根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。
ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。

根管治療をしないで歯根端切除術のみ行うケース〜長いポストで除去が難しい場合に〜

2017.10.16 | 根管治療, 歯根端切除術 |

 

皆様こんにちは。すっかり寒くなりましたね。

今日は生活歯髄療法のお話に入る前に、歯根端切除術についてもう少し書きたいと思います。

 

根管治療を行わずに歯根端切除術だけを行う場合

 

歯根端切除術は、通常の根管治療で病気が治らなかった場合に行う手術法です。

あくまで病気の原因は根管の内部の細菌感染ですから、根管治療を行わずに手術のみ行うことは病気の原因の感染源を残すことになりますし、ひび割れの見落としなどもありえます。

 

ですので、通常は行いません。

 

では、どういう時に行うのか?当院では二つのパターンがあります。

 

以下にご説明していきます。

①コア、ポストが長く太く、除去するのが難しい

または物理的に不可能、外すことにリスクがある場合

前歯などでよくあるケースです。過去の治療でメタルコアのポスト部が極端に長く、除去が難しい場合、

削る道具の長さにも限界があるため、物理的に届かずはずすことが不可能な場合、

歯が薄く、今後長持ちしなさそうな歯で腫れや痛みなど症状があり、抜歯はまだしたくなくて延命的な処置ご希望の場合などに

根管治療は行わずに歯根端切除術のみ行う場合があります。

 

症例でご説明していきます

 

下のレントゲンの患者様は長く太いメタルポストが装着されていて、歯肉に腫れ痛みがありました。

前歯なので、抜歯をすると隣の健康な天然の歯を削りブリッジにするか、インプラント治療となります。

まだお若い患者様でしたので、使えるうちは自分の歯を使いたいと強くご希望されていました。

ポストが長すぎて除去が難しいこと、うまく外せたとしても歯が薄すぎて長持ちしない場合は、トータルの治療費用対効果が悪すぎることなどをご説明し、

歯根端手術のみを行うプランとなりました。

 

初診時のレントゲン写真

 

歯根端切除術後

術後1年経過観察時

腫れ、痛みの症状も改善、病気は治癒して問題なく歯を使えています。

こういったケースでは、根の中に感染源が残るというデメリットよりも、クラウンやコアを外すことのデメリット、リスクの方が大きいと考えます。

そして、歯肉に腫れや痛みなどの明らかな不快症状があってなんとかしたい、けれども抜歯はまだしたくない、という場合に適しています。

 

②患者様の強いご希望で、被せ物を壊したくない場合

当院では、患者様の強いご希望があっても、その歯がしっかりした歯で長持ちしそうであれば被せ物を外して根管治療をオススメすることが多いです。

なぜなら再発した時のリスクを考慮するからです。

それでも、セラミック治療を行ったばかりでどうしても外したくない という強いご希望がある場合には、後の根の病気の再発のリスクをご納得いただいた上で歯根端切除術だけを行います。

 

こういったケースでは、患者様にとっては根の中に感染源が残り病気が再発することのリスク回避よりも、クラウンを壊さないことの方がプライオリティが高いと考えます。

 

歯根端切除術〜手術で根にひびが見つったらどうするか?〜

2017.08.19 | 根管治療, 歯根端切除術 |

こんにちは。李です。今日は歯根端切除術について、手術で根にひびが見つかるケースについてお話していきます。

 

根管治療を行っても治らない場合の原因の一つとして、根の表面に入ったひびがあります

 

根の内部にまでひびが達していれば、顕微鏡を見ながらの根管治療中にヒビを発見できる事もありますが、

まだ内部に到達してないようなひびは歯根端切除手術をして初めて発見される事も多いです。

根管治療をして、歯根端切除術まで行って、その時にひびがあった、となるととても残念な結果です。

根にひびがある限りその歯は予後不良なので、抜歯が第一の選択肢に上がってきます。

色々と手を尽くしたのに結局ダメだった、歯は残せなかったということになります。

けれども患者様にとっては、歯を残したい一心で歯を保存するための根管治療を受けていらっしゃいますので、

手術でひびが見つかったからすぐに歯を抜く、という決心がなかなかつかない方もいらっしゃいます。

 

私としては手術をせっかく行っていますので、根にひびを見つけた途端に手術をやめることはせず、そのひびの表面にくっついている感染した部分を染め出し、なるべく取り除きます。

