根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。
ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。

レジンコア、ファイバーコアの除去

2016.09.04 | 根管治療, コアの治療の重要性, コア除去, 根管治療の前処置 |

こんにちは。李です。今日はレジンコア、ファイバーコアの除去のお話です。

前回のメタルコアの除去の続きとなります。

 

レジンコア、ファイバーコアの除去とメタルコアの除去はどちらが難しいか?

歯科医によって回答は様々だと思いますし、ポストの深さによっても異なりますが、私はレジンコア、とりわけ深くまで入っているファイバーコアの除去が難しいと思います。

その理由は二つ、材質の色の問題と接着システムの問題です。

 

メタルコアは金属の色をしているので歯との境界が一目瞭然です。

また、メタルコアを歯に装着する際に使っている接着剤は合着という概念の接着剤(歯と化学的に接着するタイプの接着剤ではありません)を使用するのが一般的で、このタイプの接着剤は、歯との境界がわかりやすく、超音波の振動で外れやすいのです。

 

一方、レジンコア、ファイバーコアの除去は素材が歯の色に似ているのも難しい要因の一つですが、接着剤が歯と化学的に接着するシステムを使うことが特徴になっています。

歯と化学的に接着するということ、これはものすごく簡単にご説明しますと、歯と完全にくっついているため歯と接着の部分との界面(境界)がわかりにくいということなのです。

ですから化学的接着を使った接着システムはゆるむことも、外れることもありません(欠けることはあります)。

ただし、この接着操作は細心の注意が必要で、きちんとした操作の手順を守らない場合は失敗することも多いです。

マイクロスコープの拡大視野で歯の表面を見ないと、歯の表面がよごれていたり、以前の接着剤の一部がこびりついて残っていたりすることを見逃しやすく、そういったものの上から接着操作をしてもうまく接着しません

 

症例をお見せしながらご説明します。

 

例えば下の写真は当院で根管充填後直接法でレジンコアを築造している写真です。

根管充填直後、根管充填に使う薬剤がベタベタと歯にくっついています。これを取らずにそのまま接着操作をおこなうと、その部分は歯と接着しないのです。

注:唾液や血液が歯の表面についているのは論外です

DSC02338

 

歯の表面から接着を阻害するものを取り去ったところ

DSC02339

 

接着システムを使いレジンコアを流しいれたところ。こうすることで、接着の素材は歯の全部の表面と化学的にくっつくという考え方なのです。

DSC02340

 

もしも、ファイバーコアがしょっちゅうはずれるようなことがあるならば、それは接着がうまくいっていないか、または化学的に接着する接着剤を使っていない、ということが考えられます。

レジンコアやファイバーコアが入っていても歯としっかり接着していない場合は、簡単に剥がれます。接着がうまくいっている場合は、境界がわからずに慎重になり安全にはがすのがとても難しいです

 

**メタルコアでも、歯と化学的に接着する接着剤が使われているケースがあります。その場合、メタルの部分はわかりやすくはずすことができても、その下の接着剤の層をはずすことが非常に大変で一苦労です。

境界がわかりにくいと、歯を余分に削ってしまうリスクもより高くなるため、削りながら何度も確かめないといけません。慎重になればなるほど時間がかかります。

では、以下に当院でのレジンコア、ファイバーコアの除去の様子を症例写真を見ながら、どういうところに気をつけながらおこなっていくのか、をご説明していきます。

 

 

ファイバーコア除去の一例

 

  ①仮歯ををはがしているところ。②ファイバーコアが装着されているけれど、歯が少なく、削っても歯が見えてきません。

DSC00540

DSC00549

 

ようやく歯が透けてみえてきたところ。(歯の質は変色して茶褐色をしています)

③

虫歯の染め出しをおこなうと、境界がわかりやすくなることが多いです。まだだいぶ接着の素材が歯にこびりついています(青→

DSC00553

やっと一部歯が露出したところ(赤点線部)

DSC00561

境界をわかりやすくするため、染め出したところ。(赤→から奥はまだファイバーコアの素材です)

DSC00564

 

このように、なるべく健康な歯は傷つけず、コアの素材だけをはがせるように注意をして処置をおこないます。ファイバーコアの場合、ポストが深ければ深いほど、マイクロスコープの光も届きにくく、歯なのか、接着の素材なのかの区別が難しいです。

しっかり剥がせず、素材が歯にくっついたまま残っていると、その部分は根管治療での殺菌も届かないことになります。剥がそうと攻めの姿勢で臨むと削りすぎる恐れもあります、かといって控えめにすると残ってしまいます、非常に難しいです。

 

メタルコアでも接着材除去が難しかったケース

 

以下の症例はいわゆる差し歯が何度もはずれているというお悩みのケースです。外れるたび、以前の接着剤が完全に取れない状態で新たに装着されているのでタイプの違う接着剤が層状に歯にくっついていました。

 

