LEE'S ブログ

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根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)疑問に思ったことは徹底的にリサーチします。学会参加報告記や、お知らせ、プライベートのくだらないお話もごくたまに、綴っております。

ポスト、フェルル、根管治療歯の長持ちにはどちらが重要?

こんにちは。李です。

日本橋桜通りの桜は満開です

八重洲から八丁堀まで続くさくら通りの桜。ずっと奥まで続きます。特に昭和通りを超えてからは桜が密集していてまさに桜の天井です、ぜひクリックしてみてください

毎年楽しみなこの季節ですが、今年ははじめて花粉症の症状が出てしまいました

さて、前回、前々回と根管治療を行う時に精査するべき残存歯質の量、特にフェルルについてブログ記事を書いています。

フェルルとは?前回のブログお読みください

根管治療しても長持ちしない歯の見分け方②〜フェルルの有無〜

 

今日もその続きとして、最近出版された興味深い論文を引用し、解説します。

Naumann M et al.“Ferrule Comes First. Post Is Second!” Fake News and Alternative Facts? A Systematic Review. 2018 Feb;44(2):212-219

 

フェルルの有無、ポストの有無が根管治療した歯のサバイバル、修復物のサバイバルにどう影響するかを調べたものです。

術後5年以上のデータのある8つの論文のシステマチックレビューで検証していますので、エビデンスレベルの高い研究と言えます。

簡単に結果をまとめますと、8本中7本の研究で歯にフェルルがある場合はポストにプラスの効果がないという結果が出ています。

この中でフェルルの効果を比較検証した研究は3本ですが、2/3本でフェルルの存在が歯のサバイバルに好ましい効果があるとの結果となっています。

歯にフェルルがあればポストを入れても入れなくても変わらないということで、つまりそれは歯のサバイバルにはポストよりもフェルルの有無の方が、重要であるという結果と言えます。

歯がたっぷり残っていて、フェルルがあることが根管治療歯の長持ちにとても大切なことです

残存歯質、フェルルがあるかどうかを正確に把握するにはクラウンやコア、ポストを外し、虫歯があれば虫歯を取り除いた状態で評価が必要です。

根管治療を受ける際には、根の病気の診査ももちろんですが、フェルルも含めた残存歯質をしっかり把握することが大切です。しかしながら、フェルルがあるから絶対に長持ちするとは言えません。残存歯質の量は歯の余命の予測のための1つの目安となりますが、それ以外の要素もたくさんあること、お口の状況は個人差があることなどから、いろいろな要素を考慮して主治医とよく相談の上、治療を進める必要があります。

例えば、フェルルがしっかりあっても、太いポストのせいで根が薄くなっていたり、そもそも全くの健全歯でも、過度の歯ぎしり食いしばりなどでパックり割れてしまうこともあるのです。

以下、フェルルや歯冠の歯質ががあっても割れていたケースです。

フェルルがあっても、太いポストが入っていて破折をしていた歯

歯ぐきが腫れている、という根管が太く削られている左上5

フェルルはありますが、根が薄く、外すと根が破折していました

抜歯インプラント治療となりました

インプラント上部構造セット後

 

根管治療をしていない、無傷の歯が割れていたケース

根管治療もしていない、インレーすら入っていない健全な歯がたっぷり残った左下6 の歯冠が破折しています。(茶色いところは虫歯ではありません)

破折がどこまでいっているか確認するために削り取っていくと歯根まで真っ二つに割れています。

 

 

根管治療しても長持ちしない歯の見分け方②〜フェルルの有無〜

こんにちは、李です。

前回の続きのお話をしていきます。

根尖性歯周炎(根の周りの炎症の病気)の治療で根管治療や歯根端切除術を行い、病気が治り(サクセス)、その歯がどれだけ長持ちするか(サバイブ)、正確にはわかりませんが、歯の量を目安にある程度の傾向を予測することは可能です。

