根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。
ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。

根管治療専門医

2016.08.01 | 根管治療, Penn Endo, 根管治療の成功率 |

『根管治療専門医』『根管治療専門歯科』、『マイクロスコープを使った精密根管治療』などなど、今インターネットで検索をするとものすごい数の歯科医院のホームページがヒットしてきます。

私が2010年に根管治療を専門としたクリニックを立ち上げたいと思い開業した頃とだいぶ状況が違います。当時は根管治療専門医、マイクロスコープ、ラバーダム、など患者様にもそれほど知れ渡っていませんでしたし、根管治療専門で自由診療でおこなうクリニックは珍しい部類でした。

今は都心ですとある程度はラバーダムを使用し、マイクロスコープを使用した根管治療をおこなう歯科医院が増えてきています。

これは患者様にとって、とても良いことです。一昔前までは保険診療がメインでの根管治療で、ラバーダムを使用することはほとんどありませんでしたから。

患者様にも、歯科医の間でも根管治療の際にはラバーダムを使用した方がいいという認識が浸透してきているので、医療の質が向上してきている、ということです。

そのような状況の現在の日本で、根管治療専門医とはどういうことなのか? 根管治療専門医の治療と一般の歯科医が根管治療の時にマイクロスコープとラバーダムを使用して根管治療をおこなうこと、そのレベルや内容は同じことなのか?

もし同じだったら根管治療専門医でわざわざ治療しなくてもいいのではないか?と思われる方も多いと思います。

今日は根管治療専門医とは何が違うのかをテーマに考えてみたいと思います。

 

根管治療専門医の日本での位置付けは?

 

『根管治療専門医』といっても日本ではアメリカやカナダのように根管治療専門医の制度というのはありません。アメリカでは専門医制度というものがあり根管治療専門医になるためには

専門医になるための大学院に入学し2〜3年、研鑽をつまなければなりません。

根管治療専門医になるための米国の大学院を卒業した根管治療専門医は現在日本では数名しかいないのです。

この大学院に入学するのも狭き門です。各大学の受け入れ人数は少ないと4名くらいから、多くて20数名となっており、もちろん入学のためのテストがあります。

誰でも入れるものではありません。

専門医教育に興味のある方こちらをご覧ください。

http://www.aae.org/education/advanced-specialty-programs-in-endodontics/advanced-specialty-education-programs-in-endodontics.aspx

 

根管治療専門医のための大学院ではどういった研鑽をつむかというと、講義や、膨大な数な論文を読みこなし、歯内療法(根管治療の学問的な名前です)領域のいろいろな考え方を徹底的に学びます。

病気の原因、病気がなおるメカニズム、細菌のことなど、治療をする上で最も大切な原理原則とも言える概念を学び、さらに治療の成功率、失敗の原因なども学びます。治療のテクニック的な側面や、どういった器具をどういう時に使うのか、殺菌や根管充填の薬剤に対する考え方も学びます。論文や講義以外では患者さんの治療をおこない、学生指導も行うようです。プログラムによっては論文を発表し、修士号(Masterof Science)を取得する場合もあります。大学院を卒業してはじめて根管治療専門医となるのです。

こういった勉強から、根管治療専門医は使う薬剤ひとつとっても、どんな種類の薬剤をどのくらいの濃度で使うのか、どう言う時にどういう器具を使うのか等、治療の各ステップで全て明確な理由がありますし、いつも同じものを使用するのでなく症例によって、使い分けたりもします。

なぜ、私がこういった内容を知っているかと言うと、それは私が所属する根管治療専門医のためのスタディーグループ Penn Endo Study Club in Japan (PESCJ)のおかげです。

