根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。
ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。

根管治療の診査、検査でわからないこと〜前処置の重要性②

2016.02.23 | 根管治療, 根管治療の診査 |

皆様こんにちは。だいぶ日差しが春らしくなってきましたね

春の訪れの前に、先週40歳になりました、あっとう間に歳をとるものですね 

歯科治療は体力勝負の仕事なので体のメンテナンスを頑張らねばとひしひしと感じます

 

さて、今日も前回と同じ根管治療の診査、検査でわからないこと〜前処置の重要性というテーマでお話しを進めようと思います。

 

右下の奥歯の歯茎がずっと腫れていて治らない、というお悩みの患者様の症例

 

診査では歯茎が明らかに腫れています。歯周ポケットは正常範囲内の値です。

レントゲン検査では根を取り巻くように黒い影があります(赤→部分)。根尖性歯周炎(根っこの病気)を患っていると診断しました。歯茎の腫れはこの根尖性歯周炎が原因と考えられます。

 

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それ以外に気になる部分は青→の部分です。歯が極端に薄くなっています。この部分は歯肉の中なので見た目での診査では判断できません。

けれども隣接する歯槽骨(黄→部:歯を支える骨の部分)に吸収は見られまん。

ヒビや穴(パーフォレーション)がある状態で長く経過すると、感染から、この部分の骨が溶けて吸収した像になるのです

 

いつものように、根管治療前処置の時に、診査ではわからないかった問題が発覚し(ひびや,穴、歯が少なすぎて治療できる状態ではない等)

最悪のケースでは抜歯しか方法が無いということもありえることを、ご説明します。その上で治療をご希望される場合には治療をスタートします。

クラウンを外したところ。赤◯部は土台:レジンコアです。

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レジンコアを外す時に注意しないといけないことは、歯と似たような色をしているので、気をつけないと歯も余分に削ってしまう可能性があることです

歯なのかレジンなのかわからない場合は、顕微鏡下で、超音波を使いながら識別していきます。とてもデリケートで細心の注意が必要です

一方、金属のコアを外す時は一目瞭然なので、わかりやすいです。

 

レジンコアを剥がしている途中、赤◯部にまだ残っています。ここはレントゲンでも歯が薄いところでしたので、過剰に削らないように気をつけながら進めます。

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全て剥がし終わったところ。青→部に穴(パーフォレーション)があることが発覚しました。歯茎のお肉がみえています。

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以上、治療前の検査では確実にわからなかった問題が、治療を始めた段階で発覚した例です。

前回のパート①でもお話ししたように、歯がどのような状態になっているかを確実に把握するためには、クラウンや土台を外し、直接目で見るしかありません。

CBCT撮影を事前におこなうことでレントゲン検査よりは歯の状態を格段によく把握できるのですが、クラウンやコアが入った状態で撮影をおこなうと、障害陰影でよく見えない部分があったりもします。余分な被曝はしない方が良い、ということもあり、どんな歯でも治療前の診査でCBCTをルーティンで撮影するということは、当院では行っておりません。どうしても必要な時だけにしています。

一番確実なのは外してみてから、ということで前処置は診断的な治療といえると思います。

 

以上、根管治療の診査、検査でわからないこと〜前処置の重要性、2回にわたりお話ししてきました。

3月からはまた別のテーマを書いていく予定です。

宜しくお願いします

 

根管治療の診査、検査でわからないこと〜前処置の重要性①

2016.02.03 | 根管治療, 根管治療でのレントゲン検査, 根管治療の前処置, 根管治療の診査 |

こんにちは。李です。

根管治療でお悩みになり、初診で検査を受け、いろいろなご説明を納得していただき、そしていざ当日治療、となった時に、

治療前に予測できなかった問題が現れることがよくあります。

治療する前に100%歯の状態がわかればいいのですが、多くの歯はかぶせものが被っていますので、レントゲン検査をおこなっても、被せ物に隠れてしまって問題がわからないことは良くあります。

ですので、根管治療に入る前の、被せ物や土台をはがす処置(当院では根管治療前処置と言っています)は、歯の診査の一部分とも言えます。

この根管治療前処置は根管治療の成功を左右するといっても良いくらい、とても大切な処置です。

 

今日は一症例を例にこのことについて、なるべくわかりやすくご説明していきます

 