メタルコア(赤→)が装着されています、合着タイプのセメント(オレンジ点線部)が歯にくっついています

DSC01116

 

メタルコアを除去すると、スーパーボンドという歯と強力にくっつく接着剤で歯の表面がおおわれていることがわかりました(青点線部:透明なので一見は歯かと思いますが、この時点で歯の表面はまだでていません)。

DSC01117

 

合着用のセメントを剥がしてもその下にもまだスーパーボンドで覆われている状態(青点線部はすべてスーパーボンドで覆われているところ)

DSC01118

 

 歯とスーパーボンドが識別しやすいように染め出しながら超音波の熱で剥がしているところ。歯の表面がやっと一部見えてきました(赤点線部

DSC01120

 

このように、レジンコア、ファイバーコアは歯と化学的に接着する接着剤を使用するため、接着がうまくいっている場合は剥がすことがとても難しく、

慎重に行わねばならず、時間がかかります。

度重なる根管治療で歯が薄くなっている場合は少しでも健康な歯の部分を削りたくないですよね。

コアの除去は軽く考えられがちですが、慎重におこなわないといけない大切な治療ステップなのです。

 

コアの除去にかかる費用

深いメタルコア、硬い素材のメタルコア、レジンコア、ファイバーコアを安全にはずそうとする場合は難易度が高くなり時間がかかります。

通常のコア除去の2倍3倍と時間がかかるケースもあるため、リーズデンタルクリニックではコアの除去費用は¥10000〜¥20000+消費税と幅があります。

レントゲン検査である程度予測はできますが、実際に治療をおこなってみないとわからない場合が多いです。

コアの治療とは?〜歯の余命にもかかわる重要な治療〜

2016.07.26 | 根管治療, コアの治療の重要性, 根管治療と歯のひび, 根管治療と歯の厚み |

こんにちは、李です。

前回に続き、根管治療と密接に関係しているコアの治療についてのお話しをしていきます。

前回もお話しましたが、コアの治療は慎重におこなわないと歯の余命にもかかわる非常に重要な治療なのです

なぜ、歯の余命にかかわるのか?

今日はそのことに焦点を当ててお話していきます。

 

コアの治療では、ポストを併用する場合もありますし、コアとポストが一体型になったものもあります。

ポストとは、コアが外れにくいように、根管の中に差し込む形で維持をもとめる部分です。

 

下の写真左はコアだけが入っている根管治療歯です。写真右はコアとポストのタイプです。

coreb6coreb7

 

 

下の写真では、根管治療を行った場合にコアに置き換わる部分が青い点線部で、点線部はすでにコア&ポストが入っている状態です。

どちらが歯がたくさん削られて、少なくなっているか一目瞭然だと思います。

coreb8

 

下の写真は前歯用のメタルコア&ポストです、だいぶ太い部類のものです。青い矢印の部分がポストで根管に差し込みます。

**リーズデンタルクリニックではメタルコア&ポストの治療はおこないません。その理由は前回のブログをお読みください。

SHOFU DENTAL DIGITAL CAMERA

 

ポストは、太すぎる場合、多くの歯で歯根破折(根のひび割れの大きな原因になることが多いです)のリスクを高めます。

なぜなら、太いポストを根管に差し込むためには、根管の歯の部分を削る必要があるからです。

必要最小限であれば良いのですが、不必要に太く長いポストも多くみかけます。当然その分歯が削られ薄くなります。

 

太いポストの例

下の写真は右側は太いポストが入っているため、左側の歯に比べて、歯が薄くなってしまっています(→部分で比較すると半分以下の薄さです)

coreb5

ものすごく長く太いメタルポストが入ってしまっている歯。

tp1

 

ポストはなんのためにいれるのでしょうか?

歯の上部がない場合、ポスト(下の写真の青→部)を根管に差し込まないとコアの部分(下の写真の赤→部)を維持できません。

コアの上からクラウンを被せるのですが、ポストで歯の内部に支えがないとクラウンもコアもすぐ外れてしまいます。

 

SHOFU DENTAL DIGITAL CAMERA

 

なので、ポストが確実に必要な症例とは歯の上部がない歯です。

たとえば、こういう状態の歯です

DSC00583

 

では、下の二本の前歯はどうでしょう。両方ともこれから根管治療をおこなう歯です。

DSC06920

は歯の上部がなく、支えが必要なためにポストが必要です。

は歯の上部がたっぷりありますのでポストの支えは必要ありません。

もしもの歯にポストを入れようとしたら、無意味に余分に歯を削り、歯の強度弱めることになるのです。

 

患者様の中にはファイバーポストを入れたほうが歯が強くなると思っている方がたまにいらっしゃいます。

もちろん、の歯のように必要な歯にはファイバーポストをいれたほうが良いです。

けれどものようにそもそもポスト自体が必要ないような歯に、歯を削ってまでファイバーポストを入れるメリットはありません

必要以上に歯を削るというデメリットがあるだけです

 