このスタディークラブには米国の根管治療の大学院を卒業した根管治療専門医が4名いらっしゃいます。

スタディーグループ主催(私たちメンバーの師匠です)の石井宏先生は米国の歯内療法科を卒業した日本での第一号の先生です

石井宏先生が主宰するこのスタディーグループでは、日本でも米国の根管治療専門医と同じレベルの考え方と知識、治療スキルがある根管治療を専門とできる歯科医を育てる目的で、石井先生が米国ペンシルバニア大学大学院で学んだ内容を1年間に凝縮したかなりハードなプログラムを実践していらっしゃいます。米国ペンシルバニア大学歯内療法科とのコラボレーションプログラムで、卒業月には実際に米国ペンシルバニア大学歯内療法科に行き、口頭試問、実習などをおこない認定試験を受けるのです。少人数制で1年に8名しか入ることができず、応募人数が毎年多いため、面接で治療に対する志や学問に対する真摯な姿勢を問われ合格した8名のみが学ぶことができます。プログラムがハードなため、せっかく入学したものの、途中で脱落してしまう先生もいるくらいです。

このプログラムのおかげで私たちPESCJメンバーは米国の根管治療の専門医教育の内容を日本にいながら学べて、治療で実践できています。

PESCJメンバーはコチラ。

http://www.pescj.org/member.html

PESCJメンバーの師である石井宏先生は、日本の根管治療のレベルの低さを変えたいという思いから、歯科医に向けての教育を多く実践していらっしゃいます。

私が卒業した専門医養成向けのプログラム以外に、一般の歯科医の先生に向けたベーシックなセミナーを全国各地でおこなっていらっしゃいます。また、石井宏先生以外のPESCJのインストラクターの先生方、メンバーの先生方も講演会やセミナーで、根管治療のベーシックな概念を一般の先生方に向け発信していらっしゃいます。

冒頭で述べた、一般の歯科医院でもラバーダムをおこなう医院が多くなったというのは、こういったセミナーを受けた先生方の根管治療に対する意識が向上したのではないかと思います。

日本の歯科医医療のレベルアップへの貢献度はとても高いと思います。

スタディーグループの話で少し脱線してしまいましたが、根管治療専門医は、上述のように深く学問を勉強していることから、治療の背景にある専門知識が豊富であること、治療に対して確固たる哲学、信念があることが特徴であると言えると思います。

 

根管治療専門医がおこなう治療と一般の歯科医がラバーダムやマイクロスコープを使った治療はどう違うか?

 

結果に違いがあるかというと、ある場合もあれば無い場合もある、と言えます。

ラバーダムを使った場合と使わない場合も同じです。ラバーダムを使用することで根管治療の時に細菌が根の中に侵入することをかなり防ぐことができるので、使わないも根管治療よりも使う根管治療の方がはるかに良いのは確実ですが、

では、ラバーダムなしで過去に根管治療を受けたか人はみんな失敗しているかというと、そうではありません。

そもそも人の体には免疫力というものもありますし、ラバーダム使用の有無、マイクロスコープの使用の有無だけが成功にかかわる要因ではありません。

一般の歯科医院でラバーダムなしでの根管治療でうまくいっているケースもあれば、一般歯科医院でラバーダムとマイクロスコープを使用してうまくいくケース、根管治療専門医のもとで治療してうまくいくケース、結果だけで言えば差がない場合もあります。

けれども、もちろんそうでない場合もあります。ですので、どちらがベターなのか、といえば、もちろん根管に中に細菌が入らないようにするためのラバーダムを使った方が良いですし、汚染や根管を見落とさないようマイクロスコープを使った方がより良いのはいうまでもありません。

では、根管治療専門医の治療は何がちがうのでしょう?

