があり、そのためばい菌が入りやすく二次虫歯になりやすくなります
また接着もうまくいかないので、はずれやすくもなります。
なによりも歯と歯肉の周りが不衛生、不健康な状態がずっと続くのです。
横からみたところ。歯がかなり薄く、歯の丈がほとんどありませんね。
綺麗なかぶせものをつくるための条件が悪いです。綺麗なクラウンをつくつためには
歯肉の上にすくなくとも1mm~1.5mmは歯の丈が必要なのです。
(このあ患者様はこの後、歯の丈を確保する歯冠長延長術という外科手術をおこなうことになりました)
一番最初にお見せした良い例の隔壁後の横から見た状態。
全周くっきりと健康な歯が厚み、丈ともにしっかりあってはじめて隔壁もしっかりおこなえるし続く根管治療もうまくいきます。そして何よりも最終的なクラウンが歯にぴったりあったきれいなものをつくることができます。
歯にぴったり合った綺麗なクラウンとはどんなものか?
詳しくは前々回のブログを見てみてくださいね
根管治療は根の中の治療ですが、根管治療に入る前にこういう問題も見過ごしてはいけないし、改善しないといけません。
今日のまとめです。
歯のラインをしっかりとだして治療をおこなうことで、
①接着がうまくいき、のちの根管治療の際にすきまからの細菌をシャットアウトできます。
これは根管治療の成功に影響します。
②のちのクラウンが歯にぴったりあったものができるため、歯肉が健康に見た目もよく、隙間からの細菌侵入による二次虫歯になりにくいです。