LEE'S ブログ

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根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。

ポスト、フェルル、根管治療歯の長持ちにはどちらが重要?

こんにちは。李です。

日本橋桜通りの桜は満開です

八重洲から八丁堀まで続くさくら通りの桜。ずっと奥まで続きます。特に昭和通りを超えてからは桜が密集していてまさに桜の天井です、ぜひクリックしてみてください

毎年楽しみなこの季節ですが、今年ははじめて花粉症の症状が出てしまいました

さて、前回、前々回と根管治療を行う時に精査するべき残存歯質の量、特にフェルルについてブログ記事を書いています。

フェルルとは?前回のブログお読みください

根管治療しても長持ちしない歯の見分け方②〜フェルルの有無〜

 

今日もその続きとして、最近出版された興味深い論文を引用し、解説します。

Naumann M et al.“Ferrule Comes First. Post Is Second!” Fake News and Alternative Facts? A Systematic Review. 2018 Feb;44(2):212-219

 

フェルルの有無、ポストの有無が根管治療した歯のサバイバル、修復物のサバイバルにどう影響するかを調べたものです。

術後5年以上のデータのある8つの論文のシステマチックレビューで検証していますので、エビデンスレベルの高い研究と言えます。

簡単に結果をまとめますと、8本中7本の研究で歯にフェルルがある場合はポストにプラスの効果がないという結果が出ています。

この中でフェルルの効果を比較検証した研究は3本ですが、2/3本でフェルルの存在が歯のサバイバルに好ましい効果があるとの結果となっています。

歯にフェルルがあればポストを入れても入れなくても変わらないということで、つまりそれは歯のサバイバルにはポストよりもフェルルの有無の方が、重要であるという結果と言えます。

歯がたっぷり残っていて、フェルルがあることが根管治療歯の長持ちにとても大切なことです

残存歯質、フェルルがあるかどうかを正確に把握するにはクラウンやコア、ポストを外し、虫歯があれば虫歯を取り除いた状態で評価が必要です。

根管治療を受ける際には、根の病気の診査ももちろんですが、フェルルも含めた残存歯質をしっかり把握することが大切です。しかしながら、フェルルがあるから絶対に長持ちするとは言えません。残存歯質の量は歯の余命の予測のための1つの目安となりますが、それ以外の要素もたくさんあること、お口の状況は個人差があることなどから、いろいろな要素を考慮して主治医とよく相談の上、治療を進める必要があります。

例えば、フェルルがしっかりあっても、太いポストのせいで根が薄くなっていたり、そもそも全くの健全歯でも、過度の歯ぎしり食いしばりなどでパックり割れてしまうこともあるのです。

以下、フェルルや歯冠の歯質ががあっても割れていたケースです。

フェルルがあっても、太いポストが入っていて破折をしていた歯

歯ぐきが腫れている、という根管が太く削られている左上5

フェルルはありますが、根が薄く、外すと根が破折していました

抜歯インプラント治療となりました

インプラント上部構造セット後

 

根管治療をしていない、無傷の歯が割れていたケース

根管治療もしていない、インレーすら入っていない健全な歯がたっぷり残った左下6 の歯冠が破折しています。(茶色いところは虫歯ではありません)

破折がどこまでいっているか確認するために削り取っていくと歯根まで真っ二つに割れています。

 

 

根管治療しても長持ちしない歯の見分け方②〜フェルルの有無〜

こんにちは、李です。

前回の続きのお話をしていきます。

根尖性歯周炎(根の周りの炎症の病気)の治療で根管治療や歯根端切除術を行い、病気が治り(サクセス)、その歯がどれだけ長持ちするか(サバイブ)、正確にはわかりませんが、歯の量を目安にある程度の傾向を予測することは可能です。

例えば、歯が薄く、量が少なく、そして奥歯で噛む力が強く歯ぎしりの習癖がある場合は、そうでない場合よりも長持ちしなさそう、などと予測します。

歯の長持ちの予測のための歯の質の診査

当院の診査では、根尖の診査診断と歯髄(歯の神経)の診査診断を行いますが、それ以外にも歯の質の診査というメニューもあります。このメニューは診査のためにある程度治療を進める必要があります。クラウンや詰め物、土台を外し、虫歯がある場合は虫歯を取り除き、残った健康な部分の歯がどれくらいあるか、を見ていきます。レントゲン検査で極度に歯や根が薄そうな場合は根尖性歯周炎や歯髄炎が治ったとしてもその歯が長もちしない可能性があるため、歯を保存する、しないの意思決定のためにこのような診査が必要な場合があります。​

