●根管治療しなくてもすむ? 歯髄の再生について

2012.01.22 | 根管治療, 歯のまめ知識 |

こんにちわ。李です。

ここのところは歯に関係ないお話をしていましたが、しばらくは歯のネタに戻る事にします。
最近読んだ論文でおもしろいものがあるのでご紹介しますね。

死んでしまった歯髄(歯の神経)の再生についてです。
『歯の再生』と聞くと、興味をもたれる方は多いと思います。
先日テレビ東京の『ワールドビジネスサテライト』でも歯の歯根膜細胞を使った歯周組織の再生療法が紹介されていました。ご覧になった方も多いのではないかと思います。

私が専門に勉強をしている歯内療法の分野でも再生については熱く研究されている分野です。

Martin Trope著
『Regenerative Potential of Dental Pulp』
JOE 2008

この論文では、根未完生歯(生えたての永久歯のこと:生えたての永久歯はまだ歯の根が完成していません)の歯髄の再生(厳密には血管再生)について述べられています。

神経が死んでしまう原因としては虫歯からの細菌感染で死んでしまう場合と、ぶつけた、脱臼した、などで死んでしまう場合があります。虫歯が原因でない場合は神経が死んでも(壊死)細菌感染はしておらず、虚血性の壊死、ということになります。
このような脱臼で、細菌感染していない歯髄壊死は、すぐに歯を再植(脱臼した歯をもとに戻す)すると、脱臼の傷である血の固まりを足場にして血管再生がおこり、死んでしまった歯髄が生きた組織に置き換わって行くと報告されています。

この特徴を応用して、感染して根の病気ができて、膿みの袋ができた症例でも再生に成功しているのです
これはすごいことだと思います
根未完成歯が適応なので、大人は対象にならないのですが、お子様が転んで歯をぶつけて、気づかないうちに神経が死んでしまっていて、膿んでいた!通常なら根管治療でその歯は一生神経が死んでしまった歯として余生を送る事になりますが、再生の処置が成功すれば根管治療が必要ないのです。

しかしながら、同じ著者の一番新しいケースレポートでは、同一患者の同じ病態の2本の前歯を、同じ歯科医が全く同じ治療法で治療したにも関わらず、1本は再生に成功し、1本は再生していないと報告されています。
この理由についてもまだはっきりとしたことはわかっていません。
Renato Lenzi and Martin Trope著
『Revitalization Procedures in Two Traumatized Incisors with Different Biological Outcomes』 
JOE 2012

確実で予知性のある治療法としてはまだ確立されていませんが、近い将来、確実な治療法として
臨床に取り入れられる日がくることを願います。