同じ前歯の根管治療歯でも歯の状況によってこれほどの違いがあります。

日々治療を行う中で、歯が薄すぎるためにひび割れになり助けることができない歯に多く遭遇します。

健康な歯の質の部分をいかに失わないようにするかは、歯の余命にとってとても大切なことです。

コアの治療をおこなう歯科医はこういったことを考えながら治療をしないといけないと思います。

根管治療の専門医は歯の保存という観点から、歯を削り過ぎないようにとても配慮をした治療をおこないます。

それはコアの治療だけでなく、最初の根管治療の時にもいかに歯を余分に削らずにおこなうか、コアを外す際にも、ちょっとでも健康な歯を削らないように細心の注意を払って治療をしているのです。

 

繰り返しますが、コアの治療は歯の余命にかかわる本当に重要な治療なのです

 

 

コアの治療とは?レジンコアを直接法でおこなう意義

2016.07.14 | 根管治療, コアの治療の重要性, 根管治療の前処置 |

今日は根管治療と密接に関係しているコアの治療についてのお話しをしていきます。

根管治療がなされる歯にはコアの治療が必要ですし、再根管治療の場合は根管治療に入る前にコアの除去が必要です。

あまり注目されることがないコアの治療ですが、慎重におこなわないと歯の余命にもかかわる非常重要な治療なのです

そんなコアの治療について、数回に分けてお話ししていこうと思います。

そもそもコアってなんだ?という方もいらっしゃると思うので、今日はコアの種類や方法についてのお話をしていきます。

そして後半では根管治療専門医がレジンコアの直接法を選ぶ理由についてのお話をしていきます。

 

コアの治療ってどんな治療?

コアとは、根管治療をおこなった後の歯に必要な処置です。

根管治療が行われた歯は、根管の入り口までの歯の内部が削られてしまっていて無くなっていますので、その部分を補うための処置です。

 

下の写真は神経が死んで細菌感染を起こしているため、根管治療が必要と診断された歯のレントゲン写真です。

根管に到達するためには、青い点線部を削らないといけません。削らないと根管治療ができないということです。

coreb82 

 

上の歯の根管治療後、削って歯がなくなってしまった部分がコアの素材で置き換わった状態です。

coreb92

 

コアの材料の種類

コア材には主に、金属、セメント、レジンの3種類があります。

左から、セメントコア、金属のメタルコア、レジンコア

crack18-2DSC01113-959x1024s4-3

 

コア治療の方法

直接法と間接法があり、直接法はお口の中でそのままコア剤を充填する方法で、間接法は型取りをおこなって、コアを外注し、後日装着する方法です。

根管治療専門医の観点からはレジンコアを直接法でおこないます。

 

その理由は

無菌的な治療環境で殺菌した根管内をすみやかに密封することで、お口の中の細菌が根管に流入することを防ぎたいからです。

間接法の場合、根管治療後は仮蓋をして帰宅してもらいます。そして後日型取りです。

仮蓋の期間が長ければ長いほど、密封度が悪くなり、隙間からお口の中の細菌が流入すると考えられています。

また、型取りの際にはラバーダムはかけられませんので、根管内に細菌感染がおこるチャンスとなります。

型取り後にうがいなどおこなうと、さらに唾液が流入しやすくなるでしょう。

もちろん、このように間接法の型取りでコア治療をおこなったからといって、すべての歯に病気ができるわけではないですし、

コアの治療は一般の歯科医院では間接法で行われることも多いです。

根管治療専門医は、根管内に細菌を流入させないということを、第一の命題として死守する種類の歯科医なのです。

そのことを第一の目的として治療法を選択すると、直接法が一番良い方法になります。

そして、直接法でできるコアの素材はセメントコアからレジンコアになります。

ここでは歯との接着性がある材料の方を選択します。

歯と接着しているため、唾液からの細菌流入がおこりにくいからです。

接着に関しては、ここでご説明するには壮大なテーマすぎて、全部がお話出来ません。

接着はきちんとした操作でおこなわないと、失敗することも多くテクニックセンシティブと言われています。

要はやり方が悪いと失敗しやすいということです。

きちんとした接着操作をおこなってこそ、レジンコアの長所が生きます。

きちんとやろうとすると、時間もかかり、必要な器具も増えます。時間的コスト、材料的コストを考えると敬遠される方法なのかもしれません 

 

以下、直接法のレジンコア治療のステップをご説明し今日の記事を締めたいと思います。

 

直接法でのレジンコア治療

根管充填直後、根管充填で使うお薬で歯の表面がベタベタしています。このままだとレジンコアの接着がうまくいきません

DSC01215

 

接着阻害になるような歯の表面にこびりついたものを綺麗に剥がし終わったところ、このようにしないと、直接法のレジンコアはうまくくっつきません

DSC01216

 

接着処理後、レジンコア剤を充填したところ

DSC01217

 

 

 

1