●根管治療と抗生物質②〜抗生物質で根の病気はなおるのか?

2014.01.24 | 根管治療と抗生物質 |

皆様こんにちは。李です。
今週末は春の陽気になるそうですね
ジョギングすると気持良さそうですが、私は週末はお仕事です。

さて、今日は前回の『抗生物質と根管治療』の続きをお届けいたします。このテーマ、ご好評いただいているようで嬉しいです。皆様興味のあるトピックなのでしょうね
今回の記事も前回と引き続き、
ASHRAF F. FOUAD著『Are antibiotics effective for endodontic pain? An evidence-based review. 』Endodontic Topics 2002, 3, 52–66をもとに、ご説明していきますね。
まずは前回の内容を簡単にまとめてみました

①根管治療の痛みの原因とプロセスについて
根の中への細菌感染が原因で炎症がおこり、炎症のプロセスで発生する様々な化学物質(ケミカルメディエーターといいます)が、神経終末や根尖周囲組織の侵害受容器(痛の刺激を受け取る装置みたいなものです)を活性化、過敏にし、刺激に対する感受性を高めることが原因であることをお話ししました。
それ以外にもこのケミカルメディエーターは浮腫による組織圧増加も引き起こします。組織内圧が高まると非常に痛いのです

前回書き忘れてしまったのですが、
②細菌以外の痛みの原因として考えるのは
洗浄液の刺激、や器具操作の刺激など、化学的、物理的刺激です(これらの刺激はわかりやすく言うと、針をさしたら、そこが痛い、たたかれたところが痛い、薬品が手についてヒリヒリする、などの類いです。)。こういう化学的、物理的刺激による炎症は一過性のもので、すぐに治まります。

前回の終わりにこの痛みのプロセス、ケミカルメディエーターを直接抑える働きは消炎鎮痛剤(ロキソニン、ボルタレンなど)であって抗生物質ではないことをお伝えしました。

反論として、『抗生物質は細菌を抑える薬だから細菌が原因の根尖性歯周炎には、抗生物質を飲む方がより細菌をへらしてくれるんじゃないの???』という一瞬理にかなったと思わせるロジックをご紹介しました。
そして今日はこのロジックの穴について、お話していきます。

Question①根管内の細菌を抗生物質の服用で効果的にやっつけることができるのでしょうか?

まず、抗生物質で細菌をやっつけるためには、お薬を飲んで、その成分が血流を通して、効かせたい場所に有効な濃度で到達しないといけないのです。

皆様、考えてみてください!
壊死歯髄(神経が死んでいる)や、根管治療歯の根管内には血流(血が巡っていること)がありません。
血の流れがないのに、どうやって薬の成分が根の中に到達できるのでしょう?
(**いくつかの論文では、血の巡りではない経路でで根の中のにお薬の成分が届くという報告もありますが、時間がかかる、または効果のでる量が根の中に到達しているかどうか、などに関しては確実な答えがでていません。確実でない効果のために抗生物質を服用することは、耐性菌(抗生物質に対して抵抗性をもつ菌)の発生の問題からも避けなければいけません)

 

では、
Question②抗生物質を直接根管内に貼薬する場合はどうでしょう?

現在根管内の貼薬には水酸化カルシウムがメインに使われます。
水酸化カルシウムの殺菌効果は過去から現在まで様々な論文で検証されていますが、抗生物質の根管内への貼薬については、あまり報告がないそうです。
ダイレクトに抗生物質を作用させると殺菌に効果が高いんじゃないか??などと思ってしまいますけれども、
このトピックを語るにはさらなるリサーチが必要そうです

さて、ここまで進めてきて細菌が原因の根尖性歯周炎、細菌をやっつける抗生物質を服用するとより、効果がある??という疑問には
NO!!という答えがでたと思います。
根管内の細菌を減らすためには、抗生物質を服用するよりも、根管治療で細菌を取り除く方がよっぽど効率的で効果的なのです。
根の中の細菌を減らすため、という理由で安易に抗生物質を服用することは、耐性菌の問題からも避けた方が良いのです。

そうは言っても患者様が、腫れや痛みに苦しんでいらっしゃるとき、クリニックが長期休診になる前の腫れを伴う急患がいらっしゃったりするとついつい抗生物質を出したくなってしまうものです

根管内の細菌をやっつけることはできなくても、病気の状態によっては抗生物質の服用が必要な場合も、確かにあるのです
それは、いったいどういう状態なのでしょうか?
腫れているとき、根管内から膿みがでているとき?

次回のPART③では、抗生物質を服用するべきタイミング、判断基準についてご説明していきますね
この部分