それは患者様がどこまでの治療の質を求めているのか、によると思います。

歯内療法領域について深く学んでいる根管治療専門医は、病気の原因である細菌排除に対する認識が強いです。細菌が根の中に流入しないためにはあらゆることをおこないます。

ラバーダムを使用することは細菌排除のためにおこなうべきことのうちのかなり大切なものの一つです。それ以外にも細菌排除のために行ったほうが良いと言われるものは全ておこなっています。(一般の歯科医院との大きな違いは無菌的な治療環境の徹底だと思います。治療器具ひとつひとつの徹底した滅菌管理です。これは手間も時間もコストもかかるため、なかなか保険診療をおこなっている歯科医院での実践は難しいと思います

例えば、リーズデンタルクリニックでは一般の歯科医院でラバーダム防湿、マイクロスコープを使用した根管治療を受けたけど治らないという患者さまも多くいらっしゃいますが、治らない理由が他にあることが多いです。

実際に歯をみてみると、詰め物の下に虫歯が残っていた(そもそも古い詰め物を外さずに根管治療をおこなっていた:写真①)、コアの治療がうまくいかず隙間があり唾液が流入していた(写真②③)、見落とした根管があった(写真④⑤)、ひびが見落とされいた、そもそも診断が間違っていた、などなど問題が見つかります。また使用している器具薬剤に問題がありそうと思われるケースにも遭遇します。

 

写真①:コアが歯に一部残ったまま根管治療がされていたケース

根管治療専門医の治療の特徴

 

写真②③:一見問題なさそうなレジンコア、剥がしてみると隙間があり唾液の流入ルートとなっていた

根管治療専門医と一般の根管治療の違い根管治療専門医では治療のミスが少ない

 

写真④⑤:見落とされていた4番目の根管

根管治療専門医は根管を見落とさない根管治療専門医が見つけた新しい根管

 

こういったことが無い場合には一般の歯科医院での治療でもうまくいく場合が多いとおもいます。けれども、それは事前にわからないことなので運にまかせるようになってしまいます。

 

どのように根管治療の歯科医院を選べばいいのか?

歯のために最善の方法で治療したい場合は根管治療専門医を受診されることをお勧めします。

費用をなるべくかけたくない場合には、まずは比較的安価な一般の歯科医院での治療を受けてみて、うまくいかなかったら根管治療専門医の治療を受ける、というのもひとつの方法です。

けれども、一度失敗した根管治療は最初の治療よりも成功率が低くなりますし、再治療を繰り返すたびに少しづつ歯が削られて失われていくというマイナス面も考えられます。

 

納得できる詳しい説明や疑問に対して答えられるのは根管治療専門医

当院にいらっしゃる患者様は、なぜ治らないのか、何が原因で治らないのか、疑問と不安でいっぱいになっていらっしゃることが多いです。

その疑問に明確に答えられることだけでも不安の多くは取り除かれます。

前医の説明で、根が石灰化しているから治らない、開かないから治らない、飛び出しているから治らない、などいろいろ説明を受けていていることが多く、その多くは誤解が多いです。

また、MTAを使ったから治る、ファイバーコアの方が歯が強くなる、そういった誤解もお話を聞いているとよく出会います。

もちろん、そういった方法が適している症例もありますが、どんな歯にもそれがいいというわけではありません。

一般の歯科医の先生方も、根管治療に対して誤った認識を持っている場合もあります。

原因がわからない時にもなぜわからないのか、原因を探るためにどういったことが必要なのか、を提案できるのも根管治療専門医ならではです。

何が原因でなおらないのか、問題は何なのか、その問題は根管治療専門医の治療で改善できるのか?そういったことをしっかりと説明できる知識のベースがあるのが根管治療専門医だと思います。

なぜなら、歯内療法領域について深く学んでいるからです。そして他の医院で治らなかったような難症例を多く治療しています。

そして治療の引き出しもたくさん持っているのも根管治療専門医です。

専門医の根管治療で治らなかった場合、マイクロスコープを使った歯根端切除術、再植術での歯の保存は、トレーニングを積んだ根管治療専門医でないとおこなうことが難しいですし、抜歯という選択肢も明確な根拠のもとでご提案することが可能です。

 

より良い結果をだすために、細菌排除のためにできる限りのことをおこなうのが根管治療専門医です

 

 

 

 

