根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。
ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。

●はじめての根管治療で失敗する5つの原因⑤〜修復物からの漏洩について〜

2014.04.26 | 根管治療, はじめての根管治療で失敗する原因 |

皆様こんにちは!李です。

4月ももう終わりですね。

毎年この時期にアメリカ歯内療法学会の年に一度の一番大きな学会が開かれます。

私は2年前のボストン、1年前のハワイと、ずっと参加しており、今年も参加してきます。

(過去の学会の様子はブログでご覧いただけます。カテゴリーの学会報告のところをクリックしてみてくださいね

今回はワシントンD.C.で開催されます。学会の様子はまたブログで報告していきますので、楽しみにしていてください

アメリカでは必ずステーキを食べに行きます。

アメリカに行くと必ず太ってかえってくるので、事前に備えて今週から毎朝ジョギングをしています

 患者様には毎年ご迷惑をおかけしますが、4/29〜5/8は休診となりますので、よろしくお願いいたします。

 

さて、シリーズでお話しています『はじめての根管治療で失敗する5つの原因』(SUNDQVIST et al. Endodontic Topics 2003 から引用)も、今日が最終回です。

毎度復習になりますが、

虫歯が進行していても、歯髄をとらないほどひどい痛み(歯髄炎)の段階でも、まだ細菌は根の中に蔓延していないことが多いです。

では、なぜもともと細菌が蔓延していない根管内に細菌が入ってしまい、根管治療が失敗してしまうのでしょうか?

その原因は。。。。。

原因① 無菌的治療がなされていない 一番大切

原因② アクセスキャビティーが適切でない

原因③ 根管の見落としがある

原因④ 機械的拡大が不適切

原因⑤ 修復物からの漏洩

本日は5つめの原因『修復物からの漏洩』について、お話していきますね。

 

漏洩(ろうえい)っていう言葉は患者様にとっては聞き慣れない言葉かな?と思いましたが、そうでもないですね。

情報漏洩、とかっていう言葉も良く耳にします。

歯科で言う『漏洩』とは、歯と修復物のスキマからばい菌が入る、というイメージです。

(修復物とは、インレー、クラウン、レジン充填など歯を削って詰めたりかぶせたりしたもののことです)

修復物と歯の間に隙間がもともとあったり、虫歯が出来て隙間ができてしまったりすると、その隙間から細菌が歯の内部に漏れる(侵入する)のです。

これは、二次虫歯だったり、被せものがはずれる原因にもなりますし、根管治療した歯にとっては

根の中の再感染につながります。大きな悲劇の始まりです

せっかく根の中の細菌を根管治療で減らしても、その後

 

では、根管治療において修復物からの漏洩(歯冠側からの漏洩ともいいますが)を防ぐためには??

論文ではcoronal tight sealなどと言われていますが、訳すと歯冠側の緊密な封鎖ってとこでしょうか。

つまり、

細菌を減らす除菌の治療 → 根管治療

細菌が根の中に入らないように

侵入経路をぴっちりシャットアウトする治療→歯冠修復での緊密な封鎖

ということです。

 

今、日本では保険外の根管治療が世の中にだいぶ認知されてきていると思いますが、

根管治療だけでなく、根管治療後の封鎖をしっかりする治療も同じくらい大切なのですよ

LEE`S DENTAL CLINICでは、細菌を減らす根管治療とその後の細菌の通り道の封鎖の治療(コア、築造)まではセットとして考えており、根管治療と同様にラバーダム使用、マイクロスコープ使用でおこなっております。

クラウン治療は他のクリニックでやられる患者様もいらっしゃいますが、コアまでは絶対に当院で治療をお受けいただくようお願いしております。

以下、症例見ていきましょう。

 

このレントゲン写真、黄色→が根管充填の部分、赤色→がコアの部分です。

blog20144

 

 