2ヶ月前に歯の神経を取る根管治療をおこなって、クラウン(被せ物)をはめてから痛くなったという患者様です

診査をおこなうと、確かに、歯をコンコン叩くとお痛みがあり、また硬いものを噛んでもお痛みがあります。

歯周ポケットは正常範囲内です。歯肉に痛みはないようです。

神経を取る根管治療でばい菌が入ってしまったのかな?など考え、根の周りの炎症のを疑います。そしてレントゲン検査で確かめます。

 

こちらがレントゲン写真です。見たところ、根の周りに根っこの炎症の病気の証拠である黒い影はありません。ただ、根が曲がった形をしていて、根の先までお薬が入っていません(部)。

 

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この部分に神経の残骸がつまっていて、そこに細菌が入り込むと、細菌が増えやすい環境になり炎症が起こります。

けれども2ヶ月前の治療だから、細菌が蔓延して炎症が起こっていても、まだレントゲンで変化が出る段階ではないかもしれない。または、痛みは根の周りの炎症が原因ではないかもしれない、などいろいろなケースを想定し、患者様にもそのようにご説明します。

歯の上の部分はどうでしょうか、青線の部分に注目してください。歯の丈、厚みはレントゲンで見る限りは、極端に薄くはなさそうですが、向かって右側よりも向かって左側の方が歯が少なくなっています。歯が少なく薄い部分はひびが入りやすいこと、また、はがして歯の内部を見るとすでにひびがある場合があることなどをご説明します。

あらゆる可能性をご説明し、治療内容、リスク、費用、回数などご説明いたします。その上で治療をご希望の場合は、次に進みます。はがす治療、根管治療の前処置です。

 

前述のように、前処置の段階では初回の検査よりも、もっと詳しい歯の状況ががわかります。

 

クラウンを剥がしているところ、かなり分厚いものが入っています。

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リーズデンタルクリニックでは、歯に強い力をかけると割れることがあるため、

削り取る方法、振動で揺らして取る方法で、クラウンや土台をはずします。削るバーは良く切れるものでないと歯に力がかかるので新品を使いますが、硬く分厚い金属の場合、新品を3本くらい使わないとはずれないこともあります

 

クラウンをはずし、土台を剥がしているときに、一部、歯がない部分(穴)があるところが見えてきました(◯部

すかさず、器具で確認します。

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部分は、歯ではなく以前の治療の土台の名残のようです。これでは穴を通して、細菌や、細菌の栄養源となる唾液、血液が根の中にだだ漏れ状態です

 

超音波を使って歯を削らないよう振動ではがしていきます。

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全てはがし終わったところ。

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歯肉よりも下の方まで歯が無くなってしまっています レントゲンではこの状態はわかりませんでした。

根管治療に入る前に、この部分に堤防を作り(隔壁という処置です)、唾液や血液の流入をブロックしないといけません。

この処置はとても大切な処置で、うまくいかないと根の中に細菌やその栄養源が漏れて入っていきます。そんな状態ではマイクロスコープやラバーダムを装着した根管治療を

おこなっても、うまくいきません

この歯には幸いヒビはありませんでしたが、歯が薄いことをご説明しまし、歯の保存をご希望される場合はその後の治療を続けていきます。

 

 

 

 

 

 

 

根管治療の診査の重要性〜症例をみながら〜

2014.08.28 | 根管治療, 根管治療の診査 |

こんにちは、李です。

8月も今週で終わりですね。あっという間でした。

それにしても暑い夏でしたね……(昨日今日は涼しく、エアコンつけずに過ごせるのがうれしいです)

今年の夏は、暑かったことが一番の思い出です

 

さて、今日もまた根管治療のお話をしたいと思います。

前回は根管治療の初診でどういった検査をするのか、についてお話しました。

今日は、具体的に1症例をみながら複数の検査をおこなうことの重要性をお話していこうと思います。

根管治療専門医がおこなう検査手順をふまずに、診断をしてしまうと(たとえば視診とレントゲン検査だけとか)誤診につながることもあり、必要のない歯に根管治療をして、でも治らない、なんてことが起こってしまう可能性もあるのです。

 

こちらの症例は、はぐきにニキビのようなものができた、ということで来院された患者様です。

その他に痛みなどの症状はありません。

右上6番という奥から2番目の歯のちょうど真下にぷっくりと、膿みの出口(フィステル、サイナストラクトなどといいます)ができています(青→)。

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この膿の出口は歯の根っこの病気(根尖性歯周炎)ができているときに見られる所見の一つです。

ということで、レントゲン検査をおこなってみると

 

奥から(左から)2番目の6番という歯の遠心根という根の周りに黒い陰(根の病気の典型的なレントゲン所見です)があります(赤→部分)