例えば、歯が薄く、量が少なく、そして奥歯で噛む力が強く歯ぎしりの習癖がある場合は、そうでない場合よりも長持ちしなさそう、などと予測します。

歯の長持ちの予測のための歯の質の診査

当院の診査では、根尖の診査診断と歯髄(歯の神経)の診査診断を行いますが、それ以外にも歯の質の診査というメニューもあります。このメニューは診査のためにある程度治療を進める必要があります。クラウンや詰め物、土台を外し、虫歯がある場合は虫歯を取り除き、残った健康な部分の歯がどれくらいあるか、を見ていきます。レントゲン検査で極度に歯や根が薄そうな場合は根尖性歯周炎や歯髄炎が治ったとしてもその歯が長もちしない可能性があるため、歯を保存する、しないの意思決定のためにこのような診査が必要な場合があります。​

歯の質の診査の一例

歯の質の診査のために、クラウンを外したところ、メタルコアが大部分で歯があまり見えません

メタルコアを外しているところ、歯がだいぶ少なそうなのがわかります

メタルコアを外し、染め出しをして虫歯を取り除くと、全周のうち歯肉縁上に一壁しか歯がありません。(=一部フェルルあり)

 

歯の予後に関わる様々な要素の中で一番重要、インパクトが大きいといわれているのが残存歯質量(健康な歯の量、厚み)と言われています。残存歯質量を見るときに、一つの目安となるのがフェルルの有無です。

歯の予後に大切なフェルルの有無

フェルルとは、歯頚部(歯と歯肉の境目あたりのこと)の部分の歯質で、歯にクラウンをかぶせた時にクラウンで囲まれる部分のことです。歯にかかるストレスを減らし、破折から歯を守る効果がある、と言われています。

フェルルの有無は 特に前歯や小臼歯で歯の予後(破折、脱離)に大きく関わると言われていています。

下の図は論文から引用したものです。青色でなぞった部分の歯がクラウンで囲まれるフェルルの部分です。

Jelena Juloski et al. Ferrule Effect: A Literature Review. Journal of Endodontics. 2012;38(1):11-19. より引用

 

イラストではなかなかピンとこないと思いますの症例で見て行きましょう。

メタルポストが入っている左上2、3、青い部分がフェルルになります。

 

全周360度あることが望ましいと言われていますが、全くないよりかは、部分的にでもある方が良いと言われています。

 

 

症例写真でフェルルのあるなしをご説明します。

歯の全周のうち3/4はフェルルがある状態

全周フェルルがない状態

フェルルがある状態(丈も厚みもしっかりあります)

全周フェルルがない状態

 

​噛んでいる時に歯にかかる力は、だいたい歯肉のラインの少し下のあたりの根の外側に最大の力がかかると言われています。

フェルルがあることで、この力が緩和されると言われています。

多くの教科書や、文献ではフェルルのない歯は歯根破折のリスクやクラウンやポストの脱離のリスクがフェルルのある歯よりも高くく予後不良と言われていて抜歯が推奨されることが多いです。

ファイバーポストごとクラウンが脱離した左上2、歯を見ると全周フェルルがありません

 

では、それでもなんとか保存したい場合はどうするのか?

フェルルを作る方法があります

それは歯冠長延長術(クラウンレングスニング:フェルルを確保するために歯肉や骨を外科的に切除する方法)、矯正的挺出(Orthodontic extrusion:フェルルを確保するために矯正で歯を引っ張り上げる方法)という方法です。

この方法は根の長さがある程度ある歯に限り有効と言われています。この二つの術式を行うことで、骨に埋まっている部分の歯根が短くなります。歯冠歯根比と言って、根の長さと、歯の頭の部分(歯冠)の比率が1:1を切ると予後がよくないと言われているためです。ですので全ての歯に適応できるわけではありません。

患者様が来院され、フェルルがなく薄い歯を残したいと言われた場合とても悩みます。

残したい気持ちはよくわかるのですが、長持ちしない可能性が高い。

歯の状態をご自身で理解していただくためには、実際に外した状態を写真で見ていただき、相談した上で治療の方向性を決めて行くのが一番だと思います。

参考文献

Jelena Juloski et al. Ferrule Effect: A Literature Review. Journal of Endodontics. 2012;38(1):11-19.

Naumann M et al.“Ferrule Comes First. Post Is Second!” Fake News and Alternative Facts? A Systematic Review. 2018 Feb;44(2):212-219

Robbins JW. Restoration of the endodontically treated tooth.Dent Clin North Am. 2002 Apr;46(2):367-84.