マイクロスコープの画像で、どのようにコアの部分の治療をおこなっているか、しっかりした封鎖を得るためにどのように気をつけているかを見ていきましょう。

下の写真は根管充填前です。根っこの穴のおそうじ、殺菌処置がすべて終了したところです。

 DSC00889

 

根管充填直後、3つの根の穴に、ぴっちりと根管充填をおこないました。

根管充填に使用するシーラーといわれる糊状のお薬が白くべたべたとくっついています。

DSC00890

 

この後、歯冠側の封鎖の処置に入ります。

この空洞の部分をすきまなく漏洩が起こらないようにするために、接着の素材を使用していきます。

接着剤、身近な素材(壁にくっつけるフック、テープ、アロンアルファなど)でも、くっつける壁などがぬれていたり、埃やなどがついていたりすると、うまくくっつきませんよね?

歯もそれと同じで、唾液や血液でぬれていたり、上の写真のようにシーラーがこびりついた状態で

接着の素材をつかっても、接着がうまくいかなくて失敗します。

失敗とは、コアの材料がくっつかなくて、スキマができて漏洩が起こるということです。

緊密な封鎖ができません。

ですので、コアの治療の時はかなり気を使います。

歯に、余分なシーラーが残らないように、マイクロスコープを見ながらあらゆる手段で綺麗にします(サンドブラスト、超音波の使用ど)。

そして、余分な水分を取り除きます。ラバーの部分にも水滴がつくので、そういった水分も全て拭き取ります。

下の写真が、綺麗にしたところ。接着操作の直前です。上の写真と比較してみてくださいね。

DSC00891

接着剤を歯の表面に塗ります。

接着剤は歯の根の象牙質に対して一番信頼性の高い 3stepの接着システムを使用しています。(何十本もの論文を読んだ結果、現段階ではこのシステムが一番信頼性が高いという結論にいたりました。)

1stepの簡単な接着システムでは接着の劣化がおこりやすく、確実な封鎖には不安が残ります。

こちらがペースト状のコア用レジンを充填し、固めた直後です。

DSC00893

時間勝負のため、ちょっと見た目が悪いですがこの状態から削って形を整えて、仮歯をかぶせていきます。

この後のステップはクラウン治療に入ります。

もうひと症例見ていきましょう。根管充填直後。

  DSC00808

 

封鎖のための接着操作の直前

DSC00810

 

コア用レジン充填後です。

DSC00812

 

さて、以上が根管充填後の歯冠側の封鎖のための治療です。

ものすごく大切なので、型取りでコアを作る間接法はいっさいおこなっておりません。

ラバーダムもかけられないし、型取りのときなどにも唾液から根の中に細菌が侵入するリスクが高いためです。

接着操作も難しいため必ずマイクロスコープ、ラバーダムは使用した状態でおこないます。

『歯冠側の確実な封鎖』について、少しご理解いただくことはできましたでしょうか?

この『歯冠側の確実な封鎖』が、『修復物からの漏洩』を防ぎます。

この後のステップのクラウン治療も、漏洩かかわる大切な治療ステップです。

私は患者様へのご説明でコアの治療を第一のバリア、クラウンの治療を第二のバリアとご説明しております。

クラウン治療に関してはブログのカテゴリの『根管治療後の治療』のところをクリックして、記事を読んでみてください。

さて、5回にわけてお話してきました『はじめての根管治療で失敗する5つの原因』シリーズは今回で終了です。

患者様に、根管治療を専門とする歯科医たちはこういったことを考えながら日々治療に取り組んでいるということを、少しでもわかっていただけたならとても嬉しいです

 

 

 

●はじめての根管治療で失敗する5つの原因④〜機械的拡大について〜

2014.04.18 | はじめての根管治療で失敗する原因 |

皆様こんにちは!李です。

桜の季節があっという間に過ぎ、4月ももう半分終わってしまいました。

今日は雨ですが、ここのところ毎日お天気が良くて本当に気持ちのよい季節です。

公園で一日過ごしたいなあ〜などと、考えてしまいます

 

さて、前回の続きです。

シリーズでお話しています『はじめての根管治療で失敗する5つの原因』(SUNDQVIST et al. Endodontic Topics 2003 から引用)、毎度復習になりますが、

 

虫歯が進行していても、歯髄をとらないほどひどい痛み(歯髄炎)の段階でも、まだ細菌は根の中に蔓延していないことが多いです。

では、なぜもともと細菌が蔓延していない根管内に細菌が入ってしまい、根管治療が失敗してしまうのでしょうか?