 

diag1diag2

 

ここまでの検査①視診②レントゲン検査だけで判断すると(6番の歯の直下に膿の出口、6番の遠心根に黒い陰)、

奥から2番目の6番が膿の出口の原因、根っこの病気があるのは6番だと思ってしまう可能性が高いです。

6番は根管治療がされてない、神経が生きているようにみえる歯だけど神経が死んでしまって中でくさっているんだな、と言う風に考えるのです。

根管治療を専門的に学ぶ前の私だったら、この2つの検査だけで6番が 原因の歯であると診断していたと思います

 

でも他にもおこなうべき検査があります。

歯をコンコンと叩いて反応をみる打診、歯肉に触れて反応を見る触診、そして神経の知覚反応をみる温度診歯周ポケット検査などです。

打診、触診ともに反応はマイナスでした。では温度診は?

ということで原因と思われる6番に冷たい刺激を与えると、反応があります。数回おなじように確認しても反応は(+)。

つまり6番の歯の神経は生きている可能性が高いという事です。

これは膿の出口の原因は6番じゃないぞ、ということになり、

 

このように、膿の出口に目印を挿入してレントゲン撮影をおこなうと、

 

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レントゲンではこのようにうつります。(6番のとなりの7番の根っこの先にたまった膿が6番の真ん中当たりに出口を作っていたのです)

 

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そして7番は神経の知覚検査でも反応は(−)でしたので、この6番のところにできた膿の出口は診査の結果、一番奥の7番が原因であることがわかりました。

もしも、視診とレントゲンだけで診断していた場合は、6番が原因と誤診し、必要のない治療をすることになり、

最悪のケースは6番の健康な神経を犠牲にしてしまう可能性もありえたということになるのです。

 

以上、症例を見ながら診査の重要性をご説明いたしました。

初診でおこなう診査診断は 本当に本当に重要なのです

 

 

●根管治療の初診でおこなう歯の検査とは?

2014.08.09 | 根管治療, 根管治療の診査 |

 こんにちは。李です。

毎日本当に暑いです。クリニックは日当りが良いせいでクーラーの効きが悪くブラインドを閉めて診療をしています

それでも効きが悪く暑くて患者様にはご迷惑をおかけしており、最近冷たい麦茶のサービスを始めましたのでそちらは喜んでいただけているようです

 

さて、今日は当院でおこなっている根管治療の初診でおこなう診査の内容についてご説明いたします。通常以下6項目の検査をおこないます。

 

①問診、②視診、③神経の検査、④根尖周囲組織の検査、⑤歯周ポケット検査、⑥レントゲン検査です。

 

これらの検査結果から、診断名(病名)がつきます。そしてその診断のもと、適切な治療がおこなわれるのです。

根管治療が必要な場合の歯の診断名は歯髄炎か根尖性歯周炎です。

歯の痛みが主訴でも診査結果からこの診断名がつかない場合には、治療はおこないません。

憶測で治療をすることはできないからです。

歯が痛いと思って来院されても検査結果で歯が正常な場合もよくあります。

関連痛非歯原性痛というものから歯が痛く感じる場合もあるのです。

こういったことがわからずに誤診で必要のない歯の治療をおこなわないように細心の注意を払っています。

以下それぞれについて詳しくご説明いたします。

 

①問診

一番大切なのが問診です。患者様の主訴、それまでの治療経過、痛みの経緯はとても重要な情報になります。

主訴が歯の痛みの場合、その痛みと以下におこなう検査結果に関連性があるかどうか、を見極めることは誤診を回避する重要ポイントになります。

  

②視診

患者様の主訴はおもに痛みであることが多いですが、痛みを訴える歯を実際目で確認します。

目で診査をした時に歯に虫歯がある、欠けている、歯肉が腫れている、詰め物がしてある、などなど歯の状態を見てきます。

 

 視診の一例。抜髄治療を他院で受けていますが良くならないというお悩みで来院された患者様。

赤→のところに虫歯が残っていそうだな、というのが確認できます。

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視診の一例。歯肉にぷっくりとおできのようなものが出来ています。

