LEE'S ブログ
根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。
お知らせ
LEE’S ブログ の進化型『LEE’S ACDEMY』4/3開講!!:新しい記事、これまでの記事の内容のアップデートバージョンはもちろんのこと、新しく楽しい試みをたくさん行う予定です。
根管充填と仮ぶた(仮封剤)のお話
久しぶりにまとまった雨が降りました
じめじめしていますが、少し涼しくて嬉しいです。
早く涼しくなってほしいものですね
暖かいコーヒーを美味しく飲みたいです。
私はコーヒーが大好きなのですが、暑さのせいで年々夏の間のアイスコーヒーの消費量が増えてしまい、歯のホワイトニングをしても白さがキープできません
でもコーヒーもやめられません
さて、今日は根管充填と仮ぶた(仮封剤・かふうざい/といいます)のお話をしていきます。
根管充填は、根管治療の最後のステップなので患者様の中では根管充填が終わったらもう安心!というイメージをお持ちの方が多いのでは??と思います。
もしそうだとしたら、これはおおきな勘違いなのです。
根管充填をして、仮封のまま長く時間が経過すると、隙間から唾液内の細菌が侵入します。
そして、その細菌に対して根管充填剤が完璧なバリアになるかというと、そうではないのです。
もしも根管充填をして、仮封剤がとれてしまって長くそのまま経過してしまった、となると唾液中の細菌はだだもれ状態と言っても過言ではないでしょう。。
それくらい根管充填は弱いバリアの役割しかないのです。このことは多くの研究者が報告しています。
前回のブログで紹介したRAY&TROPE(1995)は、
フルに根管充填された状態での実験で3ヶ月以上口腔内にさらされた場合は再治療が必要と報告しています。
フルに根管充填された歯へ、バクテリアが根尖まで侵入するまでの時間を調べた報告は、他にも
Magura ME et.al 1991, Swanson K et.al 1987, Torabinejad M et.al 1990で、 5h〜90日(ずいぶんと開きがありますが)
ポスト孔が形成された歯へのバクテリアが根尖まで侵入する時間を調べたものは
Gish SPet.al(1994)
Barrieshi K, er al.(1997) 66日〜72日
などと報告されています。
時間にばらつきはありますが、とにかく根管充填だけでは細菌の侵入を防ぐバリアとしては不完全、ということです。
ここで2つの論文をご紹介します。
1987年のSwanson Kらの論文『An evaluation of coronal microleakage in endodontically treated teeth. Part I. Time periods. 』では、in vitroの実験で、
根管充填した歯を人工唾液にさらして3日後には根尖近くまで唾液の漏洩がみられた、
歯冠側からの漏洩は比較的短時間で生じる
根管治療の失敗の原因となり得る、と報告しています。
Yamauchi Sらは2006年の『Effect of orifice plugs on periapical inflammation in dogs.』という論文で、犬の歯を使った実験をおこなっています。
犬の歯を抜髄、根管充填をして、仮封をせずにそのまま口の中に放置すると、8ヶ月後には89%が根尖に炎症がみられた。2mmの厚みの仮封(正確にはIRM、CRでのoriffice plug)をおこなうと、感染率が低下したと報告しています。
以上のような実験から、仮封剤は再感染防止に重要な役割をはたしています。
でも、仮封剤ならなんでも良いかというと、そうではあありません。
すぐにとれる仮封剤、とくに保険治療でよく使われているストッピングという、暖めてやわらくくしたものをグニュッとつめるやつは、ほとんどバリアの役割を果たしません。固形物は入らないかもしれませんが(そんなことはもってのほかですが)、唾液はどんどん侵入します。ストッピングは簡単にとれて便利なので、時間を効率よく使いたい日本の保険治療では好んで使われている傾向にあります。
でも、すぐ取れる仮封剤=隙間多い、ゆるい=唾液しみ込みやすい です。
せっかく根管治療で中をきれいにしても、そんな仮封剤だったら、次の治療までの間にまた唾液から細菌が侵入し、細菌が増えてしまい→なおらない、というような悪循環に陥ります。
ストッピングを使用する場合はその上に硬い、はずれにくい仮封剤で二重仮封をするなど工夫が必要です。
厚みもしっかりとることが大切です。
バリア効果の高い仮封剤も、いつかははがれたり隙間ができてくるので永久的なものではありません。
一番良いのは根管充填後、なるべく早くコア、ファイバーポスト&コア、クラウンなどの歯冠修復を行うことです。
前回の記事でもお話しましたが、コアは根管治療で細菌を減らした歯の状態をキープするための最大で最強のバリアになります。細菌の侵入経路のシャットアウトに一番効果があります。
LEE’S DENTAL CLINICでは、根管治療から、コアの築造が終了するまでをひとくくりで考えています。
アポイントの時も、根管充填からなるべく時間があかないように患者様にもお願いしてスケジュールを組んでおります。それくらい重要に考えています。その後、第2のバリアになる適合の良いクラウンを精密治療でおこなっていく、という流れになっております。
もちろんコア築造を行なう時は、ラバーダム、マイクロスコープを使用し、信頼度の高い接着システムを使用、的確な技術で行なう、ということは言うまでもありません!!
これ