その原因は。。。。。

 

原因① 無菌的治療がなされていない 一番大切

原因② アクセスキャビティーが適切でない

原因③ 根管の見落としがある

原因④ 機械的拡大が不適切

原因⑤ 修復物からの漏洩

本日は4つめの原因『機械的拡大が不適切』について、お話していきますね。

 

機械的拡大とは、根っこの穴(根管)を機械を使って広げることです。

神経をとる治療(抜髄治療)の時には、根っこの穴(根管)には神経がつまっています。

こんな感じです(歯の縦断面)。

normal_convert_20130720132821 

この中につまっている神経を、器具を使って根管を広げながら取り除くのです。

ここで神経の取り残しがあると、細菌感染した場合に細菌の栄養源になるのでとても良くないです。

機械的拡大をしっかりおこなうことは、とても大切なのです。

実際には機械的拡大だけではなく、現在では殺菌のための液体の洗浄液を一緒に使用しながらおこなう

機械化学的洗浄法(BMI: Biomechanical instrumentation)が推奨され一般的におこなわれています。

根の穴を広げないと、洗浄のお薬が根の中にを行き渡りにくいのです。

これは数々の論文で裏付けられた事実です。

神経をしっかり取り除くためには、ある程度の太さまで穴を広げることが必要です。

この穴を広げる太さが不十分なことを、『機械的拡大が不十分』というのです。

神経をとる抜髄治療だけでなく、すでに根の中が感染して根尖性歯周炎(根っこの病気)を発症している歯(感染根管)の根管治療でも、機械的拡大をしっかりおこなうこと=細菌の量がより減ること、となります。

(残念ながらどんなに広げても細菌はゼロにはなりませんが…..

 

以下に機械的拡大を語る際にははずせない有名なDaltonらの論文をご紹介いたしますね。

Daltonらは、機械的拡大のみで根の中の細菌がどのくらい減るかを実験しています(洗浄は生理食塩水を使用)。

機械的拡大はSS(ステンレススチール)とNi-Ti(ニッケルチタン)二つのファイルで比較しています。

下のグラフの縦軸が細菌の量、横軸が機械的拡大の太さ(拡大号数)です。右に行くほど拡大が大きくなっています。

注目すべきなのは、赤○から紫○へと拡大号数が大きくなるにつれて、細菌が減っているということです。一番細菌が減っている紫○のS4はSSでは#35〜#40のサイズです。

 

  dalton

(Dalton BC et al.  J Endod 1998より引用)

 

ここで、もう一つわかることは、細菌を減らすのに、使用器具は関係なくSSファイルを使おうがNi-Tiファイルを使おうが拡大が大きくなれば細菌は減っています。

もちろん拡大の効率、レッジができにくい、などNi-Ti使用にはメリットがたくさんありますが細菌を減らすという目的では両者に差はないということです。

 

以下まとめです。

 

機械的拡大が不十分だと。。。。

はじめての根管治療(抜髄治療 )では

●細菌の栄養源となる、神経を取り残しやすい

●洗浄液が行き届きにくいため、根の中をきれいにお掃除しにくい(つまり神経が残りやすい)

感染根管(再治療やすでに神経が死んでいる)では

●細菌を減らしにくい

●汚染を取り残しやすい

●洗浄液、殺菌の薬を効かせたい部分に届かせにくい

 