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③神経の検査

この検査は歯の表面に冷たい刺激や熱い刺激、電気刺激をあてて神経の反応をみる検査です。

正常な神経も反応しますので、主訴の歯の反応と正常の歯の反応とを比べていきます。

神経の炎症が強い場合は正常よりも強く反応したり、痛みが長引いたりしますし、逆に神経が死んでしまっていたりする場合は反応しません。

この検査では、正常神経でも反応しない場合もあります。この検査だけで神経の状態を100%正確に判断する事はできませんが目安にはなるのでとても大切な診査です。

レントゲンやその他の診査と合わせて総合的に診断して行くのです。

リーズデンタルクリニックでは、虫歯の治療の時もかならず神経の検査をおこない神経の反応を確認してから治療をおこなっていきます。

*この検査はすでに神経がない再治療の歯ではおこないません。

 

④根尖周囲組織の検査

根尖周囲組織とは、歯の根の周りの組織のことです。歯根膜とよばれる歯の根の周りをとりまく組織、歯肉や骨のことです。

この診査も健康な歯の反応と比較して度合いを見ていきます。

触診は歯の根のあたりの歯肉をおした反応をみます、打診は歯をトントン叩き、正常な歯との反応の違いをみます。

必要に応じて固いもの咬んでもらい痛いかどうかの検査もおこないます。

すべて正常な歯の反応と比較し、明らかに反応が強い場合は根のまわりに炎症があると判断します。

 

⑤歯周ポケット検査

歯の周りの歯周ポケットの深さをはかることも重要な診査です。

歯周病を併発しているかどうか、ひびの疑いがあるかどうかをみていきます。

初診の時点で歯にでっぱったクラウンが入っていたりする場合は正確に測れない事も多く、治療でクラウンをはずした時に再度麻酔をして入念に確認します。

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歯周ポケットが深いからといって必ずひびがあるとはかぎりませんし、ポケットが浅くても根管治療の際に根管の中のひび染めをしてひびが見つかる事もあります。

以前のブログでも書いておりますが、ひびの確定診断は目で確認することです。見えないところにひびがある場合は抜いてはじめてひびがあることがわかった、などというケースもあります。ひびの診査での検出は難しい場合があります。

 

⑥レントゲン検査

レントゲン検査では多くの情報が得られます。虫歯があるかどうか、虫歯の大きさ(神経までの距離)、根の病気(レントゲンでうつる黒い陰)があるあか、その大きさ、根っこの形(これを見るためには角度を変えた偏心投影での撮影が必要です)再治療の歯なら過去の治療の状態、穿孔している部分があるかないか、歯の厚みや量、などを見ていきます。

 *患者様で他の医院で撮影したレントゲンを持って来てくださる方がいらっしゃいますが、写真の位置づけが浅く、根の先端がしっかり写ってないことがほとんどです。そういったレントゲンからは正確な情報が得られませんのでこちらで撮影をしなおします。

 

正面から撮っているレントゲン(左)と偏心投影のレントゲン(右)を撮影する事で

根の形を立体的にイメージできます。

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下のレントゲンからは根の病気の有無と大きさ(青→)、過去の治療で根管は太く拡大され、根管充填剤がとびでてしまっている(赤→)、歯の頭の部分()は歯の質が非常に少なく薄い、ということがわかります。

 

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以上①〜⑥の診査をおこない(再治療歯は①②④〜⑥)、結果から診断をします。

この時点で診断ができない状態の歯もあります。そういった場合は『wait and see』です。

病気の状態が移行期の場合は検査の反応がわかりにくい場合もあります。その場合はもう少し待って再度検査をおこないます。時間がたつと、検査で明らかな病的所見が見られる事もよくあります。

 

以上が当院でおこなっている根管治療の初診の内容です。

診査結果と診断名のご説明の用紙もお渡ししております。

 

 

 

 

 

●根管治療で一番大切な診査のお話〜歯の痛み・関連痛〜

2012.12.27 | 根管治療の診査 |

こんにちは。李です。
ものすごく寒い毎日ですね
クリスマス連休は楽しく過ごされましたでしょうか?
私は実家で家族と過ごし、手作りのローストビーフと、サダハルアオキのクリスマスケーキを堪能しました。

さて、今回でLEE’S DENTAL BLOGは100回目です

こんなに続けることができたことが嬉しいです。
このまま200回、300回と続けることができるように頑張ります

記念すべき100回目のブログの内容、何にしようかずっと考えていましたが
『診査の重要性〜歯の痛み・関連痛〜』についてお話していこうと思います。

先日、半年ほど前に前歯の再根管治療を終えた患者様のM様からご連絡をいただきました。
『李先生、今度は右下奥歯が痛いんです。ここは以前虫歯が深くて治療しました。そのときの先生には次に痛くなったら神経を取らないとだめだ、と言われていたところなんです。神経を取るなら保険の病院でなく、リーズデンタルクリニックでお願いしたいのです。それとは別で右上の奥歯も同じように痛いんです。両方痛い日もあれば、どちらか一方が痛む日もあります。いずれにしても、もうすごく痛い思いをするのは嫌なので、年内に両方神経の治療を終わらせたいのです』
M様は前歯の再根管治療の時に、根尖性歯周炎が急性化し、辛いお痛みを経験されています。
歯の痛みには何度となく悩まされていらっしゃいました。