歯の質の診査の一例

歯の質の診査のために、クラウンを外したところ、メタルコアが大部分で歯があまり見えません

メタルコアを外しているところ、歯がだいぶ少なそうなのがわかります

メタルコアを外し、染め出しをして虫歯を取り除くと、全周のうち歯肉縁上に一壁しか歯がありません。(=一部フェルルあり)

 

歯の予後に関わる様々な要素の中で一番重要、インパクトが大きいといわれているのが残存歯質量(健康な歯の量、厚み)と言われています。残存歯質量を見るときに、一つの目安となるのがフェルルの有無です。

歯の予後に大切なフェルルの有無

フェルルとは、歯頚部(歯と歯肉の境目あたりのこと)の部分の歯質で、歯にクラウンをかぶせた時にクラウンで囲まれる部分のことです。歯にかかるストレスを減らし、破折から歯を守る効果がある、と言われています。

フェルルの有無は 特に前歯や小臼歯で歯の予後(破折、脱離)に大きく関わると言われていています。

下の図は論文から引用したものです。青色でなぞった部分の歯がクラウンで囲まれるフェルルの部分です。

Jelena Juloski et al. Ferrule Effect: A Literature Review. Journal of Endodontics. 2012;38(1):11-19. より引用

 

イラストではなかなかピンとこないと思いますの症例で見て行きましょう。

メタルポストが入っている左上2、3、青い部分がフェルルになります。

 

全周360度あることが望ましいと言われていますが、全くないよりかは、部分的にでもある方が良いと言われています。

 

 

症例写真でフェルルのあるなしをご説明します。

歯の全周のうち3/4はフェルルがある状態

全周フェルルがない状態

フェルルがある状態(丈も厚みもしっかりあります)

全周フェルルがない状態

 

​噛んでいる時に歯にかかる力は、だいたい歯肉のラインの少し下のあたりの根の外側に最大の力がかかると言われています。

フェルルがあることで、この力が緩和されると言われています。

多くの教科書や、文献ではフェルルのない歯は歯根破折のリスクやクラウンやポストの脱離のリスクがフェルルのある歯よりも高くく予後不良と言われていて抜歯が推奨されることが多いです。

ファイバーポストごとクラウンが脱離した左上2、歯を見ると全周フェルルがありません

 

では、それでもなんとか保存したい場合はどうするのか?

フェルルを作る方法があります

それは歯冠長延長術(クラウンレングスニング:フェルルを確保するために歯肉や骨を外科的に切除する方法)、矯正的挺出(Orthodontic extrusion:フェルルを確保するために矯正で歯を引っ張り上げる方法)という方法です。

この方法は根の長さがある程度ある歯に限り有効と言われています。この二つの術式を行うことで、骨に埋まっている部分の歯根が短くなります。歯冠歯根比と言って、根の長さと、歯の頭の部分(歯冠)の比率が1:1を切ると予後がよくないと言われているためです。ですので全ての歯に適応できるわけではありません。

患者様が来院され、フェルルがなく薄い歯を残したいと言われた場合とても悩みます。

残したい気持ちはよくわかるのですが、長持ちしない可能性が高い。

歯の状態をご自身で理解していただくためには、実際に外した状態を写真で見ていただき、相談した上で治療の方向性を決めて行くのが一番だと思います。

参考文献

Jelena Juloski et al. Ferrule Effect: A Literature Review. Journal of Endodontics. 2012;38(1):11-19.

Naumann M et al.“Ferrule Comes First. Post Is Second!” Fake News and Alternative Facts? A Systematic Review. 2018 Feb;44(2):212-219

Robbins JW. Restoration of the endodontically treated tooth.Dent Clin North Am. 2002 Apr;46(2):367-84.