レントゲン写真で症例を見ていきましょう。

下のレントゲンは感染根管の再治療ですが、赤○の6番は機械的拡大が不十分です。

青○4、5番はしっかり拡大されているのが根管充填からもわかりますね。6番は拡大不足から根管充填も不適切で、根の中に神経の残骸や汚染がたっぷり残っているのが想像できます。そして遠心のクラウンの下に虫歯もありそうだなと。。。ということで、赤○の6番には根っこの病気(根尖性歯周炎)もできています。

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もう一つ、下のレントゲンも赤○の2,3番は青○にくらべて機械的拡大が不十分です。

こちらも神経の残骸、虫歯、からかなりの汚染、細菌たっぷりの状態が予測できます。

ということで、赤○には根っこの病気(根尖性歯周炎)もできています。

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さて、機械的拡大について、少しご理解いただくことはできましたでしょうか?

根管治療を専門とする歯科医たちはこういったことを考えながら日々治療に取り組んでいるのです。

 

次回、最後の『原因⑤ 修復物からの漏洩』は治療後の再発に関するとっても大切なところです。

ついにこのシリーズも残り1つになりました。

皆様にご理解頂けるよう、気合いをいれて頑張ります

 

●はじめての根管治療で失敗する5つの原因③〜根管の見落とし〜

2014.04.08 | はじめての根管治療で失敗する原因 |

こんにちは!李です。

LEE`S DENTAL CLINIC 4周年に、お祝いのお言葉、お花など本当にありがとうございました

とても嬉しく、今後のやる気がますますアップしました。

ブログも診療も頑張ります

 

さて、シリーズでお話しています『はじめての根管治療で失敗する5つの原因』(SUNDQVIST et al. Endodontic Topics 2003 から引用)

本日は3回目となります。

復習になりますが、

虫歯が進行していても、歯髄をとらないほどひどい痛み(歯髄炎)の段階でも、まだ細菌は根の中に蔓延していないことが多いです。

では、なぜもともと細菌が蔓延していない根管内に細菌が入ってしまい、根管治療が失敗してしまうのでしょうか?

その原因は。。。。。

 

原因① 無菌的治療がなされていない 一番大切

原因② アクセスキャビティーが適切でない

原因③ 根管の見落としがある

原因④ 機械的拡大が不適切

原因⑤ 修復物からの漏洩

 

5つの原因のうち、①、②はすでに終わりました。

 

今日は原因③ 根管の見落としがある について、ご説明していきます。

 

根管の見落としってどういうことか?

歯の神経がおさまっているスペースは根管(こんかん)、英語ではroor canalといいます。

歯の種類によって、根の形は異なります。根の形がことなるということは、根管の数も異なります。

一般的に、前歯は1根管のことが多く、小臼歯は1根管、または2根管、大臼歯は3根管、または4根管です。

歯の神経をとる処置(抜髄処置)が必要となった場合、根管のなかから神経をなるべくきれいに取り除くことが重要です。

なぜなら、神経が根管の中に残っていると、根の中に細菌が入ってしまった場合に、細菌の栄養源になるので、細菌が繁殖しやすくなります。

 

根の中に細菌が入るタイミングは大きく3つにわけられます。

 

治療中に入ってしまう(ラバーをかけない根管治療、治療中のうがいなどもってのほかですし、使う器具が滅菌されていなければ、治療することで根管に細菌をいれてることになります

治療と次の治療までの間に入ってします(仮のふたの厚みが薄い、または唾液がはいりやすい素材)

治療後に細菌が入ってしまう(治療後、二次虫歯になってしまう)

などが考えられます。

 

このようなタイミングで細菌が入らないようにすることがまずは大切ですが、細菌が根の中に入ってしまったときに、栄養供給がない方が細菌が生き延びにくいのです。

一番最悪なのは栄養が豊富な環境で、上記のタイミングでどんどん細菌が入ってしまうような状況です。

こういった理由から、根管の見落としはぜひとも避けたいですね!!

 

では、どれくらい根管って見落とされやすいのか?