●根管治療、成功率に影響をあたえる因子 

2013.11.25 | 根管治療の成功率 |

こんにちは。李です。
昨日の雨風、すごかったですね
一瞬で傘が折れてしまい、びっくりしました。
今日はお天気回復して、よかったです

さて、先週末はPESCJに参加してきました。受講生のプレゼンテーションやディスカッションを聞いていると、とてもモチベーションがアップします
PESCJのメンバーにもジョギングを習慣的におこなっている先生が結構いらっしゃいます。
健康の話題も熱いトピックのうちの一つです

さて、今日は歯の話、根管治療の話に戻りますね。
開院してから3年半以上、根管治療にお悩みの患者様の歯を毎日いろいろ診させていただいてます。
根管治療が必要な歯、といっても個々の歯の状況はそれぞれです。

状況によって、治療が成功しやすい、成功しいくい、ということがあります。
初診の診査では、 この個々の歯の状況をできるだけ正確に把握するように心がけています。
初診での診査でわかることは、 どの歯が痛みの原因なのか、 根尖性歯周炎(根の病気の)有無、大きさ、虫歯の有無、神経の炎症の有無、レベル、以前の治療の質、治療の難易度、歯の厚み(ある程度)、歯肉に異常があるかどうか、歯周ポケットの深さ(原因はこの段階ではわかりません)。成功しやすい歯か、しにくい歯かの予測をしていきます。

このブログでも何度かお話してますが、初診での診査よりも、より詳しく歯の状態を診査するためには現在入っているクラウンやインレー、コア、ポストをはずして評価する必要があります。
はずしてわかる情報が何かというと、
虫歯をじかに目で確認できる。虫歯をすべて取り去り、残った健康な歯の質がどれくらいか(薄いか厚いか)、ひびのチェック、詳しく歯周ポケットの検査が可能。
というように、歯の質の診査が可能です。このことで、歯の長持ちの予測もたてられます。あまりに薄い歯、治療不可能なひびがある歯、歯肉縁よりも下の方まで虫歯が進行している歯は、写真をとってご説明します。そして、根管治療しても長持ちしない可能性、または治療不可能などをご説明し、治療をせずに放置する、または抜歯という選択肢について患者様とご相談いたします。

このように、個々の歯がかかえる多くの問題の中に、根管治療の成功率(根尖性歯周炎の治癒)に関わる因子はいろいろあります。この根管治療の成功率にあたえる影響は多くの論文で研究されており、その中でもコンセンサスが得られているもの一つが、術前の根尖病変の有無(もともと根っこに病気があるかどうか)と、病気の大きさです。

治療する歯にもともと根の病気があるかないか、って実際レントゲンでどのような感じなのか見てみましょう

赤丸の部分をご覧ください、この状態が根の病気があるレントゲン像です。
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次のレントゲンは大きさは小さいですが、若干陰があります。
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下2枚のレントゲン写真は術前に根の病気がないものです。
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レントゲン上で陰ががないから、病気がないから、といって中に感染がない訳ではありません。
実際治療をすると汚染していることもあります。また、その歯の治療をおこなった時期にもよります。最近の治療であれば今は陰がなくても、根の中に感染があれば後にレントゲン上で陰ができてくる可能性は高いです。
ただ、治療をしていて病気の陰が大きい方が汚染の度合いが高いなという、実感はあります。

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根管治療の予後に影響を与える因子について研究した論文をひとつ紹介します。
Hoskinson SE, Ng YL, Hoskinson AE, Moles DR,Gulabivala K: A retrospective comparison of outcome of root canal treatment using two different protocols. ooo, 93(6):705-715, 2002.

この論文はretreatment とinitial treatment両方が対象になってますが、根管治療専門医が治療をおこなった200本の歯の4〜5年の予後調査を行っております。
性別や年齢、歯の種類、術前の神経の状態、再治療かどうか、術前の根の病気の有無、サイズ、そして治療方法によって予後に変化があるかどうか、などをいろいろな因子の影響を調査しております。ご興味のある方は読んでみてくださいね。

ちなみに、この論文での術前に根の病気がある歯の成功率は74%、無い歯は88%となっております。

以上、本日は根管治療のお話でした。
12月も歯のお話を続けて行く予定です。よろしくお願いします

●再根管治療はなぜ成功率が低いのか?

