根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)

追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)

根管治療の診査の重要性〜症例をみながら〜

こんにちは、李です。

8月も今週で終わりですね。あっという間でした。

それにしても暑い夏でしたね……(昨日今日は涼しく、エアコンつけずに過ごせるのがうれしいです)

今年の夏は、暑かったことが一番の思い出です

 

さて、今日もまた根管治療のお話をしたいと思います。

前回は根管治療の初診でどういった検査をするのか、についてお話しました。

今日は、具体的に1症例をみながら複数の検査をおこなうことの重要性をお話していこうと思います。

根管治療専門医がおこなう検査手順をふまずに、診断をしてしまうと(たとえば視診とレントゲン検査だけとか)誤診につながることもあり、必要のない歯に根管治療をして、でも治らない、なんてことが起こってしまう可能性もあるのです。

 

こちらの症例は、はぐきにニキビのようなものができた、ということで来院された患者様です。

その他に痛みなどの症状はありません。

右上6番という奥から2番目の歯のちょうど真下にぷっくりと、膿みの出口(フィステル、サイナストラクトなどといいます)ができています(青→)。

DSC01185

 

 

この膿の出口は歯の根っこの病気(根尖性歯周炎)ができているときに見られる所見の一つです。

ということで、レントゲン検査をおこなってみると

 

奥から(左から)2番目の6番という歯の遠心根という根の周りに黒い陰(根の病気の典型的なレントゲン所見です)があります(赤→部分)

 

diag1diag2

 

ここまでの検査①視診②レントゲン検査だけで判断すると(6番の歯の直下に膿の出口、6番の遠心根に黒い陰)、

奥から2番目の6番が膿の出口の原因、根っこの病気があるのは6番だと思ってしまう可能性が高いです。

6番は根管治療がされてない、神経が生きているようにみえる歯だけど神経が死んでしまって中でくさっているんだな、と言う風に考えるのです。

根管治療を専門的に学ぶ前の私だったら、この2つの検査だけで6番が 原因の歯であると診断していたと思います

 

でも他にもおこなうべき検査があります。

歯をコンコンと叩いて反応をみる打診、歯肉に触れて反応を見る触診、そして神経の知覚反応をみる温度診歯周ポケット検査などです。

打診、触診ともに反応はマイナスでした。では温度診は?

ということで原因と思われる6番に冷たい刺激を与えると、反応があります。数回おなじように確認しても反応は(+)。

つまり6番の歯の神経は生きている可能性が高いという事です。

これは膿の出口の原因は6番じゃないぞ、ということになり、

 

このように、膿の出口に目印を挿入してレントゲン撮影をおこなうと、

 

DSC01188

 

レントゲンではこのようにうつります。(6番のとなりの7番の根っこの先にたまった膿が6番の真ん中当たりに出口を作っていたのです)

 

diag3

 

そして7番は神経の知覚検査でも反応は(−)でしたので、この6番のところにできた膿の出口は診査の結果、一番奥の7番が原因であることがわかりました。

もしも、視診とレントゲンだけで診断していた場合は、6番が原因と誤診し、必要のない治療をすることになり、

最悪のケースは6番の健康な神経を犠牲にしてしまう可能性もありえたということになるのです。

 

以上、症例を見ながら診査の重要性をご説明いたしました。

初診でおこなう診査診断は 本当に本当に重要なのです

 

 

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