根管治療しても長持ちしない歯の見分け方①〜複雑な要因〜

こんにちは、李です。

今日は久しぶりに歯のお話になります。

初診でいらっしゃる患者様から『歯を残せないと言われた』『治療しても歯が長持ちしないと言われた』というお話をよくお聞きします。

そういったケースでは歯にヒビが入っていたり、その疑いがある場合が多いのですが、それ以外でも治療をしても後にひび割れが起こりやすそう、被せ物が外れやすそう、という歯はあります。

治療した歯がどれくらい長持ちするか、は全体的な歯の総量、厚み、丈、などが大きく関わると報告されています。

ヒビはないけれど、歯が薄く、丈もなくほぼ歯肉に埋もれている状態

根管治療した歯の病気(根尖性歯周炎:腫れや痛みなど根の周りの炎症の症状)が治ることと、その歯がどれだけ長持ちするかは全く別の問題なので切り離して考えなくてはいけません。

根の病気の治癒(病気が治るかどうか)はサクセスレート

歯の長もち、長生きは(抜歯になるかならないか)サバイバルレート

と文献では表現されます。

例えば、右上の小臼歯の歯肉の腫れがあり、診査結果から根尖性歯周炎と診断しました。それ以外に歯が非常に薄いことがわかりました。根尖性歯周炎の再治療の成功率は約70~80%なので、その確率で病気は治ります(サクセス)。腫れが引き、快適に噛めるようになります。けれども、その歯が薄いため、3年以内に破折してしまい抜歯となる、それはサバイブしなかったとなります。

例えば100本の根尖性歯周炎のある小臼歯の治療で 根尖性歯周炎の治癒のトータルの成功率は80%だったとしても、5年後のサバイバルレートは歯が多いグループと少ないグループでは変わってくる可能性があるということです。

歯が薄いけれども、病気も治り(サクセス)今のところサバイブしている左上1

こちらでは長いポストも外せることが多いですが、ここまで長い場合は、削る器具の長さの限界を超えているため難しいです。 歯も薄いことから、長持ちは難しいけれども、なんとかしばらく歯を使いたい、まだ抜歯はしたくない、ということで、歯根端切除術のみを行っています。 手術後1年、腫れなど不快症状もなく快適にお過ごしいただいています。

 

歯が薄いけれども、病気も治り(サクセス)今のところサバイブしている左上6

歯根端切除術後。根先端は砕けていて、折れた破片を取り除きました。 切断した断面を観察すると、やはりヒビがあります。取れる範囲で取り除きMTAセメントで修復。 歯根端切除後6ヶ月経過。 黒い影はなくなり、症状も改善。快適に使えているそうです。ヒビは残っているため長持ちできないことからクラウン治療は保険のものをお勧めしました。


歯がどれくらい薄いと、どれくらいのサバイバルレートか?を事前に予測できると、とても参考になると思います。

けれども、その検証はとても難しく、ほぼ不可能と言えます。

なぜなら、お口の環境による個人差も歯のサバイバルに関わります。

歯の厚みや量以外でサバイバルに関わる様々な要因

一番大きな要因は歯の量と言われていますが、その他の要因としては、かみ合わせた時に噛む力がどれくらいかかっているか、歯ぎしり食いしばりの習癖があるか、その歯がブリッジや入れ歯の支えの歯になっているかどうか、または歯周病で骨の支えが少ない、などが複雑に関係します。また、歯の位置も大きなポイントです。前歯なのか、小臼歯なのか、奥歯なのか、それぞれによって根の形(副根か単根か)も違いますし、噛む力のかかる方向が違います。ポストの種類、接着剤、被せ物(クラウンなのか、インレーなのか、重点なのか)なども影響があるという報告も多くあります。

このように色々な要因が影響しあって、実際にその歯が何年もつかなどは誰にもわからないのです。

ただ、ある程度の傾向がわかるだけでも、治療して保存するという選択をするのか、または抜歯を選択するのかを決める際の助けになると思います。

次回のブログ記事では、この目安についてもう少し掘り下げてお話をしていきます。

 

参考文献

Robbins JW. Restoration of the endodontically treated tooth.Dent Clin North Am. 2002 Apr;46(2):367-84.

Naumann M et al.“Ferrule Comes First. Post Is Second!” Fake News and Alternative Facts? A Systematic Review. 2018 Feb;44(2):212-219

 

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