根管治療専門医

2016.08.01 | 根管治療, Penn Endo, 根管治療の成功率 |

『根管治療専門医』『根管治療専門歯科』、『マイクロスコープを使った精密根管治療』などなど、今インターネットで検索をするとものすごい数の歯科医院のホームページがヒットしてきます。

私が2010年に根管治療を専門としたクリニックを立ち上げたいと思い開業した頃とだいぶ状況が違います。当時は根管治療専門医、マイクロスコープ、ラバーダム、など患者様にもそれほど知れ渡っていませんでしたし、根管治療専門で自由診療でおこなうクリニックは珍しい部類でした。

今は都心ですとある程度はラバーダムを使用し、マイクロスコープを使用した根管治療をおこなう歯科医院が増えてきています。

これは患者様にとって、とても良いことです。一昔前までは保険診療がメインでの根管治療で、ラバーダムを使用することはほとんどありませんでしたから。

患者様にも、歯科医の間でも根管治療の際にはラバーダムを使用した方がいいという認識が浸透してきているので、医療の質が向上してきている、ということです。

そのような状況の現在の日本で、根管治療専門医とはどういうことなのか? 根管治療専門医の治療と一般の歯科医が根管治療の時にマイクロスコープとラバーダムを使用して根管治療をおこなうこと、そのレベルや内容は同じことなのか?

もし同じだったら根管治療専門医でわざわざ治療しなくてもいいのではないか?と思われる方も多いと思います。

今日は根管治療専門医とは何が違うのかをテーマに考えてみたいと思います。

 

根管治療専門医の日本での位置付けは?

 

『根管治療専門医』といっても日本ではアメリカやカナダのように根管治療専門医の制度というのはありません。アメリカでは専門医制度というものがあり根管治療専門医になるためには

専門医になるための大学院に入学し2〜3年、研鑽をつまなければなりません。

根管治療専門医になるための米国の大学院を卒業した根管治療専門医は現在日本では数名しかいないのです。

この大学院に入学するのも狭き門です。各大学の受け入れ人数は少ないと4名くらいから、多くて20数名となっており、もちろん入学のためのテストがあります。

誰でも入れるものではありません。

専門医教育に興味のある方こちらをご覧ください。

http://www.aae.org/education/advanced-specialty-programs-in-endodontics/advanced-specialty-education-programs-in-endodontics.aspx

 

根管治療専門医のための大学院ではどういった研鑽をつむかというと、講義や、膨大な数な論文を読みこなし、歯内療法(根管治療の学問的な名前です)領域のいろいろな考え方を徹底的に学びます。

病気の原因、病気がなおるメカニズム、細菌のことなど、治療をする上で最も大切な原理原則とも言える概念を学び、さらに治療の成功率、失敗の原因なども学びます。治療のテクニック的な側面や、どういった器具をどういう時に使うのか、殺菌や根管充填の薬剤に対する考え方も学びます。論文や講義以外では患者さんの治療をおこない、学生指導も行うようです。プログラムによっては論文を発表し、修士号(Masterof Science)を取得する場合もあります。大学院を卒業してはじめて根管治療専門医となるのです。

こういった勉強から、根管治療専門医は使う薬剤ひとつとっても、どんな種類の薬剤をどのくらいの濃度で使うのか、どう言う時にどういう器具を使うのか等、治療の各ステップで全て明確な理由がありますし、いつも同じものを使用するのでなく症例によって、使い分けたりもします。

なぜ、私がこういった内容を知っているかと言うと、それは私が所属する根管治療専門医のためのスタディーグループ Penn Endo Study Club in Japan (PESCJ)のおかげです。