根管治療しても長持ちしない歯の見分け方①〜複雑な要因〜

こんにちは、李です。

今日は久しぶりに歯のお話になります。

初診でいらっしゃる患者様から『歯を残せないと言われた』『治療しても歯が長持ちしないと言われた』というお話をよくお聞きします。

そういったケースでは歯にヒビが入っていたり、その疑いがある場合が多いのですが、それ以外でも治療をしても後にひび割れが起こりやすそう、被せ物が外れやすそう、という歯はあります。

治療した歯がどれくらい長持ちするか、は全体的な歯の総量、厚み、丈、などが大きく関わると報告されています。

ヒビはないけれど、歯が薄く、丈もなくほぼ歯肉に埋もれている状態

根管治療した歯の病気(根尖性歯周炎:腫れや痛みなど根の周りの炎症の症状)が治ることと、その歯がどれだけ長持ちするかは全く別の問題なので切り離して考えなくてはいけません。

根の病気の治癒(病気が治るかどうか)はサクセスレート

歯の長もち、長生きは(抜歯になるかならないか)サバイバルレート

と文献では表現されます。

例えば、右上の小臼歯の歯肉の腫れがあり、診査結果から根尖性歯周炎と診断しました。それ以外に歯が非常に薄いことがわかりました。根尖性歯周炎の再治療の成功率は約70~80%なので、その確率で病気は治ります(サクセス)。腫れが引き、快適に噛めるようになります。けれども、その歯が薄いため、3年以内に破折してしまい抜歯となる、それはサバイブしなかったとなります。

例えば100本の根尖性歯周炎のある小臼歯の治療で 根尖性歯周炎の治癒のトータルの成功率は80%だったとしても、5年後のサバイバルレートは歯が多いグループと少ないグループでは変わってくる可能性があるということです。

歯が薄いけれども、病気も治り(サクセス)今のところサバイブしている左上1

こちらでは長いポストも外せることが多いですが、ここまで長い場合は、削る器具の長さの限界を超えているため難しいです。 歯も薄いことから、長持ちは難しいけれども、なんとかしばらく歯を使いたい、まだ抜歯はしたくない、ということで、歯根端切除術のみを行っています。 手術後1年、腫れなど不快症状もなく快適にお過ごしいただいています。

 

歯が薄いけれども、病気も治り(サクセス)今のところサバイブしている左上6

歯根端切除術後。根先端は砕けていて、折れた破片を取り除きました。 切断した断面を観察すると、やはりヒビがあります。取れる範囲で取り除きMTAセメントで修復。 歯根端切除後6ヶ月経過。 黒い影はなくなり、症状も改善。快適に使えているそうです。ヒビは残っているため長持ちできないことからクラウン治療は保険のものをお勧めしました。


歯がどれくらい薄いと、どれくらいのサバイバルレートか?を事前に予測できると、とても参考になると思います。

けれども、その検証はとても難しく、ほぼ不可能と言えます。

なぜなら、お口の環境による個人差も歯のサバイバルに関わります。

歯の厚みや量以外でサバイバルに関わる様々な要因

一番大きな要因は歯の量と言われていますが、その他の要因としては、かみ合わせた時に噛む力がどれくらいかかっているか、歯ぎしり食いしばりの習癖があるか、その歯がブリッジや入れ歯の支えの歯になっているかどうか、または歯周病で骨の支えが少ない、などが複雑に関係します。また、歯の位置も大きなポイントです。前歯なのか、小臼歯なのか、奥歯なのか、それぞれによって根の形(副根か単根か)も違いますし、噛む力のかかる方向が違います。ポストの種類、接着剤、被せ物(クラウンなのか、インレーなのか、重点なのか)なども影響があるという報告も多くあります。

このように色々な要因が影響しあって、実際にその歯が何年もつかなどは誰にもわからないのです。

ただ、ある程度の傾向がわかるだけでも、治療して保存するという選択をするのか、または抜歯を選択するのかを決める際の助けになると思います。

次回のブログ記事では、この目安についてもう少し掘り下げてお話をしていきます。

 

参考文献

Robbins JW. Restoration of the endodontically treated tooth.Dent Clin North Am. 2002 Apr;46(2):367-84.