このお話を聞いて、まず最初に行うことは歯の診査ですが、
一番大切なことは、患者様が痛みを訴えている歯と、痛みの原因となっている歯が一致しているかどうか、を確認することです。
何もしていなくても、ズキズキと痛い、という症状は歯の神経の炎症が深部に達しているサインです。
そういった時には、原因の歯の隣の歯や、反対側の歯(原因の歯が右下だったら、右上など)が痛みを感じることが良くあります。また、どこの歯が痛いかピンポイントで突き止めることができない場合もあるのです。
これを関連痛といいます。レントゲンや歯の診査であきらかに虫歯や、痛みの原因になりそうなサインがない場合にはとくに迷います。
その場合は顎顔面痛(顎の関節や、筋肉、神経が原因で歯に痛みが生じる)の可能性もあり、そちらとの鑑別診断も考えていかなければいけません。

歯の痛みの診査では、こういったことを常に頭に入れておくことが、とても大切なのです。
患者様の訴える痛みの症状だけをたよりに治療をしてしまうと、誤診なってしまい治療の必要のない歯に治療をおこない、さらに原因が解決されてないと痛みがおさまらない、という負のスパイラルにはまってしまいます。

M様のケースでおこなった具体的な歯の診査は、
感じている痛み、症状を再現させて原因歯を探して行きます。つまり、神経の知覚を診査していきます。
歯の表面に冷たい刺激、熱い刺激を作用させます。
このとき、正常な歯からはじめていき、正常な反応とくらべていきます。
正常な反応とは、冷たい刺激が歯に当たった時に、一瞬感じ、その後すぐおさまるのです。
M様の右下奥歯は冷たい刺激に対しては極度に痛みが増大し、痛みがズキズキと持続しています。
これは歯の神経の炎症が重傷であることのサインです。
M様のケースではご自身で痛みを訴えていらした右下の歯と診査の結果は一致しました。
けれども、右上の歯は一致しませんでした。痛いと感じている歯は冷たい刺激の診査では正常の反応でした。

その他の診査には、視診、レントゲンの検査、歯周ポケットの検査、打診、触診、電気刺激を与える診査などがあります。
歯の状態によって、全ておこなうとは限りませんが、これらの診査結果から総合的に判断して原因歯の特定と診断をおこなうのです。
診断ができてはじめて治療法を選択できるので、関連痛が強く診断がくだせない場合は、何もしないという選択肢が一番賢明です。

このようにして、M様の歯の診査をおこない、右下の奥歯は非可逆性の歯髄炎と診断しました。
そしてそれに対する治療は抜髄(神経を取る)です。
そして同じような痛みを訴え、神経を抜いて欲しいとおっしゃっていた右上の奥歯の神経の反応は正常な反応でした。
右上奥歯の診断名は正常歯髄です。治療は何も行わないことです。
関連痛は原因となる歯を治療すればおさまりますので、右下の奥歯の神経の治療を行ってからは右上の歯の痛みはぴたりととまりました。

今回は実際の患者さまのお悩みのエピソードを交えて、歯の痛みの診査についてお話しました。
少し難しかったでしょうか?
多くの歯科医院では患者さまの痛みの訴えと、レントゲン検査で治療着手してしまうことが多いように思います。それだけでも問題がないことは多いのですが、中にはこのような事例もあります。
もしも、原因歯が違う歯だったら?ということを常に考えて、もう1、2つの検査を付け加えることでより正確な診断をくだすことができるのです。
患者様の訴えていらっしゃる悩みを解決できるかどうか、を考える時に原因の特定は一番重要です。

100回目のブログ(そして今年最後)に選んだのは歯科医にとって原点に還る基本中の基本の診査のお話にしました。
年明け101回目のブログの内容は何にしようかな?と考えながら2012年最後のブログを終わりにします。

2013年もLEE’S DENTAL CLINIC & BLOGをよろしくお願いいたします
皆様、良いお年をお迎えください!

極寒の中、窓掃除おこないました

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