根管治療に関する記事を中心に、専門的ながら大切なことを治療例をまじえて、一般の方にもわかりやすく解説しています。ありきたりな内容ではなく、欧米の論文を精読した内容をベースに信頼性のある有用な情報を発信するよう努めています。(*記事の元になっている引用文献を記載しています)

追記:多くのブログ記事の執筆当時からだいぶ時間が経過しております。最新の研究をもとにした現在の見解や治療のトレンドなどをアップデートできておりませんので、記事によっては当時の見解から変化している場合もあります。(2022.12.28)

はじめての根管治療で失敗する5つの原因⑤〜修復物からの漏洩について〜

皆様こんにちは!李です。

4月ももう終わりですね。

毎年この時期にアメリカ歯内療法学会の年に一度の一番大きな学会が開かれます。

私は2年前のボストン、1年前のハワイと、ずっと参加しており、今年も参加してきます。

(過去の学会の様子はブログでご覧いただけます。カテゴリーの学会報告のところをクリックしてみてくださいね

今回はワシントンD.C.で開催されます。学会の様子はまたブログで報告していきますので、楽しみにしていてください

アメリカでは必ずステーキを食べに行きます。

アメリカに行くと必ず太ってかえってくるので、事前に備えて今週から毎朝ジョギングをしています

患者様には毎年ご迷惑をおかけしますが、4/29〜5/8は休診となりますので、よろしくお願いいたします。

 

さて、シリーズでお話しています『はじめての根管治療で失敗する5つの原因』(SUNDQVIST et al. Endodontic Topics 2003 から引用)も、今日が最終回です。

毎度復習になりますが、

虫歯が進行していても、歯髄をとらないほどひどい痛み(歯髄炎)の段階でも、まだ細菌は根の中に蔓延していないことが多いです。

では、なぜもともと細菌が蔓延していない根管内に細菌が入ってしまい、根管治療が失敗してしまうのでしょうか?

その原因は。。。。。

原因① 無菌的治療がなされていない 一番大切

原因② アクセスキャビティーが適切でない

原因③ 根管の見落としがある

原因④ 機械的拡大が不適切

原因⑤ 修復物からの漏洩

本日は5つめの原因『修復物からの漏洩』について、お話していきますね。

 

漏洩(ろうえい)っていう言葉は患者様にとっては聞き慣れない言葉かな?と思いましたが、そうでもないですね。

情報漏洩、とかっていう言葉も良く耳にします。

歯科で言う『漏洩』とは、歯と修復物のスキマからばい菌が入る、というイメージです。

(修復物とは、インレー、クラウン、レジン充填など歯を削って詰めたりかぶせたりしたもののことです)

修復物と歯の間に隙間がもともとあったり、虫歯が出来て隙間ができてしまったりすると、その隙間から細菌が歯の内部に漏れる(侵入する)のです。

これは、二次虫歯だったり、被せものがはずれる原因にもなりますし、根管治療した歯にとっては

根の中の再感染につながります。大きな悲劇の始まりです

せっかく根の中の細菌を根管治療で減らしても、その後

 

では、根管治療において修復物からの漏洩(歯冠側からの漏洩ともいいますが)を防ぐためには??

論文ではcoronal tight sealなどと言われていますが、訳すと歯冠側の緊密な封鎖ってとこでしょうか。

つまり、

細菌を減らす除菌の治療 → 根管治療

細菌が根の中に入らないように

侵入経路をぴっちりシャットアウトする治療→歯冠修復での緊密な封鎖

ということです。

 

今、日本では保険外の根管治療が世の中にだいぶ認知されてきていると思いますが、

根管治療だけでなく、根管治療後の封鎖をしっかりする治療も同じくらい大切なのですよ

LEE`S DENTAL CLINICでは、細菌を減らす根管治療とその後の細菌の通り道の封鎖の治療(コア、築造)まではセットとして考えており、根管治療と同様にラバーダム使用、マイクロスコープ使用でおこなっております。