そこをMTAで詰めて、通常の手術内容を一通り終えます。

その後患者様に動画でひびの存在と歯根端切除術で行った処置、ひびのせいで予後不良であること、抜歯について、また抜歯後にどういった治療があるかをご説明します。

患者様はしばらく様子を見ながら抜歯の時期を考えるという方と、すぐに抜歯をする方に分かれます。

というのは、

ひびがあっても、手術を行うとことで汚染部分を一旦取り除き、MTAで補修をするため、もともとお悩みだった腫れや痛み、その他の不快症状が劇的に改善します。

(あくまで一時的です)

 

以下に症例をご紹介します。

ケース1

過去に3回根管治療を繰り返し、治っては再発を1年おきに繰り返していたとう患者様です。

①治療前の初診時、歯肉に腫れもあります②当院根管治療後、症状は軽くなるものの完治しません。

③歯根端切除術直後(この時にひびが見つかりましたが、一通りの処置を終えています水色←部分がひびの部分です)

④術後半年 レントゲン上では黒い影がなくなり、治癒しています。症状もなく調子よく使えているとのことでした。

⑤術後1年2ヶ月 安定して機能しています。

ケース2

痛みと歯茎を押した時の違和感から根管治療を行いました、治療時にひびは見られず、症状が改善しないため手術を行なっています。

①当院根管治療後、症状は軽くなるものの完治しません。

③歯根端切除術直後(この時にひびが見つかりましたが、一通りの処置を終えています水色←部分がひびの部分です)

④術後1年 レントゲン上では黒い影がなくなり、治癒しています。症状もありません。今の所歯は問題なく機能しています。

 

 

この症例のように、改善した状態でしばらくは調子よく歯を使えているのなら、まだ抜きたくないという方もいらっしゃいます。

延命と思って、症状がない限りその歯をそのまま使って生活する、それはそれで一つの選択肢だと思います。

次に症状が出てきたら抜くけども、せっかくここまでやったのだから、延命でもいいからまだ抜きたくない、

歯の状態や今後起こりうるトラブル、抜かなかったために起こるデメリット、次にかかる費用等をしっかりご納得いただいた上でしたら、そのように使っていただいて構わないと思っています。

ただし、あくまで短期では良好な結果ですが、長期的にどれだけ持つかはわかりません。

上にかぶせるクラウンにはお金を欠けない安価なものをお薦めします

 

注:今回のように延命で残している歯は、治療の最終段階でひびが発覚し、患者様とお話の上保存しています。

ひびがあることが最初の段階で発覚する場合には、こういった延命処置はお受けしません。

 

歯根端切除術〜モダンテクニック〜

2017.07.26 | 根管治療, 歯根端切除術 |

 

こんにちは、李です。

しばらく根管治療系の記事を書いていなかったので、今回から数回に分けて顕微鏡を使った歯根端切除術についてお話ししていきます。

歯根端切除術は、通常の根管治療で根の中のお掃除をしても治らなかった場合に、次の一手として行う治療です。

残念ながら、一度細菌が住み着いてしまった根の中から完全に細菌をなくすことはできません。

殺菌が届かないところもありますし、殺菌が効きにくい細菌もいます。

そういった部分は主に根の先端3mmに多いと言われています。

 

顕微鏡を使った歯根端切除術は(モダンテクニックとも言われます)

根の先端をカットし、その断面を細菌の染め出しを行って観察します。

断面には治らない原因となる汚染部分が染まってきます。なので、その部分をさらに取り除いていきます。

この観察の部分が本当に大切です!!

ただ切っただけでは細菌を取り残していることも多く、治らない場合も多いのです。

 

 

歯根端切除術

切った根の断面の感染源を染めだしているところ

染めた根の断面を高倍率で観察しているところ、感染減、ヒビなどがないかをチェックします

 

 

手術したのに治らない場合

多くは再手術すると切断面がちゃんと切れてなかったり、汚染が残っています。

汚染してる部分は、止血をして、染め出しをして顕微鏡で高倍率で観察しないと、見落としてしまいます。肉眼では難しいと思います。

このことが、肉眼で行う手術と顕微鏡を使った歯根たん切除術(いわゆるモダンテクニックと言われる手術法)の成功率の差に大きく関係していると思います。

 

切断面の観察、顕微鏡手術用の小さな鏡で観察しています

 