一番見落とされやすいのは根管数が多い大臼歯です。とくに上顎第一大臼歯(上の6番と言います)の近心根という根っこは、二個目の根管(MB2:エムビーツーと呼ばれています)がある確率がとても高いのです。

LEE`S DENTAL CLINICにいらっしゃる患者様の歯で、再治療時にMB2がしっかり治療できている歯は今まで一度もみたことありませんでした

そのくらい見落とされやすいMB2、以下再治療の症例で見落とされた根管を見ていきましょう!

 

 根管治療着手時、まだ何もさわっていません。手前下に根管が見えますね。

DSC00552

 

MB1をさぐっているところ(この歯はMB2どころか、近心根(MB1)も適切に処理されていません

DSC00554

 

MB2をさぐっているところ

DSC00558

 

MB2から神経の残骸がでてきています。

DSC00564

 

MB2,MB1の2つの根管がわかりやすくなったところ、一番最初の写真(下)と比べてみてください!

DSC00563DSC00552(術前)

このように、見落とされた根管があると、細菌のえさになってしまい根の病気(根尖性歯周炎)を誘発する要因となるのです

次回は『原因④ 機械的拡大が不適切』をご説明いたしますね。

それでは、おだやかな春の日を楽しんでください

 

●はじめての根管治療で失敗する5つの原因②〜神経の取り残しは問題ない!?〜

2014.03.25 | はじめての根管治療で失敗する原因 |

こんにちは。李です。

日に日にポカポカしてきていますね

朝起きたときの感じが冬とは全然違います。

私は最近首と肩の調子がとても悪くて、ストレッチポールというものを買いました。

↓これです。

http://stretchpole.com/

ポールの上でコロコロ転がったり、腕をまわしているだけでだいぶ調子が良くなります。とてもおススメです

朝早めに起きて、ストレッチポールにのるのが日課になっております。

 

 

さて、前回から『はじめての根管治療で失敗する5つの原因』(SUNDQVIST et al. Endodontic Topics 2003 から引用)をご説明しております。

復習になりますが、

虫歯が進行していても、歯髄をとらないほどひどい痛み(歯髄炎)の段階でも、まだ細菌は根の中に蔓延していないことが多いです。

では、なぜもともと細菌が蔓延していない根管内に細菌が入ってしまい、根管治療が失敗してしまうのでしょうか?

5つの原因は以下の通りです。

原因① 無菌的治療がなされていない

原因② アクセスキャビティーが適切でない

原因③ 根管の見落としがある

原因④ 機械的拡大が不適切

原因⑤ 修復物からの漏洩

 

今日は原因② アクセスキャビティーが適切でない を詳しくご説明していきますね。

 

アクセスキャビティーとは?

患者様にはなじみのない専門用語ですが、なんのことかというと、根管にアクセスするための穴、つまり根管にきちんと器具が届くように、また根管の見落としがないように過不足なく入り口の歯の部分を削ることです。

イメージがつきにくいと思うので、イラストをPathways of The Pulp – 10th Editionから引用してご説明していきます。

 

歯を上から見たところと、横から見たアクセスキャビティー断面のイラストです。

ac6.004

 

歯を上からみた場合のアクセスキャビティー:はじめての根管治療の場合は、アクセスキャビティーは術者が設定できますが、再治療の場合は、もうすでに以前根管治療をおこなった先生によってアクセスキャビティーは出来上がっています。

ac6.002

 

歯を横からみた断面のアクセスキャビティー:小さすぎると、根管がみえづらく、そして器具が入りにくいのです。

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このように、アクセスキャビティーは結構難しいのです。

では、実際の症例の写真を見ていきましょう。

 