2013.10.31 | 根管治療の成功率 |

こんにちは。李です。
もう10月も終わりですね。早いです。今年もあと2ヶ月…..
毎年年末になると、今年も早かった、あっという間だった、などど言っておりますが、年々早く感じますね。
いいんだか、悪いんだかっていう気分です
12月31日に、2013年を振り返り今年も頑張ったな、と思いながら美味しくお酒が飲めるように残り2ヶ月頑張っていきたいと思います

さて、前回のブログでは根の病気(根尖性歯周炎)が治る事と歯の長生きは別の問題だということをお話しました。

今日はそれと関連して、初めての根管治療の歯と、再治療の歯の違いについてお話して行きますね。

欧米では根管治療はinitial treatment (はじめての治療)とre treatment(再治療、やりなおしの治療)のふたつにわかれます。
(日本の保険制度では、抜髄治療と、感染根管治療という分け方で、これは世界のスタンダードからはずれています。)
initial treatment (はじめての治療)とre treatment(再治療、やりなおしの治療)何がちがうかというと読んで字のごとく、なのですが、これがどのように治療の成功率や結果に影響するのでしょうか?

何度も言いますが、根尖性歯周炎の原因は細菌です。
根管治療とは、根の中の汚染を取り除き、消毒殺菌で、細菌を極力減らす(完全にゼロにはなりませんが)こと、そしてあらたに細菌が入り込む通り道をシャットアウトすることです。

再治療の歯というのは、過去に根管治療がおこなわれている歯です。
そして根管はすでに感染していることが多いのです。
ラバーダムやマイクロスコープ、適切で効果的な殺菌がおこなわれずに、治療された歯は、そうでない歯よりも、汚染や神経の残骸、虫歯などが残っていて、細菌の根管内への蔓延がより多くすすんでいて難治化してることも多いのです。

根管は単純な直線的な空洞でなく湾曲したり、横道があったり、マイクロスコープでもみえなかったり殺菌が行き届かない部分が必ずあります(とくに奥歯の根管の形は複雑です)。そしてそういう部分にも細菌は存在します。

根管がどれだけ複雑なのか、FRANK J. VERTUCCI先生の有名な論文から写真を引用させていただきます。

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(FRANK J. VERTUCCI Endodontic Topics 2005, 10, 3–29より引用)

どうですか?私ははじめてこの写真を見た時はビックリしました

一度感染してしまった根管内から細菌を完全に100%取り除く事は不可能なのは、このためなのです。
そして再治療歯では、汚染だけの問題でなく、以前の治療で根管の形が本来の形と大きくずれてしまっていたり、違う方向に道がつくられていたり、穴(パーフォレーション)があったり、根管充填剤が根の尖端からとびだしてしまっていたりと、成功率に影響する様々な問題を抱えている事が多いです。

上記のことが、理由で再治療歯では、initial treatment(はじめての治療)よりも成功率が低くくなるのです(論文によってかなり差はありますが、70%程度です。より大きな根の病気があったり、根管の形が壊れている程、成功率は下がります。)

また、くりかえし治療がおこなわれていればいるほど歯が薄くなっていることが多いです。
汚染の部分とはつまり根の中の虫歯(細菌に感染した象牙質)をとりのぞくことでもありますので、当然その分歯は薄くなりますよね

歯が薄いと、細菌が原因で発症している根の病気が治ったとしても、歯が薄くて、日常生活での咬む力などで割れやすいなど、長持ちに不安があるのは、前回のブログでお話した通りです。

もともと細菌が少なく歯の質も多い抜髄治療に比べて、こんなに治療の成功に関わる因子が多く難しい再治療、
日本の保険制度では抜髄治療の方が保険点数が高いのです。おかしいと思いませんか?