私が手術をしていて思うことは、根管治療で治らなかった時に手術で直に根っこの表面や断面を見ると、そこに治らない原因が見えるので、とても納得します。これでは、根管治療だけで治らないはずだ、と納得でき
のです。

そして、ひどく汚染していて炎症の度合いが重症でも、大きな症状がなく日常生活が送れる人間の免疫力ってすごいな、と感心します。

また、それを切除して、汚染が残っていないか確認し、新たなお薬を詰めると、びっくりするほど治ります。

手術と聞くと、怖くて躊躇する患者様も多いのですが、

実際手術が終わると、思っていたほど大変じゃなかった、

症状がなくなり、思い切って手術を受けて良かったという方がほとんどです。

麻酔をしっかり効かせるので、術中はほとんど痛みはありませんし、腫れもピークは3日めくらいで1週間もすればほとんど気にならない程度です。

顕微鏡を使用した歯根端切除術(モダンテクニック)は、ご自身の歯を残すための最後の方法と言えます。

手術を行うことで、不快症状が改善されます。

手術を検討されている方は、肉眼で行う方法でなく、顕微鏡を使ったモダンテクニックでの手術をお勧めいたします。

 

 

マイクロスコープを使用する歯根端切除術と肉眼での歯根端切除術の違い〜その2〜

2016.05.17 | 根管治療, 歯根端切除術 |

こんにちは、李です。

前回に続き、マイクロスコープを使用しておこなう歯根端切除術について解説をしていきます。

マイクロスコープを使用した歯根端切除術では、病気の原因である感染源のチェックを必ず行うこと、

そして、そのことが肉眼でおこなう歯根端切除術との大きな違いであり、成功率の差につながっていることを前回の記事でお話しさせていただきました。

 

マイクロスコープを使用した歯根端切除術は、マイクロスコープや専用の特殊な器具を使います。また手術のためのトレーニングをある程度積まないと行うことができません。

また、アシスタントの動きも非常に重要です。歯科医もアシスタントもしっかりトレーニングを積んだ上で行わないと、手術がうまくいきません。

前回は根の切断面の観察のところまでお話ししましたので、今日はその続きを解説いたします。

 

切断した根の断面を染め出しながら感染源の確認をおこないます

スクリーンショット 2016-04-26 14.10.43

 

根管治療で詰めたゴム素材の充填材を取り除きます(逆根管形成)。専用の超音波の器具でおこないながら、感染源が残っている場合は一緒に取り除きますます。

スクリーンショット 2016-04-26 14.12.39

 

逆根管形成が終わったあとも染め出しをおこない、青く染まる部分が(感染源)のこっていないか、念入りに確認します。

 

 

 

スクリーンショット 2016-04-26 14.13.26

 

逆根管形成をした穴に、MTAセメントを詰めます。

 

スクリーンショット 2016-04-26 14.14.31

MTAセメントが開発される前は、別のお薬が使用されていました。MTAセメントは封鎖性がよい(簡単な言葉で言うと傷口の密閉度が高い)、生体親和性が高い(簡単な言葉で言うと、接する細胞と仲良くできる)ため、

こういった歯根端切除術や、パーフォレーションリペア(根の中にあいた穴の修復)などに非常に適しているお薬です。ですので、現在マイクロスコープを使用した歯根端切除術では通常、MTAセメントやその次の世代のバイオセラミック系のお薬が使用されることがほとんどです。

 

さて、以上がマイクロスコープを使用した歯根端切除術のおおまかな流れです。全てマイクロスコープを使用し、拡大した視野でおこないます。

何度も繰り返しますが、マイクロスコープを使用することで、感染源が残っていないかを何度も入念に確認します。

感染源が残っていると治らないので、この確認はとても大切なのです。

けれども肉眼での手術ではこれが難しいのです。

 

リーズデンタルクリニックで歯根端切除術を受けた患者様は口を揃えてスッキリした!とおっしゃいます。

手術と聞くと怖いので、最初はみなさんやろうかどうしようかを迷っていらっしゃいますが、実際に手術を受けてみると思ったほど大変ではなかったし、

本当にスッキリして、以前感じていた重い感じや、ドクドクと拍動する感じが全くなくなったと言っていただけるのがまた嬉しいところです

手術を受けるか迷っていらっしゃる方は、どうぞご相談ください

 

 

 

マイクロスコープを使用する歯根端切除術と肉眼での歯根端切除術の違いは?