小さいアクセスキャビティーの例です。

器具がしっかり届くためにはもう少し広げないといけません。

とくに湾曲の強い根の部分はせまいアクセスキャビティーだと器具をいれることができません。

DSC00206   

せまいアクセスキャビティーが原因で、根管の見落としや、器具をきちんと挿入することができず、歯の神経を取り残したりします。

(根管の拡大が不十分などといいます)この、取り残した神経は細菌の栄養源(餌)になるのでとても良くないです。

栄養があると細菌はより繁殖します。細菌の繁殖は根尖性歯周炎(根の病気)を誘発します。

でも、根尖性歯周炎(根の病気)は細菌がいなければおこりません。

ですから、せまいアクセスキャビティーで神経の取り残しがあっても、無菌的治療 が守られていれば、根の病気はできないということになります

前回の『原因① 無菌的治療がなされていない』でご説明した無菌的治療と適切なアクセスキャビティー、どっちが大事かというと圧倒的に無菌的治療の方が大事です。

細菌の存在が、病気ができるできないに直接かかわってくるのですから

 

次に、必要以上にアクセスキャビティーを大きくするとどうなるでしょう?何か悪いことがおこるのでしょうか?

必要以上に大きなアクセスキャビティーは、歯の量が少なくなり、破折がおこりやすくなります。

 

以下症例写真です。

大きくなっているアクセスキャビティーの例です。根管の位置より少し外側に削り過ぎです。(赤い部分が削り過ぎ)

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こちらも必要以上に大きくなっているアクセスキャビティー

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どうでしょうか?過不足なくアクセスキャビティーを設定することが治療の成功や歯の長持ちに関わってくるのです。

こういったことも考えながら治療することはとても大切なのです。

ということで、『原因②アクセスキャビティーが適切でない』は以上です。

次回は『原因③ 根管の見落としがある』に続きます!

 

 

 

●はじめての根管治療で失敗する5つの原因①〜ラバーダム防湿と無菌的治療〜

2014.03.20 | はじめての根管治療で失敗する原因 |

 

こんにちは。李です。

やっと春が近づいてきていますね。花粉症の方にはつらい季節ですが、暖かくなり気持ちよくて嬉しいです

 

さて、今日は根管治療にまつわるお話にまた戻ろうと思います。

根管治療の話題もいろいろ書いてきているので、だいぶネタに悩むようになってきております

何を書こうかなと悩んだ時はとりあえず論文を読むことにしています。今回は歯の根の病気(根尖性歯周炎)の原因である細菌について、の論文を何本か読みました。細菌学な視点だとわかりにくいので、患者様にわかりやすく治療の視点で書いてみようと思います。

 

ホームページの『根管治療』のところにも明記してありますが、

根尖性歯周炎の原因はほぼ細菌です。
このことはKakehashi S et al. (1965)によって、ラットを使った実験で立証されております。
神経が生きている間は根管内には相対的に細菌は存在しないと言われています(Haapasalo M et al. 2003)。

細菌さえいなければ、問題はおこらないのです。

 

誰でもはじめての根管治療は歯髄組織(神経や血管や結合組織などを)をとる処置になると思います。

歯髄組織をとる(抜髄処置といいます)ことになる原因の多くは虫歯です。その他の原因としては歯をぶつけてしまったなどの外傷や、かぶせもの治療のための便宜抜髄などがあります。

でもほとんどの方は虫歯が原因で歯髄組織をダメにしてしまったことが多いのではないでしょうか?

このことにさかのぼって考えていってみましょう。

 

歯の一番外側はエナメル質で覆われています。

このエナメル質はその内側にある象牙質と歯髄(歯の神経)をお口の中の細菌から、守っています。丈夫な鎧のような役割です。

このエナメル質のバリアが、虫歯で破られると細菌が象牙質に侵入します。虫歯の始まりです

虫歯が進行していても歯髄が生きている状態では根の中に細菌は入れません。

歯髄をとらないほどひどい痛み(歯髄炎)の段階でも、まだ細菌は根の中に蔓延していません。

では、なぜもともと細菌が蔓延していない根管内に細菌が入ってしまい、根管治療が失敗してしまうのでしょうか?