Naumann M et al.“Ferrule Comes First. Post Is Second!” Fake News and Alternative Facts? A Systematic Review. 2018 Feb;44(2):212-219

 

深い虫歯の治療〜神経を保存する生活歯髄療法〜

 

昨日から私が勤務医の時にお世話になった元上司の先生のカンボジアの歯科医院と診療を視察にきています。日本やアメリカ、カナダなど、先進国の歯科医療はよく理解していますが、開発途上国の歯科医療は初めてです。滞在中は現地で歯科医としてのボランティア活動も行う予定です。また帰国後にブログでご報告したいと思います。

 

さて、前置きが長くなりましたが神経に近い、深い大きな虫歯の治療法、生活歯髄療法について今日は書いていこうと思います。以前にも生活歯髄療法についてはブログで記事を書いていますが、9月に札幌のAE(Academy of Endodontics)での認定医更新試験のための発表で生活歯髄療法をテーマに選び、新たに80近くの関連論文を読み、新しい知識をアップデートすることができましたので、このブログで数回に分けてこのテーマを取り上げていこうと思います。

*記事の最後に参考文献を載せておきますので、ご興味のある方はどうぞ。

生活歯髄療法にも種類がありますが、今日ご紹介する生活歯髄療法は神経を露出させない方法で、日本の歯科の教科書だと間接覆髄法などと言われます。

 

間接覆髄法とは

治療の流れは基本的には深い虫歯を削りとった表面にお薬を置いてその上から詰める、というものです。神経に近い深い部分に置く薬剤は水酸化カルシウム製剤を使用することが古くから一般的でゴールドスタンダードといえるでしょう。その上の詰め物はレジンやアマルガム、グラスアイオノマーセメント、酸化亜鉛ユージノールセメントなど様々なものが使われます。

これだけ聞くと非常にシンプルな虫歯治療で簡単に聞こえますが、これがなかなか奥が深いのです。それはなぜかというと、事前に診断が難しい神経の生命力が治療の成功に大きく関わるからです。

 

ドックベストセメント、3mixの治療って?

患者様から、ドックベストセメント、とか3mix とかそういった治療法について聞かれることが多くあります。

ドックベストセメントも3mixも、治療の流れは基本的には深い虫歯を削った表面にお薬を置いてその上から詰める、というものなので間接覆髄法と言えます。

深い虫歯、神経に近い虫歯の治療法でそういうものを使うと神経が助かると誤解している患者様がほとんどで、そして歯科医の先生も誤解している方が多いようにお思います。

深い神経の虫歯の治療が成功するかどうかは、もともとの神経の健康度合いと、虫歯を削った穴をいかにきっちりと封鎖できるかどうかに関わっています。ドックベストセメント、3mix,などを使ったから助かるわけではありません。

神経が生き延びれるかどうかは、その神経がどれだけ健康かによります

神経が健康であればあるほど、適切な治療をすれば、ドックベストセメントや3mixなど行わなくても助かります。最近では、従来から使われている水酸化カルシウム製剤すらも必要ないかもしれない、というリサーチも出てきています。(参考文献10)

ここで重要なのは神経の健康度合い(生命力とでもわかりやすく言いましょう)と、適切な封鎖です。

神経の生命力/炎症の度合い

虫歯が深ければ深いほど、虫歯菌の影響で神経に炎症が起こります。神経が不健康になり、生命力が弱まっていくイメージです。この神経の不健康度合い(歯髄炎の度合い)が、治療の成功に関わる第一のキーポイントです。

歯髄炎が進むと神経の生命力が弱まり、治療で虫歯を取り除いても、生命力が回復できない場合があります。

歯髄炎にも様々な状態、初期〜重度のステージががあります、

初期から重度に進むペースも虫歯の環境やお口の状況などで個人差があるといえるでしょう。

健康な神経、または軽い歯髄炎程度は神経を残す治療が成功しやすいです。

神経の生命力が弱ってしまった原因は虫歯(細菌の刺激です)。

細菌刺激で神経に炎症が起こります、そして神経がまだ元気なうちは炎症の原因を取り除いてあげれば(虫歯を取り除くこと)、自己治癒します。

 

中程度、重度の歯髄炎になってる場合は、よりアグレッシブな生活歯髄療法または神経を取る治療が必要となることが多いです。

重度の歯髄炎になると、そもそも神経の生命力が弱くなっているので、健康な状態に回復できず、ドックベストセメントも3mixももちろん効果はありません。

 