●根管治療が成功すれば、歯は長持ちするのか?

2013.10.22 | 根管治療の成功率 |

こんにちは。李です。
すっかり涼しくなりましたね。やっと秋らしくなってきました。
昨日久しぶりに外をジョギングしました(夏は暑くてジムで走っていたので
この時期の外のジョギングは本当に気持ち良いですね。

さて、今日は嬉しいニュースから。
8月いっぱいで退職した衛生士の後藤が、新たなステップとしてを踏み出しめだくも目標を達成しましたので発表します
彼女の次の目標は衛生士の学校の先生になるということだったのです
おめでとうそして良い衛生士さんを育てる側の教育者側になり、良い人材を育成してくださいね。
近々お祝い会やります

さて、今日の本題に入ります。
私がよく患者様に初回のカウンセリングでお話する内容について今日はお話していきますね。
根管治療の成功(根の病気が治る事)と、歯が長持ちすること、はまた別の問題として考えないといけません。

根管治療とは根尖性歯周炎(根の病気)の予防と治療をおこなう治療です。
根尖性歯周炎の原因は細菌です。ですので根管治療とは、根の中の汚染を取り除き、消毒殺菌で、細菌を極力減らす(完全にゼロにはなりませんが)こと、そしてあらたに細菌が入り込む通り道をシャットアウトすることです。
抜髄治療では、再治療よりも細菌が圧倒的に少ないと思われます。なので、いかに治療中に細菌を根管内にいれないか、というのが治療の成功のキーポイントになります。

では、歯が長持ちすること、とは?

それは健康な歯の量、厚みによるところが非常に多きいのです。

根管治療の初診でいらした患者様にカウンセリングでよくきかれる質問があります。

患者様:『先生、この歯は治りますか?抜歯しか方法はないのでしょうか?』

私:『根管治療で細菌を減らす事は確実にできます。100%の成功率ではないですが、
細菌を減らすことで、細菌が原因の根の病気が治る確率は、専門医が治療を行った場合、文献のデータから70~80%です。治らなかった場合には次のステップとして外科治療という方法があります。』

そしてさらに

『現時点で治療ができない、抜歯しかないというのは致命的な歯のひび、割れがある場合のみです。そうでなければ、なんとかして治療することは可能ですが、根の病気が治っても歯が長生きするかどうかは別の問題です

ここで、歯のレントゲンや歯の写真(クラウンやポストをはずして、歯だけの状態になった写真)をお見せして、このことに対しての説明をおこなっていきます。

細菌が減れば病気はなおることが多いです。でも、歯が薄いと、咬む力で、のちのち歯が割れるリスクが高いのです。これは私にはどうすることもできないし、いつ起こるかも予測ができません。根の病気が治っても、クラウンをかぶせて1ヶ月後に割れるかもしれない、半年後かもしれない、または3年、5年ともつかもしれません。
ただ、それは誰にもわかりません。今私に言える事は、根の治療はできるけど、歯が薄いということだけです。抜歯をしてインプラントをする方が長持ちすることも良くあるのです。長い目で見た時にどちらが良いかと費用をお考えになって、治療をご希望されるかどうか、お考えください』

ここで、どちらが良いかは、は患者様の歯に対する価値観が多いにかかわってきます。
たとえ短い期間でもいいから自分の歯をのこし、インプラントを先延ばししたいという場合、根管治療を選択されます。これは歯の延命治療のようなイメージです。

また、弱い歯にそれだけの費用をかけるのは、みあっていないな、と考える場合は抜歯インプラントまたは治療しないという選択肢です。
これもまちがった選択ではありません。

患者様のカウンセリングでは誘導にならないように気をつけています。
診査の結果を客観的に伝え、成功率、歯の厚み、などなどから考えられうる将来的なリスク、治療のメリット、デメリットをお伝えして、治療の選択肢をお話しします。根管治療を専門としているからといって、何がなんでも根管治療をすすめるわけではないです。
何が一番重要かはひとそれぞれですので、必要な情報をお話し、
患者様それぞれにとって最善の選択をできるような情報と解決方法提供をこころがけております。