ここで、

『はじめての根管治療で失敗する5つの原因』を5回にわけて詳しくご説明していきます。(SUNDQVIST et al. Endodontic Topics 2003 から引用)

 

5つの原因は以下の通りです。

原因① 無菌的治療がなされていない

原因② アクセスキャビティーが適切でない

原因③ 根管の見落としがある

原因④ 機械的拡大が不適切

原因⑤ 修復物からの漏洩

 

早速今日はをご説明していきますね。

 

原因① 無菌的治療がなされていない

これは一番重要なことです。どれくらい重要かというと、これをおこなわないとうのは、治療が失敗することを黙認することなのです。つまり、技術の問題ではなく、倫理的な問題と言ってもいいくらいです(残念ながら日本の保険治療のシステムではこの最重要の問題が軽視されているのです)。

 

具体的にはどういうことを無菌的治療というのか?といと、

まず治療で使う根の中に入れる器具は完全に滅菌されたものでなければいけません。

消毒や殺菌レベルですと器具のまわりにはまだ細菌がゼロではないのです

次にお口の中の細菌が根の中に入らないような工夫、ラバーダム防湿です。

人間の口の中の細菌数は10の10乗(想像もつきませんね)種類は500種類といわれています。

つまり口の中は細菌だらけなのです。神経をとる治療のときに、細菌が根の中(根管)に入らないような配慮をしないと、どんどん流入していってしまうのです。

 

無菌的処置のためのラバーダム防湿までの治療ステップを、再治療の症例でみていきましょう。

 

①治療のためにクラウンや土台をはずして根管治療の前に、歯に虫歯が残っていないかをチェックします。

歯の丈もほとんどない状態で、この段階ではまだラバーダムはかけることができません。こんな状態のまま根管治療をしても、唾液や歯のまわりのプラーク(歯垢)、歯に残っている虫歯から細菌がどんどん根の中に流入してしまいます。

DSC00630

 

②虫歯をとりのぞき、出血や唾液を排除しながら接着の素材で歯の全周に堤防をつくります(隔壁といいます)。

堤防をつくっても、お口の中は唾液にあふれていますので、あっという間に根の中に細菌が入ります。

ここで注意したいのは、隔壁の前に完全に虫歯が取り除かれていることです。中途半端に銀歯や詰め物が残った状態だと、その下に虫歯がかくれていることも多いです。また、接着の素材が歯としっかりくっつくためには血や唾液が歯の表面についていてはいけません。

(日用品で使う、接着剤やセロテープなども、ぬれた表面にはくっつかないですよね?歯科で使う材料もそれと同じなのです)

これは本当に大切なことなのですが、多くの患者様の治療をみていると軽視されているように思います。保険の範囲内の短い治療時間でこういったことに注意を払って治療することはほぼ不可能に近いのでしょう。

 

DSC00631

 

③ここまできてラバーダム防湿をおこなえます。

ゴムのマスクを装着するだけでなく、歯とゴムのマスクの隙間をうめることが大切ですし、歯の周りとゴムのマスクも消毒します(この隙間からも唾液は入りますし、高濃度の消毒液がお口の中に漏れることもなく安全です)。

 

 

DSC00633

ここまでおこなってはじめて、お口の中の細菌をシャットアウトし根の中に細菌が入らないような準備が整います。

これで根管治療をおこなえます。

使用する器具は完全滅菌、またはディスポーザブルのみ、毎回ものすごくたくさんの器具を使います。

これができてはじめて無菌的処置を達成できたと言えます。

無菌的処置の重要性、わかっていただけましたでしょうか?

これができない日本の保険治療での根管治療では、ほとんどの根の中に細菌が入ってしまっている、といっても言い過ぎではないと思います。

でも、どうか主治医をせめないでくださいね。歯科医が悪いのではありません。国の保険制度が十分でないのです

私も勤務医時代はそのように治療するしか方法がありませんでしたから。。。。。

では、次回は『はじめての根管治療で失敗する5つの原因』②に続きます。

 

 

 

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