↓神経の炎症の度合いをイラストで表すと、こういうイメージです

(濃く赤い部分が炎症の範囲です)

 

使う薬、セメントよりも確実な封鎖が重要

確実な封鎖というのは虫歯の穴を外界からシャットアウトするようにきっちり詰めることです。原因を取り除いたとしても、虫歯を削った穴の封鎖がしっかりできていなと、詰め物の隙間から、刺激がいきますし、細菌の栄養となる唾液などが入り込みさらに細菌が増え、活動しやすい環境になり、神経の炎症が持続します。

 

あえて神経に近い部分の虫歯を取らない治療法

虫歯は全て取り切らないと、神経の炎症は治らない、治療後も中でどんどん進んでしまう。そう考えている歯科医はとても多いと思います。大学でもそう教わりますし、わたしもこれまでそう思っていました。

今回、このテーマのために論文をいろいろと読み、欧米でのカリオロジーという予防歯科の分野や小児歯科の分野では昔の考えと大きく変わってきていて、神経に近い虫歯で、神経の生命力が健康な場合は一番深いところの虫歯を取り切ら無い、ということが主流になってきていることに驚きました。

虫歯を取り切らないことのメリット

神経に近い部分の虫歯、そこをとると神経に穴が開いてしまうような、そこを刺激することでより神経にダメージを与えてしまうような、深い部分、ここはあえて虫歯を取らず(刺激せず、神経に穴が空くのを防ぐためです)残した状態で、穴をしっかり封鎖すると、中の細菌数が減り細菌の活動が止まり、虫歯の進行が止まると数多くの研究で証明されています。(参考文献4,5,6,8)

神経が健康だと、残った活動停止した虫歯菌の緩やかな刺激で第3象牙質という、新しい歯が神経の内側からできます。

これが元気な神経の防御反応なのです。

以前は水酸化カルシウムの効能でこの第三象牙質ができると考えられていましたが、現在は神経または象牙質の細胞(象牙芽細胞)が、進行停止した虫歯のゆるやかな細菌に刺激されて、こういった防御能を発揮すると考えられています。

***ただしこれは弱った生命力の弱い神経では起こりません。神経が健康だからこそ起こる防御反応です。***

 

Selective carious tissue removal

2015年に12の国(北米、南米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア)から21人のカリオロジーの専門家が集まりInternational Caries Consensus Collaboration(ICCC)が開催され、神経に近い虫歯はあえて虫歯を取り切らないということでコンセンサスが得られています。

また、この方法はいろいろな名前で呼ばれていましたが、Selective carious tissue removal という呼び方に統一されました。

訳すと『選択的な虫歯除去』 という感じです。

逆に完全に取り切る方法はNonselective carious tissue removal 『非選択的な虫歯除去』で, 浅い虫歯、中程度の虫歯に適応されます。

*記事の最後に参考文献を載せておきますので、ご興味のある方はどうぞ。

Selective carious tissue removal はもっと歯科医の間で認識されて来れば大人の虫歯の治療でも需要が増えてくると思います。神経が温存できれば難しい根管治療も必要ないですから。

 

↓AE発表時に作ったSelective carious tissue removal のスライドを以下に貼り付けます。

 