このスタディークラブには米国の根管治療の大学院を卒業した根管治療専門医が4名いらっしゃいます。

スタディーグループ主催(私たちメンバーの師匠です)の石井宏先生は米国の歯内療法科を卒業した日本での第一号の先生です

石井宏先生が主宰するこのスタディーグループでは、日本でも米国の根管治療専門医と同じレベルの考え方と知識、治療スキルがある根管治療を専門とできる歯科医を育てる目的で、石井先生が米国ペンシルバニア大学大学院で学んだ内容を1年間に凝縮したかなりハードなプログラムを実践していらっしゃいます。米国ペンシルバニア大学歯内療法科とのコラボレーションプログラムで、卒業月には実際に米国ペンシルバニア大学歯内療法科に行き、口頭試問、実習などをおこない認定試験を受けるのです。少人数制で1年に8名しか入ることができず、応募人数が毎年多いため、面接で治療に対する志や学問に対する真摯な姿勢を問われ合格した8名のみが学ぶことができます。プログラムがハードなため、せっかく入学したものの、途中で脱落してしまう先生もいるくらいです。

このプログラムのおかげで私たちPESCJメンバーは米国の根管治療の専門医教育の内容を日本にいながら学べて、治療で実践できています。

PESCJメンバーはコチラ。

http://www.pescj.org/member.html

PESCJメンバーの師である石井宏先生は、日本の根管治療のレベルの低さを変えたいという思いから、歯科医に向けての教育を多く実践していらっしゃいます。

私が卒業した専門医養成向けのプログラム以外に、一般の歯科医の先生に向けたベーシックなセミナーを全国各地でおこなっていらっしゃいます。また、石井宏先生以外のPESCJのインストラクターの先生方、メンバーの先生方も講演会やセミナーで、根管治療のベーシックな概念を一般の先生方に向け発信していらっしゃいます。

冒頭で述べた、一般の歯科医院でもラバーダムをおこなう医院が多くなったというのは、こういったセミナーを受けた先生方の根管治療に対する意識が向上したのではないかと思います。

日本の歯科医医療のレベルアップへの貢献度はとても高いと思います。

スタディーグループの話で少し脱線してしまいましたが、根管治療専門医は、上述のように深く学問を勉強していることから、治療の背景にある専門知識が豊富であること、治療に対して確固たる哲学、信念があることが特徴であると言えると思います。

 

根管治療専門医がおこなう治療と一般の歯科医がラバーダムやマイクロスコープを使った治療はどう違うか?

 

結果に違いがあるかというと、ある場合もあれば無い場合もある、と言えます。

ラバーダムを使った場合と使わない場合も同じです。ラバーダムを使用することで根管治療の時に細菌が根の中に侵入することをかなり防ぐことができるので、使わないも根管治療よりも使う根管治療の方がはるかに良いのは確実ですが、

では、ラバーダムなしで過去に根管治療を受けたか人はみんな失敗しているかというと、そうではありません。

そもそも人の体には免疫力というものもありますし、ラバーダム使用の有無、マイクロスコープの使用の有無だけが成功にかかわる要因ではありません。

一般の歯科医院でラバーダムなしでの根管治療でうまくいっているケースもあれば、一般歯科医院でラバーダムとマイクロスコープを使用してうまくいくケース、根管治療専門医のもとで治療してうまくいくケース、結果だけで言えば差がない場合もあります。

けれども、もちろんそうでない場合もあります。ですので、どちらがベターなのか、といえば、もちろん根管に中に細菌が入らないようにするためのラバーダムを使った方が良いですし、汚染や根管を見落とさないようマイクロスコープを使った方がより良いのはいうまでもありません。

では、根管治療専門医の治療は何がちがうのでしょう?