初診の検査ではレントゲン、視診、触診、打診、歯髄診、歯周ポケット測定をおこないます。それだけでだいたいの状態はわかりますが、さらに残った健康な歯の部分がどれくらいあるか、はクラウンやポストがはいった状態ではわかりません。

例を見てみましょう。
クラウンをはずしたところですが、まだメタルコアが入ってて歯の全体像

●根管治療の成功率

2012.02.01 | 根管治療の成功率 |

こんにちわ。李です。
毎日厳しい寒さが続きますね
リーズデンタルクリニックは、足下がとても冷えます。みなさまに膝掛けをお使いいただいてますが、それでも冷えるようでしたら遠慮なくおっしゃってください。
私は靴の中に貼るホッカイロをしのばせて毎日診療しています

さて、今日は根管治療の成功率についてです。
(しばらくは根管治療について語り続ける予定です。もうすぐ専門医試験があるので自分の復習もかねて

根管治療は治療する歯の状態によって大きく2つに分けられます。
イニシャルトリートメント(initial treatment)とリトリートメント(retreatment)です。

イニシャルトリートメントは、はじめての根管治療です。
リトリートメントはすでに根管治療された歯の再治療です。

この二つ、成功率が違います。
さてどちらが成功率が高いでしょうか?

答えはイニシャルトリートメントです。

Ng YLらは、2007年の論文、Outcome of primary root canal treatment: systematic review of the literatureにおいて、いろいろな論文をまとめた結果、イニシャルトリートメントの成功率を60~100%以上と報告しています(この論文は63の研究をまとめたものなので、ばらつきがかなりあります。無菌的な環境でおこなわれたイニシャルトリートメントの成功率は90%以上と考えて良いでしょう。)。

retreatment再治療の場合は

同じく Ng YLらによって、2008年の論文、 Outcome of secondary root canal treatment: a systematic review of the literatureにおいて、77%の成功率としています。
Fabio(2004)らによると70%の成功率です。

なぜ、リトリーメントの方が成功率が低いのでしょうか?
それは不適切な根管治療によって、根管の形が本来の形から逸脱してしまっていて、治療が困難になっていることがあげられます。(リトリートメントで、根管の形態が変化してしまったものは、成功率がさらに下がり50%以下になるとう報告もあります。/Fabio(2004)らによる)
そのために、器具が到達不可能な部分が多くなったり、感染が長引いている分、すみついている細菌の種類やバランスも変わってしまうことも理由としてあげられます。
また、根管の先端から外にでた細菌が根管からはアプローチ出来ない根の表面に住処をつくって、そこで病原性を発揮する場合があります(根尖孔外感染)。この場合は根管治療では治らないので、歯内療法外科処置が必要となります

また、リトリートメントの場合は根管治療が成功しても、度重なる治療で、全体的に歯が薄くなっている場合があります。
その場合はその後クラウンを被せてお口の中で機能させた時に破折のリスクがあります。

リトリートメントにならないためには、最初の根管治療イニシャルトリートメントを成功させる事です。
それはつまり、ちゃんとした環境で専門的な治療を受ける事です。

無菌的環境(全て完全滅菌またはディスポーザブル)
ラバーダム防湿
マイクロスコープ
根管の形態を熟知し、Bio Mechanical Instrumentation: 適切な濃度の薬液、と適切な大きさの拡大。隙間のない密な根管充填と治療中に唾液が入り込まないよう厚みをとった仮封材などなどがあげられます。

注:このブログで語っている事はすべて欧米の歯内療法の論文がベースになっています。
治療が行なわれる環境や専門医が存在しない日本の根管治療とは、だいぶ違いがあると思いますので誤解のないようにお願い致します。
日本ではイニシャルトリートメントの成功率はこんなに高くありません。

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