参考文献

  1. Frencken J. E., Innes N. P. T,  Schwendicke F. Managing Carious Lesions: Why Do We Need Consensus on Terminology and Clinical Recommendations on Carious Tissue Removal? Adv Dent Res. 2016;28(2):46-8.
  2.  Innes NPT, Frencken JE, Bjørndal L, Maltz MManton DJRicketts DVan Landuyt KBanerjee ACampus GDoméjean SFontana MLeal SLo EMachiulskiene VSchulte ASplieth CZandona ASchwendicke F. Managing carious lesions: consensus recommendations on terminology. Adv Dent Res. 2016;28(2):49-57.
  3. Schwendicke F, Frencken JF, Bjørndal L, Maltz MManton DJRicketts DVan Landuyt KBanerjee ACampus GDoméjean SFontana MLeal SLo EMachiulskiene VSchulte ASplieth CZandona AFInnes NP. Managing carious lesions: consensus recommendations on carious tissue removal. Adv Dent Res. 2016;28(2):58-67.
  4. KingJ JB, Crawford JJLindahl RL. Indirect pulp capping:A bacteriologic study of deep carious dentine in human teeth. Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1965;20(5):663-9
  5. Handelman, S. L., Washburn, F., & Wopperer, P.  Two-year report of sealant effect on bacteria in dental caries. J Am Dent Assoc., 1976;93(5):967–970.
  6. Bjørndal L, Larsen T, Thylstrup A. A clinical and microbiological study of deep carious lesions during stepwise excavation using long treatment intervals. Caries Res. 1997;31(6):411-417.
  7. Ricketts DN, Kidd EA, Innes N, Clarkson J. Complete or ultraconservative removal of decayed tissue in unfilled teeth. Cochrane Database Syst Rev. 2006;19(3):CD003808.
  8. Mertz-Fairhurst EJ, Curtis JW Jr, Ergle JW, Rueggeberg FA, Adair SM. Ultraconservative and cariostatic sealed restorations: results at year 10. J Am Dent Assoc. 1998;129(1):55-66.
  9. Schwendicke F, Dörfer CE, Paris S.Incomplete caries removal: a systematic review and meta-analysis. J Dent Res. 2013;92(4):306–314.
  10. MA Pereira et al. No additional benefit of using a calcium hydroxide liner during stepwise caries removal. J Am Dent Assoc. 2017;148(6):369–376.

根管治療をしないで歯根端切除術のみ行うケース〜長いポストで除去が難しい場合に〜

 

皆様こんにちは。すっかり寒くなりましたね。

今日は生活歯髄療法のお話に入る前に、歯根端切除術についてもう少し書きたいと思います。

 

根管治療を行わずに歯根端切除術だけを行う場合

 

歯根端切除術は、通常の根管治療で病気が治らなかった場合に行う手術法です。

あくまで病気の原因は根管の内部の細菌感染ですから、根管治療を行わずに手術のみ行うことは病気の原因の感染源を残すことになりますし、ひび割れの見落としなどもありえます。

 

ですので、通常は行いません。

 

では、どういう時に行うのか?当院では二つのパターンがあります。

 

以下にご説明していきます。

①コア、ポストが長く太く、除去するのが難しい

または物理的に不可能、外すことにリスクがある場合

前歯などでよくあるケースです。過去の治療でメタルコアのポスト部が極端に長く、除去が難しい場合、

削る道具の長さにも限界があるため、物理的に届かずはずすことが不可能な場合、

歯が薄く、今後長持ちしなさそうな歯で腫れや痛みなど症状があり、抜歯はまだしたくなくて延命的な処置ご希望の場合などに

根管治療は行わずに歯根端切除術のみ行う場合があります。

 

症例でご説明していきます

 

下のレントゲンの患者様は長く太いメタルポストが装着されていて、歯肉に腫れ痛みがありました。

前歯なので、抜歯をすると隣の健康な天然の歯を削りブリッジにするか、インプラント治療となります。

まだお若い患者様でしたので、使えるうちは自分の歯を使いたいと強くご希望されていました。

ポストが長すぎて除去が難しいこと、うまく外せたとしても歯が薄すぎて長持ちしない場合は、トータルの治療費用対効果が悪すぎることなどをご説明し、

歯根端手術のみを行うプランとなりました。

 

初診時のレントゲン写真

 

歯根端切除術後

術後1年経過観察時

腫れ、痛みの症状も改善、病気は治癒して問題なく歯を使えています。

こういったケースでは、根の中に感染源が残るというデメリットよりも、クラウンやコアを外すことのデメリット、リスクの方が大きいと考えます。

そして、歯肉に腫れや痛みなどの明らかな不快症状があってなんとかしたい、けれども抜歯はまだしたくない、という場合に適しています。

 

②患者様の強いご希望で、被せ物を壊したくない場合

当院では、患者様の強いご希望があっても、その歯がしっかりした歯で長持ちしそうであれば被せ物を外して根管治療をオススメすることが多いです。

なぜなら再発した時のリスクを考慮するからです。

それでも、セラミック治療を行ったばかりでどうしても外したくない という強いご希望がある場合には、後の根の病気の再発のリスクをご納得いただいた上で歯根端切除術だけを行います。

 

こういったケースでは、患者様にとっては根の中に感染源が残り病気が再発することのリスク回避よりも、クラウンを壊さないことの方がプライオリティが高いと考えます。

 

123...10...

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