クラウン治療は他のクリニックでやられる患者様もいらっしゃいますが、コアまでは絶対に当院で治療をお受けいただくようお願いしております。

以下、症例見ていきましょう。

 

このレントゲン写真、黄色→が根管充填の部分、赤色→がコアの部分です。

blog20144

 

 

マイクロスコープの画像で、どのようにコアの部分の治療をおこなっているか、しっかりした封鎖を得るためにどのように気をつけているかを見ていきましょう。

下の写真は根管充填前です。根っこの穴のおそうじ、殺菌処置がすべて終了したところです。

DSC00889

 

根管充填直後、3つの根の穴に、ぴっちりと根管充填をおこないました。

根管充填に使用するシーラーといわれる糊状のお薬が白くべたべたとくっついています。

DSC00890

 

この後、歯冠側の封鎖の処置に入ります。

この空洞の部分をすきまなく漏洩が起こらないようにするために、接着の素材を使用していきます。

接着剤、身近な素材(壁にくっつけるフック、テープ、アロンアルファなど)でも、くっつける壁などがぬれていたり、埃やなどがついていたりすると、うまくくっつきませんよね?

歯もそれと同じで、唾液や血液でぬれていたり、上の写真のようにシーラーがこびりついた状態で

接着の素材をつかっても、接着がうまくいかなくて失敗します。

失敗とは、コアの材料がくっつかなくて、スキマができて漏洩が起こるということです。

緊密な封鎖ができません。

ですので、コアの治療の時はかなり気を使います。

歯に、余分なシーラーが残らないように、マイクロスコープを見ながらあらゆる手段で綺麗にします(サンドブラスト、超音波の使用ど)。

そして、余分な水分を取り除きます。ラバーの部分にも水滴がつくので、そういった水分も全て拭き取ります。

下の写真が、綺麗にしたところ。接着操作の直前です。上の写真と比較してみてくださいね。

DSC00891

接着剤を歯の表面に塗ります。

接着剤は歯の根の象牙質に対して一番信頼性の高い 3stepの接着システムを使用しています。(何十本もの論文を読んだ結果、現段階ではこのシステムが一番信頼性が高いという結論にいたりました。)

1stepの簡単な接着システムでは接着の劣化がおこりやすく、確実な封鎖には不安が残ります。

こちらがペースト状のコア用レジンを充填し、固めた直後です。

DSC00893

時間勝負のため、ちょっと見た目が悪いですがこの状態から削って形を整えて、仮歯をかぶせていきます。

この後のステップはクラウン治療に入ります。

もうひと症例見ていきましょう。根管充填直後。

DSC00808

 

封鎖のための接着操作の直前

DSC00810

 

コア用レジン充填後です。

DSC00812

 

さて、以上が根管充填後の歯冠側の封鎖のための治療です。

ものすごく大切なので、型取りでコアを作る間接法はいっさいおこなっておりません。

ラバーダムもかけられないし、型取りのときなどにも唾液から根の中に細菌が侵入するリスクが高いためです。

接着操作も難しいため必ずマイクロスコープ、ラバーダムは使用した状態でおこないます。

『歯冠側の確実な封鎖』について、少しご理解いただくことはできましたでしょうか?

この『歯冠側の確実な封鎖』が、『修復物からの漏洩』を防ぎます。

この後のステップのクラウン治療も、漏洩かかわる大切な治療ステップです。

私は患者様へのご説明でコアの治療を第一のバリア、クラウンの治療を第二のバリアとご説明しております。

クラウン治療に関してはブログのカテゴリの『根管治療後の治療』のところをクリックして、記事を読んでみてください。

さて、5回にわけてお話してきました『はじめての根管治療で失敗する5つの原因』シリーズは今回で終了です。

患者様に、根管治療を専門とする歯科医たちはこういったことを考えながら日々治療に取り組んでいるということを、少しでもわかっていただけたならとても嬉しいです

 

 

 

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