●歯の神経を残す治療〜生活歯髄療法 Vital pulp thearapy② その適応は?〜

2013.03.06 | 根管治療の前に〜歯の神経を残す治療〜 |

こんにちは。李です。
日差しがだいぶ春めいてきましたね
やっぱり3月は2月とは違いますね。
今週は暖かいようで嬉しいです。だんだん春がやってくる感じは、なんだかウキウキ、ソワソワ、ムズムズするのは私だけでしょうか?理由なく気分が高揚するってもんです

さて、今日は前回の続きとしてVPTの適応についてお話していこうと思います。
前回のブログを読むと、なんでもかんでもVPTやればいいじゃないか!と思ってしまうかもしれませんが、
VPTをおこなって成功しやすい歯(正確には神経の炎症の進行度、レベル)とVPT をおこなっても絶対失敗する歯、
両者の中間のグレーゾーンがあると私は思っています。
ですので、どんな歯におこなっても成功するわけではないんです。

VPTを成功させるための重要ポイント
①術前の神経の炎症レベル
②感染源の確実な除去
③細菌の侵入経路をシャットアウトするための確実な封鎖

です。ここでの①術前の神経の炎症レベルで、VPT適応可能かどうかを見極めます。

VPTは神経が正常であるほど成功率が高くなります。
正常とはどういう状態か?
たとえば術前に痛みなどの症状がなく、虫歯もないきれいな天然歯で、転んで歯がかけて神経が露出した場合などです。Cveckら(1978)はこの、転んで歯が折れた(外傷による露髄を伴う歯冠破折)歯に対してVPTを行い96%の成功率を報告しています。
もうひとつの適応症は、専門用語でいうと可逆性の歯髄炎です。
どういう状態かというと、
虫歯のある歯、といっても虫歯の深さによって、神経の炎症のレベルは様々です。
可逆性の歯髄炎とは、神経の炎症をおこすきっかけとなっている感染源(虫歯)をとりのぞき、侵入経路をシャットアウトしてあげるともとの正常な神経に戻る、初期の炎症です

炎症がすすむと不可逆性歯髄炎という状態になり、感染源を取り除いても神経は回復できないのです。
そして死んでしまいます(これを歯髄壊死といいます)

不可逆性歯髄炎と歯髄壊死の場合はVPTは適応できません。
VPTをおこなっていくにあたっては、この可逆性歯髄炎、不可逆性歯髄炎の見極めが非常に重要です。

見極めるための検査としては
歯の神経の知覚検査と、痛みの既往(それまでの歯の痛みの症状の経過)があります。
知覚の検査とは、冷たい刺激、暖かい刺激を歯にあてて反応をみていくのです。
しかしながら、こういった検査は神経の炎症状態が100%検査結果に反映されるわけではないのです。
神経の炎症の状態を正確に把握するためには、病理切片にして細胞をみるか、血流をみる機械などもありますが
臨床応用される段階にはきていません。
可逆性、非可逆性の見極めがとても難しいのはこのためです。
ですので、冒頭でお話しした、成功しやすい歯と成功しにくい歯の中間のグレーゾーンとはこの見極めの難しさから可逆性歯髄炎のことを言っているのです。

大きな虫歯の治療で、歯の神経に炎症がある場合、抜髄治療とVPT、どちらを選びますか?

無菌的な環境下での適切な抜髄治療の成功率は約90%と報告されています。
歯の神経の炎症のレベルを見極めるのが難しいVPTは、成功率は論文によって様々ですが90%より劣ります
VPTは治療後にも長期的な経過観察が必要ですが、患者さんが途中で通院できなくなってしまう場合もあります。
そういったことを考慮すると、前回のパート1でお話しした、根未完成歯では積極的にVPTがおこなわれますが、
大人の歯(根完成歯)では、より予後が確実な根管治療を選択する方が長い目でみて患者様にとっての利益が多いと考えれている傾向です。

もちろん、こういった成功率やリスクをご説明した上でそれでもトライしたい!という方もいらっしゃると思うので、最終的には患者様の意思を尊重するのがベストだと思います。
治療法の選択する時に、現在可能な治療方法やそれぞれの成功率、メリットデメリット、治療に伴うリスク、などを客観的に科学的根拠をもとに患者様にわかりやすくお話して、治療法の選択のための情報をなるべくお伝えするのが私の仕事の半分以上のウェイトを占めると思っています。

ちょっと話がそれましたが、
一番良いのは、なるべく虫歯が小さく神経の炎症が少ないうちに治療介入することです。そうすれば確実に神経は保存できます。
痛みがでてからでは、遅い事が多いのです