それは患者様がどこまでの治療の質を求めているのか、によると思います。

歯内療法領域について深く学んでいる根管治療専門医は、病気の原因である細菌排除に対する認識が強いです。細菌が根の中に流入しないためにはあらゆることをおこないます。

ラバーダムを使用することは細菌排除のためにおこなうべきことのうちのかなり大切なものの一つです。それ以外にも細菌排除のために行ったほうが良いと言われるものは全ておこなっています。(一般の歯科医院との大きな違いは無菌的な治療環境の徹底だと思います。治療器具ひとつひとつの徹底した滅菌管理です。これは手間も時間もコストもかかるため、なかなか保険診療をおこなっている歯科医院での実践は難しいと思います

例えば、リーズデンタルクリニックでは一般の歯科医院でラバーダム防湿、マイクロスコープを使用した根管治療を受けたけど治らないという患者さまも多くいらっしゃいますが、治らない理由が他にあることが多いです。

実際に歯をみてみると、詰め物の下に虫歯が残っていた(そもそも古い詰め物を外さずに根管治療をおこなっていた:写真①)、コアの治療がうまくいかず隙間があり唾液が流入していた(写真②③)、見落とした根管があった(写真④⑤)、ひびが見落とされいた、そもそも診断が間違っていた、などなど問題が見つかります。また使用している器具薬剤に問題がありそうと思われるケースにも遭遇します。

 

写真①:コアが歯に一部残ったまま根管治療がされていたケース

根管治療専門医の治療の特徴

 

写真②③:一見問題なさそうなレジンコア、剥がしてみると隙間があり唾液の流入ルートとなっていた

根管治療専門医と一般の根管治療の違い根管治療専門医では治療のミスが少ない

 

写真④⑤:見落とされていた4番目の根管

根管治療専門医は根管を見落とさない根管治療専門医が見つけた新しい根管

 

こういったことが無い場合には一般の歯科医院での治療でもうまくいく場合が多いとおもいます。けれども、それは事前にわからないことなので運にまかせるようになってしまいます。

 

どのように根管治療の歯科医院を選べばいいのか?

歯のために最善の方法で治療したい場合は根管治療専門医を受診されることをお勧めします。

費用をなるべくかけたくない場合には、まずは比較的安価な一般の歯科医院での治療を受けてみて、うまくいかなかったら根管治療専門医の治療を受ける、というのもひとつの方法です。

けれども、一度失敗した根管治療は最初の治療よりも成功率が低くなりますし、再治療を繰り返すたびに少しづつ歯が削られて失われていくというマイナス面も考えられます。

 

納得できる詳しい説明や疑問に対して答えられるのは根管治療専門医

当院にいらっしゃる患者様は、なぜ治らないのか、何が原因で治らないのか、疑問と不安でいっぱいになっていらっしゃることが多いです。

その疑問に明確に答えられることだけでも不安の多くは取り除かれます。

前医の説明で、根が石灰化しているから治らない、開かないから治らない、飛び出しているから治らない、などいろいろ説明を受けていていることが多く、その多くは誤解が多いです。

また、MTAを使ったから治る、ファイバーコアの方が歯が強くなる、そういった誤解もお話を聞いているとよく出会います。

もちろん、そういった方法が適している症例もありますが、どんな歯にもそれがいいというわけではありません。

一般の歯科医の先生方も、根管治療に対して誤った認識を持っている場合もあります。

原因がわからない時にもなぜわからないのか、原因を探るためにどういったことが必要なのか、を提案できるのも根管治療専門医ならではです。

何が原因でなおらないのか、問題は何なのか、その問題は根管治療専門医の治療で改善できるのか?そういったことをしっかりと説明できる知識のベースがあるのが根管治療専門医だと思います。

なぜなら、歯内療法領域について深く学んでいるからです。そして他の医院で治らなかったような難症例を多く治療しています。

そして治療の引き出しもたくさん持っているのも根管治療専門医です。

専門医の根管治療で治らなかった場合、マイクロスコープを使った歯根端切除術、再植術での歯の保存は、トレーニングを積んだ根管治療専門医でないとおこなうことが難しいですし、抜歯という選択肢も明確な根拠のもとでご提案することが可能です。

 

より良い結果をだすために、細菌排除のためにできる限りのことをおこなうのが根管治療専門医です