2016.05.01 | 根管治療, 歯根端切除術 |

こんにちは。李です。

今年に入り、マイクロスコープを使った歯根端切除術をおこなう頻度が多くなっています。

4月におこなった3名の患者様の手術のうち2名の患者様は以前に他の歯科医院でも手術をおこなっていらっしゃいました。

そして1名の方は今年の1月に手術をおこなったにもかかわらず、一ヶ月後に症状が再発しています。

当院で手術をおこなう患者様の中には、以前に一度、歯根端切除術(Micro Apical Surgery)を受けている方が多いのです。

ただし、それはマイクロスコープを使った歯根端切除術ではありません。

 

当院のHPの歯根端切除術のページでご説明しているように、 肉眼での歯根端切除術は59%、 マイクロスコープを使った歯根端切除術は94%の成功率と報告されています。(Setzer FC et al. 2010)

マイクロスコープを使用する手術方法の方がはるかに成功率が高いのです。

 

どうして、通常の手術は成功率が低いのでしょうか?

歯根端切除術は、根管治療でなおらなかった根っこの病気を治すための次のステップで、名前の通り根っこの先(歯根端)を切り取ります。

根の先に、根管治療で殺菌が届かない部分が多いので、根の先端を切ることでその部分を根こそぎ取り去るイメージです。

けれども、切っただけでは本当に感染部分が全てとれたかどうか、わかりません。

切った後に、その断面を観察して、感染源の取り残しをチェックしないといけないのです。

根の中の感染が病気のそもそもの原因なので、切った後にも感染源が残っていた場合は、病気は治りません。

 

以前のブログで説明に使用した、根の断面の写真です。

黄色矢印のところが感染源の部分です。せっかく手術をして根っこを切断しても、確認をするとこういう部分が残っていることが多々あります。

切っただけでは治らない、原因の一つです。

isumusu1

根の断面を観察し、感染の取り残しがないか確認することは、手術の成功に関わる非常に大切なステップなのです。

 

では、どうやって観察するのでしょうか?

根の断面の観察は肉眼では不可能です。

顕微鏡を使用し、拡大した状態で観察する、直接見えないところは、顕微鏡手術専用のマイクロミラー(直径3~5mmくらいの大きさです)を使用して観察するのです。

 

真ん中が普通の歯科用ミラーでで、両脇のものがマイクロミラーです。比較すると大きさの違いをわかっていただけると思います

IMG_0102

 

また、観察する前にはしっかりと止血をしないといけません。

止血ができていないと血が滲んできちんと観察することができません

 

下の写真は、当院でのマイクロスコープを使った歯根端切除術(Micro Apical Surgery)で、感染がのこっていないかをチェックしている様子です。

止血をした後に、感染部分が残っていないかを確認するため、染め出しをおこないます。

 

スクリーンショット 2016-04-26 14.12.21 

 

染め出しをおこない、根の断面を確認すると、ひびがが染まってきました。このひびが残っている限り、病気はなおりません。

肉眼でのの歯根端切除術では、こういった観察は不可能ですので、治らない原因を見落とすことになります。

スクリーンショット 2016-04-26 14.08.18 スクリーンショット 2016-04-26 14.11.52

このようにひびが見つかる場合はひびがなくなるまで、根を削っては染めて確認、を繰り返します。

根っこはどんどん短くなりますので、削ることにも限度があります。それでもひびがなくならない場合は、最終的には助からない(つまり抜歯)ということになります。

 

こちらはマイクロミラーを使って切断面を確認しているところです。上の写真と比べてみてください、根の断面にひびはなく問題ない状態です。

スクリーンショット 2016-04-26 14.16.05

 

このように、マイクロスコープを使用した歯根端切除術では、病気の原因である感染源のチェックを必ず行います。

この手術方法は、マイクロスコープや専用の特殊な器具を使います。また手術のためのトレーニングをある程度積まないと行うことができません。

また、アシスタントの動きも非常に重要です。歯科医もアシスタントもしっかりトレーニングを積んだ上で行わないと、手術がうまくいかないのです

 

同じ手術でも患者様にとっては、何が違うのかはわからないことが多いとおもいます。

次回も、この後の引き続きの処置をご説明しながら、マイクロスコープを使用した歯根端切除術と肉眼での歯根端切除術の違いについて、なるべく分かりやすくご説明していこうと思います

 

12